平成30年7月豪雨災害の現場から
みんなのいのち

被災地のコミュニティを維持する訪問看護ステーション


被災地には未だに多くの問題が残されており、様々な支援団体が少しでも早い復興のために活動しています。訪問看護ステーション『NPO法人そーる』もその中の一つであり、訪問看護だけでなく、生活に必要な物資を提供することで被災地を支えています。日本財団も助成事業を通してNPO法人そーるを支援しています。

2018.10.18

被災地にある既存の事業所が被災者のニーズに応える

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被災地での活動内容について説明しているNPO法人そーるの片岡さん

「私が運営していた訪問看護ステーションも今回の平成30年7月豪雨災害で被災しました。災害直後は利用者さんの安否が不安で、避難所や公民館などを周って無事を確認しました」
NPO法人そーるの理事長である片岡奈津子さんが豪雨直後の様子について振り返ってくれました。NPO法人そーるは倉敷市真備町で訪問看護事業を行っており、地域に根付いたサービスを提供しています。

倉敷市真備町は豪雨災害によって広範囲に渡る浸水被害を受け、NPO法人そーるの訪問看護ステーションも事業所が浸水し、サービスを提供し続けるのが難しい状況になりました。しかし、訪問看護は災害時にも被災地で必要とされるサービスです。
「真備町では訪問看護のニーズは依然として高いので、再建に向けてスタッフみんなで必死に前進しています」
片岡さんが力強く状況を説明してくれました。

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生活物資を提供しているトレーラーに並ぶ被災者の方々

NPO法人そーるは今回の豪雨災害を受けて、訪問看護だけでなく、生活物資の提供活動も被災地でのニーズに応えて始めました。事業所の横にある空きスペースにトレーラーを置いて被災地で足りていない生活物資を被災地の方々に配布しています。

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トレーラーの中には生活に必要な物資が所狭しと並べられている

生活物資の提供が始まると、瞬く間にトレーラーの前には長蛇の列が出来上がりました。トレーラーの中には生活に必要な物資が所狭しと並べられており、被災者の方々は生活していく上で必要なものを探していました。トレーラーに並ぶ列の長さから、いかにこのサービスが被災地で必要とされているのかが伺えます。

自分が被災者だから何が必要とされているのか分かる

「私の娘が着る服がないとSNSでつぶやいたら大量の物資が送られてきたことが物資の提供を始めたきっかけでした。とても自分たちで使い切ることができる量ではなかったので、みんなに配ったらたくさんの人が取りに来てくれました。みんな同じことで悩んでいるのだなと思い、継続して生活物資の提供を行うことにしました」
片岡さんが物資提供を始めたきっかけを教えてくれました。

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被災者の方々が必要な生活物資は時間とともに変化していくことについて説明する木村さん

もともと真備町で生活をしていて自分自身が被災者であるからこそ、被災地では何が求められているのかを把握しており、ニーズに合わせたサービスを提供することができます。
「発災直後は軍手やマスクなどが復旧・復興のための道具が必要とされていましたが、次第にニーズは洋服や靴などに変化していきました。最近では調味料を求める声が多いですね」
NPO法人そーると一緒に被災地支援を行なっている、いぐすぺ南三陸倉敷実行委員会の代表を務める木村智久さんが被災地で変化するニーズについて説明してくれました。

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提供されている生活物資は日本全国から届けられている

被災者が必要とする生活物資は復興のフェーズによって変化していくために、提供する生活物資もそのニーズに合わせて変化させていく必要があります。また、被災地で求められる生活物資には、日焼け止めや化粧水など、生活する上で緊急性が無いために被災者自身からはなかなか言い出しにくいものの、実際には被災地で求められているものがあります。自分が被災者であるからこそ、そのようなニーズも敏感に感じ取ることができ、被災地で求められている生活物資を正確に届けることができます。

物資提供の場を超えて、コミュニティ維持の拠点として機能している

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生活物資を受け取りに来た岸田さん(写真左)とその元同級生の片岡さん(写真右)

「今日はここで生活物資を提供してくれると真備町川辺地区のLINEで流れて来たので貰いに来ました。このイベントは同じ地域で暮らす他の人たちと交流するいい機会になっています。僕たちは元同級生で、今日はたまたま遭遇して立ち話をしていました」
生活物資を取りに来ていた岸田さんが応えてくれました。

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NPO法人そーるが被災地で果たしている役割は大きい

被災地においては、災害で自宅に住むことができなくなり、地域コミュニティで交流する機会が減少することで、被災者自身が外出したり、人と会話する機会が減り、心のケアが必要となるケースに至ることもあります。NPOそーるの取り組みは、訪問看護はもちろんのこと、単なる必要な生活物資を配る場所を超えて、心のケアや地域コミュニティを維持する拠点としても機能していました。

日本財団は今回ご紹介したNPO法人そーるをはじめ、被災地で活動している支援団体へ助成事業を行っています。助成事業を通して、被災地の復興に少しでも貢献できればと考えております。

取材・文:井上 徹太郎(株式会社サイエンスクラフト) 写真:和田 剛