平成30年7月豪雨災害の現場から
みんなのいのち

災害時における社会福祉施設の重要性と復旧に向けた課題


災害が発生した際には、高齢者や障害者など「災害弱者・要配慮者」と呼ばれる方たちに対しても、支援を届ける必要があります。平成30年7月豪雨(西日本豪雨)ではそうした方たちを支える社会福祉施設も数多く被害を受け、復旧に向けた活動が今も続けられています。

2018.08.10

災害時に障害者福祉を続ける理由

写真 「私の自宅も浸水寸前の状態で、とにかくここがどうなっているのか心配で飛んできました」
愛媛県大洲市で地域の多様な住民に対し、放課後等デイサービスや相談支援などを提供しているNPO法人歩(あゆむ)。同法人で理事長を務める白石美月さんは、豪雨が止んだ直後に「放課後デイサービスあゆむ2」へ駆け付けた時の様子を振り返ってくれました。
「放課後デイサービスあゆむ2」はNPO法人歩が運営する障害児通所支援施設。小中学校の放課後や休日の時間を利用して、障害のある子どもに対し、生活能力の向上に必要な訓練や社会との交流促進などを行っています。

写真愛媛県大洲市では今回の豪雨により、市街地をはじめ幅広いエリアで水害が発生し、概数で4,600世帯に浸水被害をもたらしました。
子どものいる家庭が水害に見舞われた場合、親は浸水被害を受けた自宅の土砂撤去作業などを行う必要がある上、仕事も長期にわたって休めないので、常に子どもと一緒にいることはできません。
今回の水害のあと休校になった学校の多くが夏休みを前倒しで開始したため、学校に子どもを預けることもできませんでした。そうした状況の中、障害のある子どものいる親にとって、災害時に一時的であっても子どもが楽しく過ごすことができる障害児通所支援はとても助かる存在です。

写真「この建物も2メートルくらい浸水しました。それでも何とか復旧しなければと思い、7月9日の月曜日に復旧作業を行い、翌日の7月10日には再開しました。知り合いの家族が施設を再開するために総出で手伝いに来てくれ、小学5年生の子も手伝ってくれましたよ」
白石さんは施設の再開までに、多くの人が助けてくれたことを話してくれました。
災害が発生したばかりの大変な時期であるにも関わらず、白石さんは人一倍の笑顔で現場を指揮し、みんなのやる気を引き出しました。平時から周囲の人たちと良好な関係を構築していたことも、白石さんやNPO法人歩を支援する人が数多く現れた背景にあるようです。

社会福祉施設が復旧段階で抱える課題

写真「児童福祉法に基づいて『放課後デイサービスあゆむ2』は運営されています。行政に対して様々な書類を提出する必要があり、一定期間特定の書類を保管する義務もあります。しかし今回の浸水でパソコンがダメになってしまったので、電子データは全部なくなってしまいました」
「紙の書類が入っていたファイルも浸水してしまったので、新聞紙を1枚1枚はさんで乾かし、何とか復元しようとしているところです」
白石さんは現在取り組んでいる復旧作業について教えてくれました。

写真利用者の過去の活動記録や支援計画などは、社会福祉施設を運営していく上で欠かせないものですし、行政に提出する書類は規定に基づき整備する必要があります。地味な作業ではありますが、それらの書類を復元するためには多くの労力が必要になり、重荷となっていたのも事実です。
書類は紙データと電子データで保管・管理をする必要があるため、乾かした紙データをすべて電子データに打ち直す必要がありました。この作業を進めるにあたり、日本赤十字看護大学の大学院生たちが活躍していました。

写真「ここに十分な支援が来ているのか不安になり、何かできることがないか大学院生を連れてお手伝いに来ました」
日本赤十字看護大学の専任教授である田村由美さんが、NPO法人歩に支援に来た背景を説明してくれました。
「被災現場の様子は想像していたものと半分は同じでしたが、残りの半分は違いました」
真剣な面持ちでデータ入力の作業を行いながら、支援活動にあたる大学院生の方も話を聞かせてくれました。

災害時の福祉支援活動は発展途上

写真「近年、DMAT(災害派遣医療チーム)などの登場により、災害時の医療支援は進歩しつつありますが、福祉支援はまだまだです。災害関連死が問題になることがありますが、高齢者や障害者などに対して、復旧までの生活を支える福祉支援を行っていく必要があります」
「放課後デイサービスあゆむ2」で復旧活動をお手伝いしている、福祉防災サポートオフィス未來・事務局長の若松周平さんが、災害時に特別なニーズを持つ要配慮者に対して、適切な支援を行うことの大切さを話してくれました。

「現在は災害後の対応として要配慮者の支援をしていますが、今後は災害が発生する前の段階から対策や支援を行うことが重要だと思います」
若松さんは中長期的な展望についても説明してくれました。
高齢者、障害者、乳幼児、外国人など、災害弱者や要配慮者と呼ばれる方たちには、災害時に特別なニーズが発生することがあります。こうしたニーズに対応していくためには、医療機関、社会福祉協議会、福祉サービス提供者、ボランティア、NPOなど様々な関係機関の連携による支援活動が必要になります。
日本財団では要配慮者の方々の特別なニーズに対して、専門性を活かした支援を行う団体に支援金を交付することで、被災地における多様な支援活動をサポートしていきます。

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取材・文:井上 徹太郎(株式会社サイエンスクラフト) 写真:和田 剛