「子どもWEEKEND」で「子ども第三の居場所」を紹介。「キリンの家」による出張カフェもオープン

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出張カフェで接客する子ども

2024年2月16日から17日にかけて、日本財団は「子ども」にフォーカスしたイベント「子どもWEEKEND」を開催しました。DAY1の分科会「広げよう!子どもの居場所での包括支援」では、子ども第三の居場所の成果を元に、2024年度から始まる「児童育成支援拠点事業」について、国・先行自治体・支援団体の声から必要性や実施方法、今後の課題を議論しました。その一部をご紹介します。

【登壇者】

  • 永松悟(杵築市長・大分県)
  • 早川悟司(社会福祉法人子供の家 施設長)
  • 山口正行(こども家庭庁 成育局 成育環境課長)
  • 李炯植(認定特定非営利活動法人Learning for All 代表理事)

「子ども」に関する取り組みの変遷

近年、貧困や不登校など何らかの困難を抱える子どもは少なくなく、課題は多様化しています。日本財団は、2016年から子ども第三の居場所を展開し、子ども支援に取り組んできました。現在、全207拠点(内訳:常設ケアモデル52拠点、学習・生活支援モデル42拠点、コミュニティモデル113拠点)に広がっています。居場所運営に関わるさまざまな団体と連携して居場所の有効性を調査し、国や自治体に質の高い居場所の拡充を提言してきました。こども家庭庁創設の流れもあり、2024年春からは、子どもに安心して過ごせる居場所を提供することを目的に「児童育成支援拠点事業」がスタートします。

国・自治体・支援団体それぞれの立場から語る

分科会は、日本財団 公益事業部 子ども支援チームの金子知史より子ども第三の居場所の事業紹介が行われた後、4名の登壇者による活動紹介、皆さまによるトークセッションと進みました。

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左から、山口さん、永松さん、早川さん、李さん

こども家庭庁 成育局 成育環境課長の山口さんからは、児童育成支援拠点事業の概要を紹介いただきました。本事業は、子どもに安心・安全な居場所を開設し、生活習慣の形成や学習支援、食事提供などを実施していきます。実施主体は市町村で、週3日以上の開所が要件となります。

永松さんは、児童相談所でケースワーカーなどを経験した後、大分県杵築市長に就任。2019年、B&G財団から助成を受け、児童館に併設した子ども第三の居場所を開所。2022年から市が地元のNPO法人に委託する形で運営してきました。

早川さんは、2022年、東京都清瀬市の児童養護施設に併設する子ども第三の居場所「そだちのステーション・つぼみ」を開所。ケアスタッフや心理士、栄養士などさまざまな職能をもつスタッフとともに、地域ぐるみで子育てをする拠点づくりに注力しています。

李さんは、2016年、子ども第三の居場所の第一号拠点を埼玉県戸田市に開所。現在は兵庫県尼崎市でも拠点を運営しています。また、独自で地域協働型子ども包括支援を全国40拠点近く運営し、小学生から高校生に向けて居場所を提供してきた経験があります。

児童育成支援拠点事業への期待

トークセッションでは、これまで子ども第三の居場所を運営してた経験から、新たに始まる児童育成支援拠点事業に活かせそうな運営方法やノウハウについての紹介がありました。

参加者も含め、皆さんが気になったのはやはり、新たに始まる児童育成支援拠点事業についてです。ポイントとなるのは、実施主体が市町村であること。子どものニーズを把握している現場のNPO等が直接手を挙げることはできないため、本事業を実施するには市町村が必要性を把握し、決定をしなければなりません。

そのため、「行政にどのように働きかければ良いのか」と質問が上がり、市長として子ども第三の居場所を推進してきた永松さんは「現場で熱量のある職員を、子ども関連のキーマンとして配置することが大切」と返答。行政と連携しながら拠点を運営する早川さんは、「必要性がわかると動いてくれるので、子どもや保護者の現状を訴える必要がある。自治体によって財力が異なるため、ショートステイや子ども食堂などの他事業と抱き合わせで実施すると予算確保に繋がりやすい」とアドバイスをしました。

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トークセッションのファシリテーションは、李さんが務めた

児童育成支援拠点事業への今後の期待としては「全ての小学校区に置いてほしい」と早川さん。核家族化が進む中で、地域ぐるみで子育てをする環境をつくることが、虐待や孤立化を防ぎ、子どもが健やかに育つことに繋がると話します。実際、杵築市では子ども第三の居場所を運営してから、利用する子どもに食事や風呂、洗濯などの生活習慣が身につき、安定した日常生活を送れるようになったケースが紹介されました。

拠点を運営する当事者からさまざまな声を聞き、山口さんからは、「児童育成支援拠点事業は子どもを包括的支援をするためのもの。積極的に使っていただきたいし、我々も現場で役立つ事業になるよう進めていきたい」と前向きなコメントがあり、事業への期待が高まった時間になりました。

大阪・キリンの家によるカフェコーナーに賑わい

この日は、大阪・泉佐野から「キリンの家」のフリースクールに通う子どもたちが、出張カフェ「お福wapi(ワピ)」をオープンし、温かいドリンクや焼き菓子を販売しました。

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ドリンクはコーヒー、紅茶に加え、「小腹が空いている時間なのでは」との子どもたちの考えから、コーンスープも販売していた

DAY1には約300名が現地参加していたこともあり、休憩中、出張カフェは行列ができるほどの人気に。朝、大阪から新幹線に乗って会場入りした15名ほどの子どもたちは、レジ・ドリンクづくり・商品提供・呼び込みの4チームに分かれて、お客さんのオーダーに応えていました。

「お福wapi」はもともと、「将来、飲食店をしたい」という一人の子どもの夢から始まったプロジェクト。子どもたちはこれまで、計4回カフェを出店し、商品の原価計算から調理、接客まで全てを子どもたちで担ってきました。

今回店長を務めたのは、飲食店を開く夢をもつ、かんた君。この日のために、「定番メニューのクッキーに加えて、新作も開発した」と気合い十分。クッキー&キャラメルフロランタンラスクのセットは、準備した145セット全てが売り切れ、手応えを感じていました。

「美味しかった」「頑張って!」と声をかけられていた子どもたち。たくさんの笑顔とありがとうの言葉を受け取った彼らが、これからどのようなチャレンジをするのか楽しみですね。

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出張カフェを大成功させ、笑顔の子どもたち。右から2人目が店長のかんた君。

取材:北川由依