アフリカ版環境再生型農業構築に向けた技術開発

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圃場での農業実験の様子

アフリカ版環境再生型農業構築に向けた技術開発とは、アフリカの湿潤サバンナのガーナをモデル地域として、地域に応じた土壌健全性(Soil Health)の改善に寄与するアフリカ版環境再生型農業技術とその有効な普及方法を開発するプロジェクトです。また、地域ごとにそれらを目的別に組み合わせた統合技術パッケージを作成するとともに、ササカワ・アフリカ財団の活動地域等への技術移転も行います。

アフリカ農業発展への新たな挑戦

アフリカの土壌は肥沃度が低く栄養条件も悪いため、農業の生産性が悪く、その結果として現地の食料安全保障が脅かされています。気候変動への対応や環境保全が求められる昨今、「健康な作物を生産する健全な土壌」の重要性はさらに高まっており、「土壌の健全性(Soil Health)」を回復させるとともに、気候変動の緩和に貢献する「環境再生型農業(Regenerative Agriculture: RA)」が世界的にも注目を浴びています。RAの例として、畦などのある一定の幅の列ごとに異なる作物を栽培することで、連作障害を軽減し、土地の利用効率を上げる間作や、あえて畑を耕さないことで土壌浸食防止、雑草発生の抑制および土壌水分の保持をもたらす不耕起栽培が挙げられます。

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カウピーとピジョンピーの間作。

また、アフリカの小規模農業では、生産性向上のための土壌肥沃度管理に重きを置いた「持続的農業集約化 (Sustainable Agricultural Intensification:SAI)」が推進されています。現地の小規模農家にとって、SAIの推進とRAの両立は、アフリカ農業の発展に向けた新たな挑戦といえます。

科学的エビデンスに基づいたアフリカ版環境再生型農業技術

このような状況の中、日本財団の助成先の1つであるササカワ・アフリカ財団(SAA)はRAを重点分野の1つとして、サブサハラ・アフリカにおいて持続可能で強靭な農業システムを確立することを目指しています。しかし、現地の小規模農家にとって有効なSAIとRAを両立させる技術の検証は十分とはいえません。アフリカの小規模農家を取り巻く環境の多様性を理解し、彼らが実践可能な「アフリカ版環境再生型農業(AfRA)技術」と、地域の受容条件の変化を考慮した適合型統合パッケージを作成して、現場で実証することが求められています。そして真に持続的な食料安全保障を実現するためには、科学的知見に基づいたアフリカ版環境再生型農業(AfRA)技術の開発と、その展開のための人材育成が求められています。

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傾斜圃場における降雨時の土壌浸食の様子。不耕起栽培(左)では、土も雨もほとんど流れないのに対し、耕起栽培(右)では濁水があふれ出る。

今後のプロジェクトの動き

本事業では国際農林水産業研究センター(JIRCAS)がガーナの第三の都市タマレにある開発研究大学(University for Development Studies)とサバンナ農業研究所(Savannah Agricultural Research Institute)と連携してAfRA技術の統合パッケージを作成し、SAAのそれぞれの活動国の現地スタッフをガーナに招いて研修を実施し、その技術を活動国で展開していく予定です。一貫して、このプロジェクトがアフリカ小規模農家の環境に配慮した持続的な農業生産性の向上につながり、ひいては貧困問題の解決と気候変動の緩和に貢献することが期待されます。