日本理解促進プログラム諸外国との協力関係づくりに向けて

READ JAPAN PROJECTでの南太平洋大学(トンガキャンパス)への図書寄贈

背景と目的

1990年代以来、日本の経済成長は勢いを失い、近年では、長期的な経済停滞と少子高齢化に憂慮する国となっています。国の停滞と比例するように、世界における日本の存在感は徐々に低下し、発信力も薄れています。このような状況の中、日本が諸外国との協力関係を築くためには、諸外国の人々に日本に関心を持ち、多面的に理解してもらうことが重要だと考えています。
日本財団では、海外における日本理解の促進を目的に、諸外国の大学院生や知識層を対象に、人材育成に資する事業を実施しています。中長期的には、日本理解促進の担い手として、彼らや彼女らが自身のキャリアや活動を通じて日本に関する知見を活かし、日本への関心・理解が国際社会に波及していくことを目指しています。

事業一覧

  1. 日本研究支援
    1. 英国における日本研究奨学金プロジェクト
    2. 北欧諸国における現代日本研究支援
  2. 日本語学習支援
    1. アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター日本財団フェローシップ
    2. NF-JLEP Association(日本語教育基金)
  3. 書籍を通じた日本理解促進事業
    1. READ JAPAN PROJECT
      1. 日本に関する英文図書の寄贈
      2. 東京国際文芸フェスティバルの開催
      3. 翻訳者育成
      4. 翻訳出版支援
    2. 中国の大学への図書寄贈

支援領域

1.日本研究支援

1.英国における日本研究奨学金プロジェクト

英国は、世界の日本研究の中心拠点の一つですが、近年英国では日本研究を行うセンターや大学院へ進む日本研究課程の学生が減少しています。このことから、2008-2012年にかけて英国12大学に13講座を設置し、講師の雇用費用を支援。うち11講座については、大学の財源で継続しています。2013年からは、日本研究を行う修士および博士課程の学生に対し、奨学金を提供しています。これまで計159名(延べ247名)を支援してきました。フェローの中には、研究課程に在籍している人も多くいますが、企業、研究機関、国際機関、政府機関など、様々な就職先でキャリアを歩み始めている人たちがいます。

2.北欧諸国における現代日本研究支援

日本と北欧の関係強化を目指し、北欧5カ国(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、アイスランド)の大学において現代日本研究講座の講師雇用費を5年間支援するほか、現地の大学に在籍する博士および修士課程の学生を対象に訪日研究に係る費用を助成しています。
2017年の事業開始以来、計9大学の9名の講師ポストならびに博士課程者10名と修士課程者9名を支援してきました。

2.日本語学習支援

1.アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター日本財団フェローシップ

本事業では、日本研究に従事する海外出身の大学院生を対象に、日本研究に求められる高度な日本語能力を身に着けてもらうことを目的として、毎年20名に対し、横浜に拠点を置くアメリカ・カナダ大学連合日本研究センター(IUC)の10か月間の上級日本語プログラムの受講に係る授業料および生活費を含む奨学金を支援しています。9年間で165名を支援し、その多くは現在も欧米を中心とした大学で研究課程に在籍し、研究に取り組んでいます。

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IUC日本財団フェローシップの奨学生(2019-2020年度)
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IUC上級日本語プログラムでの授業風景(2018-2019年度)
IUCフェローの声

「IUCプログラム受講前は、日本語の小説や記事を読んだり、日本語で発表を行ったりすることは考えられなかったが、今ではこれらのことができるようになった。他の学生と共に勉強し、話し合う経験は大変役に立った。IUC卒業後は日本の宗教について研究を続けながら、アメリカで法律関係の仕事に就くことを考えている。」

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クリスティーン・ジョンストンさん(2021-2022期生)

2.NF-JLEP Association(日本語教育基金)

本プログラムでは、日本財団から6ヵ国8大学に設置した各150万米ドル基金を活用し、海外における日本語教育の推進を目的に、日本語教師の育成支援や日本語を学ぶ学生への奨学金の支給を行っています。これまで、基金を共有する大学を含めた11大学にて、2,000名を超える大学院生や日本語教員のスキルアップに貢献しています。
本プログラムは、公益財団法人東京財団政策研究所の運営のもと実施されています。

3.書籍を通じた日本理解促進事業

1.READ JAPAN PROJECT

本を活用した事業を「READ JAPAN PROJECT」と総称し、世界の人々に日本に関心をもち、理解を深めてもらうことを目的に事業を展開しています。

1.日本に関する英文図書の寄贈

日本財団は、2008年より、世界各国の図書館や研究機関に日本に関する英文図書を寄贈しています。本事業では、政治、経済から文学・芸術まで多岐にわたる分野の英語の翻訳本や英語で書かれた原書を200冊を厳選し、その中から寄贈先の要望に応じた本を贈っています。2021年4月時点で、138カ国・1,066機関に寄贈を行い、各地の図書館や研究機関で研究者から一般市民まで広く活用されています。
本プロジェクトは、2021年度より、日本財団の助成事業として、公益財団法人東京財団政策研究所が実施しています。

2.東京国際文芸フェスティバルの開催

「東京国際文芸フェスティバル」は、日本の文芸の魅力を世界に発信することを目的に、日本発の国際文芸祭として、2013年、2014年および2016年に開催しました。国内外から、多くの読者、作家、翻訳者らが集い、朗読会やトークショーをはじめとするイベントを通して語り合いました。国境を越えて、物語の世界をひとりひとりが感じ、感じたものを互いに共有することで、参加者同士の交流も生まれました。

3.翻訳者育成

英語に翻訳されている日本の書籍は数が限られていますが、その要因の一つは翻訳者の不足です。質の高い翻訳者を育成することが、より多くの人に日本の本に接してもらう一助になると考え、2009年度から若手日英翻訳家を対象とした育成プログラムを開始しました。文芸分野では英国のイーストアングリア大学、学術分野ではロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)を拠点に、翻訳ワークショップの実施と翻訳者のネットワーク作りを支援しました。2017年度の事業終了までに、延べ100名以上の若手翻訳家の育成に加え、ワークショップを通して翻訳した多数の文学作品や学術文献を刊行しました。

4.翻訳出版支援

翻訳者の育成と並行して、2010~2017年度にかけて、海外読者向けに、現代日本文学の英語翻訳と出版支援も行いました。
代表例として、米国の非営利出版社A Public Spaceが刊行した、文芸誌「Monkey Business」第1号〜7号があります。国内外で刊行記念イベントを併せて実施し、現代日本文学の周知を行いました。
また、2014年には、英国の文芸誌「Granta」の日本特集(第127号)や同雑誌の国際版「Granta Japan」の創刊号の出版に協力し、日本や海外作家の文学作品を世に紹介する一役を担いました。

2.中国の大学への図書寄贈

公益財団法人日本科学協会が実施する本事業では、日本と中国の知識の交流を目的に、図書館や企業、個人など広く一般から提供いただいた日本語の本を中国全土の大学に寄贈しています。中国で手に入りにくい日本の専門書や古典などは特に重宝され、現地の教職員や学生の学びに貢献しています。2021年2月時点で、計80大学に3,948,000冊を超える本が寄贈されています。

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日本財団 特定事業部 グローバル・イシューチーム

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