日本財団 海洋酸性化適応プロジェクト

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カキ養殖場におけるカキの一斉産卵の様子

日本財団 海洋酸性化適応プロジェクトとは

水質を定期的にまた連続的に観測することによって、日本の沿岸海域における酸性化の現状と実態を把握するとともに、そのメカニズムを調査分析し、その進行状況について将来予測を行い、緩和策や適応策を見つけ出すことを目指すべく2020年4月に開始したプロジェクトです。

このプロジェクトは国内の複数の研究機関や漁業団体等が協働し、日本近海の中でも特に沿岸海域に焦点を絞り、複数の観測サイトを設けてマガキなど二枚貝類の浮遊幼生の採集や観測、飼育実験などを行っています。これにより、現時点と将来における海生生物の影響について解析しています。

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カキの浮遊幼生を採取する様子

本来、弱アルカリ性であるはずの海水。酸性化が進む

海水の酸性化には、大気中の二酸化炭素が増加して海水に溶け込み、本来は弱アルカリ性である海水のpHが中性に近付く海洋酸性化と、陸水とそれに伴い流入した有機物を微生物が分解して生ずる二酸化炭素によってpHが低下すること等で起こされる沿岸酸性化があります。

これまでの本プロジェクトの成果として、日本沿岸の複数の海域において、飼育実験で明らかにされたウニやマガキの浮遊幼生に悪影響を与えるとされるレベルまで沿岸酸性化が進んでいることが分かりました。

現時点では、幸いにも自然海域でウニやマガキに異常は確認されていませんが、二酸化炭素排出量の増加に伴って世界中で海洋酸性化は進んでおり、全球的な海洋酸性化が進行すればリスクはさらに高くなっていきます。

海水の酸性化による漁業への被害の可能性

海水の酸性化が進行すれば、カキやホタテガイなどの貝類、エビ・カニ類、サンゴやウニといった炭酸カルシウムで骨格や殻をつくる海洋生物の成長が阻害されることはもちろん、魚類の孵化率の低下や卵発生に異常を来たし、漁業に甚大な被害をもたらす可能性があります。

カキ養殖のモニタリングを実施し、緩和策や地域に応じた適応策を検討

本プロジェクトでは、日本の沿岸部でも特に影響が危惧されるカキ養殖など貝類養殖場を中心に継続的なモニタリングを実施しています。
大学や水産研究所等の複数の研究機関と漁協などの漁業団体が団結し、さらに観測サイトを増設してより広域的なデータを収集、解析し、漁業への影響をいち早く察知できる体制づくりを進めています。

また、海洋酸性化研究の先駆者であるワシントン大学や国際的な海洋酸性化研究組織GOA-ON(Global Ocean Acidification Observing Network)と連携することで、それぞれの地域に応じた緩和策や適応策を検討していきます。

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実際に海水等を採取してデータを集める様子

海洋酸性化に関する詳しい情報は、日本財団ジャーナル「海洋酸性化の脅威」をご覧ください。

お問い合わせ

日本財団 海洋事業部 海洋環境チーム

  • メールアドレス:kaiyo_info@ps.nippon-foundation.or.jp