瀬戸内における包括的海洋ごみ対策事業「瀬戸内オーシャンズX」4県知事とのトップ会合を初開催実施期間延長や4県連携の大規模合同清掃の実施で合意、年間86トンの回収体制目指す

日本財団は、瀬戸内海における包括的な海洋ごみ対策を目的としたプロジェクト「瀬戸内オーシャンズX」の一環として、共同して推進する4県(岡山・広島・香川・愛媛)の知事、及び当財団代表によるトップ会合を初開催しました。プロジェクトの進捗状況や成果を振り返りながら今後の展開について検討した上で、実態を元に新たな目標を設定し、達成に向けて実施期間を延長することや、4県が連携した大規模な清掃活動を実施することで合意しました。

合意内容

  • 瀬戸内オーシャンズXの実施期間を2028年3月までにする
  • 2025年夏に4県合同の大規模清掃を実施

新たな目標

86トンのごみを毎年継続して回収する仕組み構築(2028年3月までに344トン以上回収)

写真
合意事項に署名〔写真左より:伊原木 隆太(岡山県知事)、湯﨑 英彦(広島県知事)、笹川 陽平(日本財団会長)、池田 豊人(香川県知事)、中村 時広(愛媛県知事)〕

本プロジェクトはプラスチックをはじめとする海洋ごみ対策を目的として、外海からごみが流入しにくい瀬戸内海を囲む4県と当財団が、2020年12月に協定を締結して推進している取り組みで、当初は2020年度~2024年度の約5カ年で実施する予定でした。一方で、当財団が実施したごみの発生量に関する調査データや、自治体・清掃団体が保有していた回収量に関するデータ等を元に、4県におけるプラスチックごみの発生・回収量を算出したところ年間約388トンが発生している一方で、回収については主に公的機関が主導して約302トン、瀬戸内オーシャンズXで約26トン、合わせて約328トンであったことから、この差である約60トンが毎年、海洋ごみとして流出している実態が判明しました。

  • 沿岸域学会誌(2023年)

この実態とこれまでの取り組みや成果を振り返った上で、今後の展開について検討した結果、瀬戸内オーシャンズXの実施期間を当初予定より3年伸ばし、2027年度(2028年3月)までにすることといたしました。この間に、回収しきれていない60トンを加えた86トンのごみを海や河川から毎年継続して回収する仕組みを構築するとともに、フロート等の漁具を対象に海域での発生を抑制しながら、ごみを減少に転じさせることを目指します。なお、この一環として2025年の夏、4県が合同した大規模清掃を実施することでも合意しました。

本プロジェクトでは協定を締結した2020年12月〜2024年3月までの間、計約78トンのごみを回収し、参加人数は延べ12万人に達しました。延長期間も含めた2024年4月〜2028年3月には、ごみの回収量は約344トン以上、約20万人の動員を見込んでいます。

日本財団は、今後も自治体を超えた広域の連携体制のもと、循環型社会を見据えた海洋ごみ対策のモデルを構築し、次世代に豊かな海を引き継ぐための施策を進めていきます。

4県における海洋ごみの現状の概要図。掲載論文「沿岸域学会誌(2023年)」の「瀬戸内オーシャンズXで回収している量」より追記。陸域からの海洋ごみ流入量は年303トン。さらに海域での海洋ごみ発生量は年85トン。合計の年間流入・発生量は年388トン。そして陸・海域での海洋ごみ回収量のうち、年302トンは、主に環境省、国交省、農水省、水産庁、各府県市町、港湾管理者、漁協等の公的機関で回収されてきた量(2017~2021年度5カ年の平均値)。26トンは瀬戸内オーシャンズXで回収している量(2021年度~2023年度の瀬戸内オーシャンズXでの合計回収量は78トン。これを3県で割って求めた平均値26トン)海洋ごみ総流入発生量から回収量を差し引いた、回収不足量は年60トン。(外域からの流入量・外海への流出量は検討対象外)今回の調査により、瀬戸内オーシャンズXの領域で回収すべき量は約86トン(388トン-302トン)、現在ペースでの回収不足量(減少に転じさせるために追加で回収すべき量)は+約60トン(86トン-26トン)という、2つの数値が明確になった。
4県における海洋ごみの現状

登壇者コメント一部抜粋

笹川 陽平(日本財団会長)

「瀬戸内オーシャンズXの取り組みは、世界的にも先駆的な海洋ごみ対策の事例になると考えている。瀬戸内海を世界で一番美しい海にし、これをモデルに世界に発信していきたい」

伊原木 隆太(岡山県知事)

「他県と比較して用水路が多い岡山県では、瀬戸内オーシャンズXの調査を通じて、ごみが集中的に溜まっているホットスポットが明らかになった。これをきっかけに、清掃ボランティア活動を支援する独自制度の創設や、町内会や学校等による地域の実情に応じた効率的な回収活動のモデルづくりに取り組んでいる。こうした取り組みの芽をしっかりと育てていかなければならない。」

湯﨑 英彦(広島県知事)

「瀬戸内オーシャンズXでは、これまでに、離島などのアクセス困難エリアにおいて、発泡スチロ ール製のフロートやカキパイプ等の回収・処理を進め、その効果は、本県の海岸漂着物の減少にも寄与している。瀬戸内オーシャンズXの期間延長に伴い、今後は、回収・処理に加えて、かき養殖資材の発生抑制、流出防止対策を強力に推進していきたい。」

池田 豊人(香川県知事)

「香川県では、ここ10年ほど、県内268地点で漂着ごみの状況を調査しているが、瀬戸内オーシャンズXが始まった2020年頃から顕著に減ってきており、やはり継続して取り組まなければならないと強く感じている。今後も取り組みを継続できる仕組みづくりや、離島の漂着ごみの問題などについても、この4県で連携して、延長された期間で引き続きしっかりと取り組みたい。」

中村 時広(愛媛県知事)

「令和3年度に本県が実施した調査で、南予地域における離島や半島などの立ち入り困難な海岸に、軽トラック3万2千台相当のごみが確認され、衝撃を受けた。先般瀬戸内オーシャンズXで実施した、上陸船を用いてごみを一掃する実証実験の効果絶大であり、これをきっかけに今後大規模な事業展開につながることを期待している。」

瀬戸内オーシャンズX

瀬戸内海に面する4県(岡山県、広島県、香川県、愛媛県)と日本財団が2020年12月に連携協定を締結し、共同で推進している包括的海洋ごみ対策プロジェクト。外界からの海洋ごみ流入が少ない海域(閉鎖性海域)である瀬戸内海をフィールドに、①調査研究②企業・地域連携③啓発・教育・行動④政策形成の4つの柱で事業を実施。

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