“ソーシャル・インパクト・ボンド”パイロット事業第2弾福岡市・松本市など複数自治体による経産省の認知症予防事業への参画

2015年6月8日、日本財団は、経済産業省ヘルスケア産業課の「平成27年度経済産業省健康寿命延伸産業創出推進事業委託事業」を、株式会社公文教育研究会が受託するにあたり、参加団体として協働することが決まりました。福岡市、松本市など複数の自治体と連携し、同社が設立した「くもん学習療法センター」が確立している学習療法を導入した認知症予防領域における「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」(詳細別紙)のパイロット事業を7月1日より行います。

全国の認知症有病者数は、2012年は推定462万人でしたが、2025年には700万人を超えると推計されています(※1)。さらに、認知症に関連する「社会的費用」(※2)は、年間約14.5兆円(医療費:1.9兆円、介護費:6.4兆円、インフォーマルケアコスト:6.2兆円)にのぼります(2015年5月、厚生労働省研究班の報告)。将来推計では、団塊の世代が85歳以上になる2035年には総額22兆9,244億円にまで膨らむと試算され、今後、社会的費用の費用対効果研究を通じ、限られた財源が十分活用されているかを検証する必要性が指摘されています(※3)。

本パイロット事業では、認知機能改善の実績がある学習療法を導入し、高齢者のQOL向上を図ると同時に公的コスト削減を目指して2つのプロジェクトを実施します。1つは、高齢者福祉施設において学習療法を実施し、被験者の要介護度の変化を計測するもの。もう1つは、健康教室等において学習療法を実施し、医療費・介護費用等の削減効果を検証、合計200人分のデータを取得し、最終的に社会的インパクト評価を行います。検証用データは、被験者の同意を得たうえで、個人情報を除いた医療費・介護保険費用が連携先の自治体から開示されます。

また、経済産業省の委託期間である6カ月間に加え、公文教育研究会の独自予算で6カ月間事業を継続し、1年間の効果を計測。本パイロット事業では事業実施により維持・改善する高齢者の認知症の進行度合いと同時に、その結果削減される行政コストを検証し、検証結果をもとに2016年度以降にSIBを導入したプロジェクトを実施する見込みです。現在の制度下では、適切なケアを行い要介護度が下がると給付限度額が下がることから、施設経営を圧迫することが懸念されていますが、SIBを本格導入する際には、施設が成功報酬を受け取れる仕組みの設計も検討しています。

日本財団は、中間支援組織として、本パイロット事業の案件組成に向けた関係者間の調整、プロジェクト管理等の支援を実施します。なお、本事業は日本財団が実施するSIBのパイロット事業としては2015年4月に開始した横須賀市と推進する特別養子縁組事業に続く2件目の事業です。さらに、尼崎市とのパイロット事業も実施に向けて最終調整中です。

  • 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)
  • 認知症のグループ医療費や介護費などの直接費用だけでなく、本人や家族の労働生産性損失など目に見えにくい費用までを含んだ社会全体の費用
  • 厚生労働科学研究報告書 慶応義塾大学医学部と厚生労働科学研究の共同研究グループ

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