海の未来を考える
海の未来

ネレウス・フェローが東北の海を訪問『未来の海を守るために』


日本財団ネレウス・プログラムとは、世界トップレベルの若手海洋学者たちを育成して10年後の海を予測し、様々な課題や解決法を考えようというプログラム。そのネレウス・フェローたちが、震災後の東北の海を訪れた。

2013.03.22

「科学者というのは、本や数字を使い、コンピュータで作業して物事を解決するため、ときに“冷たい人間”なのかもしれません。しかし人生には心のない冷たい事実よりも、はるかにもっと多くの意味があると感じました」
今回の東北訪問を終えた、米国プリンストン大学のライアン・リカクツェヴスキーはこう語ってくれた。

日本財団ネレウス・プログラムとは、アメリカのプリンストン大学、イギリスのケンブリッジ大学など、世界の一流大学において若手科学者たちを育成し、各自の専門分野を横断した共同研究や情報発信を通して、世界の海の未来の姿を科学的・総合的に予測し、具体的な課題解決に取り組もうというプログラムだ。

そのフェローたちから
「東北の海のために我々にできることはないか?」
「漁業者や地域の人々に自分たちの学んできたことを伝えることで力になりたい」
「現地を訪れ、津波の破壊力の大きさや地域への影響を実際に知ることで、今後の研究に役立てたい」
といった声が上がった。

世界トップレベルの海洋学者たちに東日本大震災後の東北の海を見てもらい、現地の中学高校で海に関する授業を行うなど、今後の東北の海を担う漁業者たちと交流してもらうことは大きな意味があると考え、日本財団は2012年11月に東北訪問を実現させた。

「東北地方を訪問し、そこの学校や漁業コミュニティを訪れる機会をいただけたことに感謝したい。それは私の日本の人々に対する感じ方や、悲劇とは何かについて、そして人々の生活の復元力についての考え方を変えてくれたからです。このプログラムに参加したみんなも、東北地域から学ばせてもらった多くの素晴らしい教訓に対して、同じように感謝を示したいと思っています。(日本語で)ありがとうございます」(米国デューク大学 ダニエル・ダン)

東北の海で、多くのことを感じ、様々なことを考えたというフェローたち。この訪問が、未来の海を守るために様々な角度から分析するために創設されたネレウス・プログラムで、さらに新しいアプローチを生む機会になってくれるだろう。

●東北訪問に参加したネレウス・フェロー

ウィルフ・スワルツ(Wilf Swartz)
所属:ブリティッシュ・コロンビア大学 漁業研究センター(カナダ)
専門:漁業経済学

オードリー・バルズ(Audrey Valls)
所属:ブリティッシュ・コロンビア大学 漁業研究センター(カナダ)
専門:海洋生態系(海洋エコシステムモデリング)

アンドレ・ブスタニー(Andre Boustany)
所属:デューク大学(米)
専門:海洋空間分析学 大型魚類(マグロ)

ダニエル・ダン(Daniel Dunn)
所属:デューク大学(米)
専門:海洋空間分析学 混獲問題

ライアン・リカクツェヴスキー(Ryan Rykaczewski)
所属:プリンストン大学(米)
専門:海洋生物学 気候変動

ケリー・キアニー(Kelly Kearney)
所属:プリンストン大学(米)
専門:海洋学 気候変動

クリス・マクオーウェン(Chris McOwen)
所属:ケンブリッジ大学世界自然保護モニタリングセンター(英)
専門:生物多様性学 沿岸域生態系

ジャン・ローレンス・ジェッファート(Jan Laurens Geffert)
所属:ケンブリッジ大学世界自然保護モニタリングセンター(英)
専門:海洋生物絶滅種 海洋生物生息域マッピング

マーク・メティアン(Marc Metian)
所属:ストックホルム大学(スウェーデン)
専門:水産養殖学 資源管理学

アンドリュー・メリー(Andrew Merrie)
所属:ストックホルム大学(スウェーデン)
専門:資源管理学 政策分析学

撮影・編集:木戸正悟