アフリカから“飢え”がなくなる日まで
人間の安全保障

アフリカの食糧自給の課題と Sasakawa Global 2000 の取り組み


アフリカにおいて生きるために最低限必要な食糧の生産量は多雨や干ばつなど、天候に大きく左右される。食糧援助に頼らず、安定した食糧自給を行うため、ササカワ・アフリカ財団(SAA)はバリューチェーンに沿った農業支援プログラムを通じて、アフリカの小規模農家の農業生産性向上、農産物の付加価値向上、そして現金収入を増やす取り組みを行なっている。

2017.12.18

8月、ウガンダ、エチオピアの地面は緑に覆われ、農作物が実り、豊かな農業国を象徴しているように見える。ただし、1年の天候は雨の多い雨季と少ない乾季に大きく分かれ、1年分の食糧自給が安定するかどうかは、作物の生育期である雨季の雨量に左右される。

人口は増加し、食糧が足りない!

アフリカでは、人口増加が著しく、1世帯に6~8人の子どもがいることも決して珍しいことではない。2017年発表の国連人口基金統計によると、アフリカの人口は2017年現在で12億人を超え、2040年までに20億人に達すると予測されている。一方、干ばつ等で作物が不作となれば、食糧不足に見舞われる。飢饉が起こるたびに、多くの国々は国際社会の緊急援助に頼らなければならない。さらに、近年は気候変動の影響を受け、予定どおりに収穫ができない状況が続いている。増え続けるアフリカの人口に対し、安定した食糧自給をどのように実現したらよいのだろうか。

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エチオピア・モジョ近郊

アフリカでは、人口の8割近くが農業従事者といわれ、多くの国々で農業が国の基幹産業として成り立っており、長期的に農業関連分野に従事する人材をいかに育成していくかが重要な課題である。また、アフリカでは、近年農村部から都市への移住者が増加し都市化が進む一方で、仕事に就けない人々も増え、失業率が高まっている。当面の課題は、大きな市場となりつつある都市部に、農村部からいかに食糧を効率よく供給できるかにある。人口増加が著しいアフリカでは、人口の約3分の2が25歳以下の若者だ。今後、他の産業とともに農業分野が発展し、若者を農業関連産業で雇用・育成することができれば、長期的な失業率の低下と持続的な食糧安全保障の実現に繋げることが可能となり、アフリカに明るい未来を切り開くことができるだろう。

31年間にわたってアフリカの農業を支援

1986年、エチオピア大飢饉の直後、その惨状を見た故・笹川良一日本財団初代会長が、「緑の革命」の父として知られる農学者故・ノーマン・ボーローグ博士に協力を呼びかけ、民主主義の伝道に携わるジミー・カーター元米国大統領とともに、笹川アフリカ協会外部サイト(現ササカワ・アフリカ財団・SAA)を設立した。東南アジア等の地域で実践されていた食糧生産における農業の潜在性の大きさに着目し、アフリカの農業開発を支援する組織を立ち上げた。アフリカは小規模農家が多く、これら農家の多くは非効率な伝統農法で耕作を行っていた。そのような環境において、SAAでは、小規模農家の生活を支えるために、生産性向上、加工や市場アクセスの改善等を通じて農産物の付加価値を高めることで現金収入につなげる「バリューチェーン」のアプローチを取り入れながら、農業支援プログラムを展開している。

この農業支援プログラムは、Sasakawa Global 2000(SG2000)と呼ばれ、以下の5つのテーマを実施している。

テーマ1 農作物生産性向上

農業生産性を高め収穫量を増やすため、改良品種や改良農業技術のデモンストレーションやトレーニングを行い、増産に必要な知識や技術を小規模農家に伝える。

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エチオピア・昔ながらの牛耕

テーマ2 ポストハーベスト&農産物加工

農産物の収穫後のロスを減らすため、収穫後の処理の機械化や貯蔵技術の導入を促進して、小規模農家が効率的に、質の高い農産加工品を市場に出せるようにする。

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ウガンダ・ムコノ村の脱穀風景

テーマ3 官民連携と市場アクセスの確保

農業資材を購入することができない小規模農家に対し、購入補助制度を提供したり、農協を主体に農民たちから農作物を集めて、大規模なバイヤーに販売するなど、多様な方式でマーケティングや市場へのアクセスの強化を行う。

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エチオピアのアルシ・ネゲレにある農産物加工組合の売店

テーマ4 人材育成

大学講座の設置や奨学金供与を実施する笹川アフリカ農業普及教育基金(SAFE)プログラムを通して、農業普及員に理論と実践の場を提供する。農業に関する豊富な技術や知識を有する人材を育成する。

テーマ5 モニタリング評価

SAAの活動について客観的な数値情報をもとに事業活動のモニタリング、評価を行う。小規模農家のニーズや優先課題を把握し、活動を通じて得た知見・情報を組織内外に共有する。

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ルース・オニヤンゴSAA会長

アフリカの農業及び栄養分野の権威であるルース・オニヤンゴSAA会長は、SAAのユニークな点として「農民とともに現場に赴くこと、自分たちで教訓を学んでいること、長期間にわたって支援していること、人材育成に重点を置いていること」を挙げ、「農業は、食糧を提供するだけでなく、人々を貧困から抜け出させ、雇用を作り出す潜在力を持っています。だからこそ、アフリカの農業を担う多くの小規模農家を組織化し、支援することが重要なのです」と話す。

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エチオピアのカントリーディレクター、アベラ・デベロ博士

SAAは過去31年間にわたり15カ国で活動を行ってきたが、現在は4カ国に絞って事業展開している。エチオピアのカントリーディレクター、アベラ・デベロ博士は次のように話す。「SAAの始めた農業普及政策が成功したことで、エチオピアをはじめとするアフリカの国々では、技術や知識の普及方法を変え、政府もSG2000のアプローチに基づいて農業政策を立案するようになりました。今もアフリカの多くの地域では食糧不足が続いており、生産技術を改善する余地が多くあります。例えば、エチオピアは約1億人の総人口のうち、数百万人の食糧が確保されていない状況です。だからこそ、日本財団の継続的な支援・貢献は大きく、SAAの活動は、この地域にとって必要とされているのです。」

撮影:大沢 尚芳

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