別府障害インクルーシブ・シティプロジェクト~別府から世界へ、インクルーシブ社会のモデルを発信~

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別府市内の飲食店やホテル、各施設では、バリアフリーが進んでおり、車いすユーザーが利用しやすいよう工夫されている。別府市は民間施設含め、”自然に”インクルーシブな街といえる

「別府障害インクルーシブ・シティプロジェクト」とは

「別府障害インクルーシブ・シティプロジェクト」とは、大分県別府市で培われてきた「No Charity, but a Chance !(保護より機会を!)」の理念をもとに、障害のある人とない人が共に働き、暮らす地域社会の仕組みをさらに発展させる取り組みです。専門家による仮説検証や住宅・雇用・制度づくりへの展開を通じて、日本の文化や価値観に根ざした支援モデルを構築し、国内外に広げていくことを目指すプロジェクトです。

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オムロン太陽株式会社内で障害のあるなしにかかわらず従業員が一緒に就業する様子

大分県別府市は、1965年に整形外科医・中村裕氏が設立した社会福祉法人太陽の家を原点に、障害のある人とない人が共に働き、暮らすまちづくりを進めてきました。

「No Charity, but a Chance !(保護より機会を!)」の理念のもと、障害者を「保護の対象」ではなく「可能性ある労働者」と位置づけ、半世紀以上にわたって障害のある人々が働き、収入を得ながら地域の一員として暮らしています。障害のある人が日常的かつ自然な形で社会に参加する土壌が整えられ、地域には、太陽の家を中心とした「福祉版企業城下町」とも呼べる、インクルーシブ(※)な環境と雰囲気が育まれています。

日本財団は、この歴史と実績を基盤に、「別府障害インクルーシブ・シティプロジェクト」として新たな挑戦を始めます。地域社会のインクルーシブな仕組みを科学的に可視化し、住宅や雇用、制度づくりなどへも展開することで、障害のある人が自分らしく暮らし続けられる社会モデルのさらなる発展を目指します。

別府で培われた独自の障害者支援を、汎用可能なモデルへと整理しながら、ビジネスセクターと非営利セクターが協働し、日本の文化、伝統、価値観に根ざした支援の仕組みを構築することで、誰もが安心して暮らせる社会づくりを進めます。

本プロジェクトで構築する支援モデルは、国内の展開にとどまらず、特に文化的に近いアジア諸国の障害者支援分野において活用していきます。

  • 人種、性別、国籍、社会的地位、障害に関係なく、一人一人の存在が尊重される状態や考え方

現在取り組んでいる内容

本プロジェクトにおいて、現在取り組んでいる内容は以下の通りです。

インクルーシブ社会の実態調査

現在、別府で育まれた“インクルーシブな地域社会”を科学的に明らかにすべく調査をしています。「障害のある人が働き、収入を得て消費活動に参加することで、地域が自然にインクルーシブへと発展する」という仮説をデータと調査を通じて検証します。調査結果は、2026年に発表します。

今後プロジェクト内で取り組む内容

本プロジェクトでは「モデルの提案」を主眼において事業を進めます。具体的な事業としては以下のテーマについて市内の団体や市内外の専門家と検討しています。

1. バリアフリー住宅推進事業

障害のある人が地域で安心して暮らせる住宅環境を「当たり前」にすることを目指します。体験型のバリアフリー住宅を整備し、当事者や家族、支援者、行政、事業者が学び合える場を提供します。住宅改修の質を高めるとともに、バリアフリー住宅の需要と供給の実態を明らかにし、制度改善へとつなげます。

2. 「親亡き後」を見据えた成年後見支援

「親亡き後」を見据えた成年後見支援親が亡くなった後も、障害のある人が安心して暮らし続けられるような環境づくりを行います。成年後見制度の周知と活用を進めるとともに、支援者に寄り添う仕組みづくりや担い手の育成を通じて、将来に備えた安心な体制を作るモデル事業を行います。

3. 特例子会社と障害者雇用の調査

特例子会社(※)の実態を調査し、インクルーシブな就労の推進に向けた意義や可能性、改善点、好事例を整理する予定です。蓄積された知見やノウハウを活かして課題を明確化し、親会社やグループ会社全体をインクルーシブな環境へと導くきっかけをつくります。

  • 障害者の雇用促進、雇用の安定を図るために企業や企業グループ内に設立される子会社

4. 福祉×ビジネスの海外展開

別府市では、社会福祉法人太陽の家と企業による合弁会社を通じて、障害者就労の仕組みが発展してきました。特に身体障害者の就労に関する豊富なノウハウを持つこのモデルを、就労がまだ十分に進んでいない東南アジアへ展開し、地域における障害者雇用の拡充を行います。

本プロジェクトでは個別具体的な課題解決型事業を支援するに留まらず、より多くの支援団体や地域が実際に活用できるモデルや実践に基づいた知見を提供し、国内外で持続可能な障害者支援の仕組みを広げることを目的としています。

日本財団はアジア最大規模の助成財団としての役割をさらに強化し、本プロジェクトならびに長年にわたり培ってきた障害者支援の経験をより拡大していきます。

お問い合わせ

日本財団 特定事業部 障害インクルージョンチーム

  • メールアドレス:100_shougai_inclusion@ps.nippon-foundation.or.jp