夢の奨学金

日本財団の取り組み

何らかの事情により親元で暮らすことができない社会的養護の子どもは、原則として18歳を迎えると、児童養護施設や里親家庭など、それまで暮らしていた場所から出て行くことが求められます。こうした若者は全国で毎年1,600人ほどいて、その多くが住居費や生活費を捻出するための就労を余儀なくされています。そして、経済的な理由に加え体力的・精神的な疲労から、進学をあきらめたり、進学しても長く続かなくなったりするケースが圧倒的に多いのが現状です。
例えば、厚生労働省の調査によると、大学や専門学校への進学率は一般の若者が77%なのに対し、施設出身者は23%であり、全国児童養護施設協議会の調査では、施設出身者の大学中退率は約25%となっています。
また、就職をしても低賃金や不安定な就労形態のもとで働くことが多く、いざという時に頼れる親や故郷もない中で、厳しい生活を強いられている人が多数存在します。
このように、社会的養護出身者については、「『親なし』だけでなく『家なし』『学歴なし』という3重のハンデを負いやすい」という声が聞かれていました。
そこで、この厳しい現実に問題意識を持った日本財団の職員有志が奨学金の構想を練り上げました。
大切にしたのは、ハンデを克服するために真に必要なことは何か、ということ。
「こんな奨学金があったらいいな」という要素を現場の専門家から聞き取り、一つ一つ加えていきました。「夢の奨学金」というやや月並みな名前も、そうした背景から実を伴うものとして付けました。
特徴の一つは、学費全額に加えて生活費や住居費もカバーすること。勉学やサークル活動といった学生としての経験をバイトのためにあきらめず、できるだけ多く積んでもらうようにするためです。
また、全ての奨学生に夢の奨学金ソーシャルワーカーが寄り添い、精神的ケアも含めて就職までサポートするのも特筆すべきポイントです。これも、社会的養護出身の若者は精神的に追い詰められる傾向にある、という現場の声から盛り込みました。
未来を諦めないその強い意思に応えるために、「夢の奨学金」は大学進学や資格取得などにむけて、ステップアップをめざす彼らを応援します。

現在の寄付件数:3,970件 4,876万1,804円

(2018年9月10日現在)

「夢の奨学金1期生」清水唯歩さん、22歳。夢は警察官

写真:夢の奨学金1期生の清水唯歩さん

清水さんは大学3年生の時に「夢の奨学金」に応募され、大学4年生から「夢の奨学金」の給付を受けました。大学生活も残り1年を切りましたが、清水さんはやりつくした感は全くありません。むしろその逆です。これまで、生活費と学費を捻出するために必死で、学業の他はバイトに明け暮れていました。一般の学生であれば入学時から楽しんでいるようなことを、時間的、経済的、そして精神的にもすることができませんでした。「夢の奨学金の奨学生になって何が変わったかって、初めて友人と食事に行けるようになったことです。食事自体ではなく、そこで話ができるのが嬉しい。いろいろな人から、刺激を受けています」。かみしめるように清水さんは語ります。

「1、2年の頃は、1日中お金のことを考えていました」。こまめに照明の電気を切ったり、水の使用をできるだけ控えたりしていたといいます。バイトは3つ掛け持ちし、1日に2つ入れていました。授業が終わった夕方から午後9時過ぎまでが飲食店、そのあと午後10時から翌日の午前6時までがコンビニエンスストア。3時間ばかり寝て、再び学校に行く毎日。その頃のことはあまり思い出せないと言います。覚えているのは、ただただしんどくて、授業もほぼ寝て過ごしていたということだけ。しかし、そんな過酷なバイトをしながらも、お金は足りず、学費に充てるための大学から得た奨学金も生活費に回さざるを得ない状態に。学費の支払いに困り、中退を考えたこともあったそうです。

何とか3年生に進級した頃、物事が好転し始めました。「このままではいけない」と思い悩んだ末、将来の目標を警察官に定めました。目標が明確になり、それを心の軸としたら、新たに奨学金をもらえるようになりました。

夢の奨学金をもらうのは、大学4年になってから。給付を受けるのは1年間だけです。率直なところもっと早くもらえるようになっていたら、とも思うそうですが、お金のことで疲弊していた1、2年の頃だったら合格はしていなかっただろうとも考えています。夢を明確に持ち、人にも語れるようになったのは、あの時期を経たからこそではないか。そう清水さんは思っています。
「経験したこと全てが今の自分を作っている。」清水さんは現在警察官になるために、試験勉強を重ねています。

未来を諦めないその強い意思に応えるために

一歩ずつ前に進んでいく奨学生の声が届いています。

「児童養護施設に入った直後は子ども同士の暴力が絶えず、毎日が地獄。以前は大学のことまでは考えられませんでしたが、夢の奨学金で、憧れを現実にすることができたんです。『施設出身者だけど、ここまでできたよ!』っていつか胸を張っていえるよう、絵やダンスのレッスンに打ち込む毎日です」(19歳・女子大学生)

「日本では今、6人に1人の子どもが貧困と言われています。でも、僕がそうだったように、必死に隠している子も多い。それを発見し必要な支援につなげてあげられるのは、親以外で最も子どもの近くにいる学校の先生です。そういうことができる先生になりたいと思っています」(19歳・男子大学生)

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夢の奨学金は、「機会は誰しも平等に与えられるべきである」という理念に基づいて運営しています。皆様のご寄付が、やる気も能力もある、しかしチャンスだけがないという社会的養護出身の若者の可能性を広げます。
頂いた寄付金は、奨学金として入学金と授業料(全額)、生活費や住宅費に充当します。また、彼らに寄り添うソーシャルワーカーのサポートに活用いたします。
ご寄付からは、日本財団が間接経費をいただくことなく、100%全額、社会的養護の子どもたちの進学支援に活用します。

特別養子縁組で家族になる

養子縁組は、行政機関である児童相談所により仲介されるケースと、民間の養子縁組団体によって仲介されるケースがあります。いずれも家庭裁判所の審判により結審します。
詳しくは「日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト」外部サイトをご覧ください

ロゴ:子どもサポートプロジェクト

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「日本財団子どもサポートプロジェクト」として
一元的に取り組んでいます。

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