THE TOKYO TOILET利用者の声
THE TOKYO TOILETでは、2022年4月時点で17カ所中12カ所が完成しており、皆さまにご利用いただいています。誰もが快適に利用できる公共トイレを目指す本プロジェクト。実際にご利用いただいた方々のお声を紹介します。
恵比寿駅西口公衆トイレ by車いすユーザー・伊吹 祐輔さん
恵比寿駅西口公衆トイレは、JR恵比寿駅側から入ってすぐのところにユニバーサルトイレブースがある。すんなりドアを開け、便器に向かい、便座に腰かけられた。
「ドアが軽くて鍵がレバーだと楽ですね。便座脇の手すりも左右両方にあって、上肢の体幹が弱い私にとっては有難いです。ブースの広さもちょうど良い。個人的にはスペースが広すぎるとかえって申し訳なく思うこともあります」
このユニバーサルトイレには介助用ベッドも設置されている。
「設置されているところはまだ少ないように思います。排泄障害により、おむつ交換が必要な方はこのベッドを使用します。介助者の方にとってもベッドがあるとサポートが容易になりますね」
ユニバーサルトイレ以外のブースにも入ってみた伊吹さん。プロジェクト担当者も車いすユーザーが他のブースに入れるとは想像しておらず新しい発見となった。
「日常生活でも、ユニバーサルトイレがなかったり、それが使用されていたりするときは、一般のトイレを利用する場合があります。ただ、利用の際に悩ましいのは、やはり狭いということです。ブースの狭さに限らず、ブースまでの通路も狭くて、車いすでターンができないところが多いんです」
本プロジェクトのトイレは、大半のブースは広く、また、防犯や換気のために行き止まりがないような通路になっているところが多い。
「ユニバーサルトイレの設置が増えることは車いすユーザーにとって嬉しいことです。一方で、そのトイレしか利用の選択肢がない環境がつくられるのは少し寂しい感じもします。選択肢が増える社会であって欲しいなと思っています」
最後に、本プロジェクトについて期待していることを尋ねた。
「当事者の視点にたった機能で、それが洗練されたデザインの設備に出会えたとき、自分も街や社会に溶け込んでいる感覚を味わえます。昨今、ユニバーサルトイレには車いすユーザーだけでなく、ジェンダーや内部障害の方や、乳幼児連れの親御さんなどたくさんの方に利用されています。『なぜ誰でもトイレが存在するのか』への理解が浸透し、他者への意識が高まると様々な気づきにつながります。トイレは社会を映す鏡と聞いたことがあります。このプロジェクトのトイレをきっかけに、ハートが醸成されることを願っています」
ハードからハートを変えていく。本プロジェクトの目的を端的に表現してくださった。
鍋島松濤公園トイレ by親子ユーザー・久田さん親子
鍋島松濤公園は複数の遊具が設置され、また、池と水車小屋、遊歩道もある、遊びにも散歩にもうってつけの公園だ。生い茂る緑の中で大きな遊具のように複数のトイレブースが馴染んでいる。ブース間の「森のコミチ」を通り抜け、杉板ルーバーの間から顔を覗かせる3歳の息子さん。ちょっとしたかくれんぼもできる。
ユニバーサルトイレは大きさの異なる木の丸い断面が鏡周りの壁に多数飾られており、息子さんも自分の手の大きさやお母さんの手の大きさと思わず比べる。さらに、犬用のリードをかける犬の形をしたフックもあり、「トイレの中に犬がいる!」と親子2人で驚いていた。外観だけでなく、内観も親子の心をくすぐるトイレだ。
このトイレは、機能の面でも親子フレンドリーだ。大便器だけでなく、オストメイト用設備、おむつ交換台、ベビーチェア、フィッティングボード、洗面台がユニバーサルトイレに1つに集まっている。
「普段公共トイレを使うとき、おむつ交換台の対象年齢と使用可能体重は気にしますね。息子はおむつを履いていますが、基本的に年齢的にも体格的にももうおむつ交換台は使えません。でもフィッティングボードとそのそばに手すりがあると立ったままおむつの交換ができるので有難いです」とお母さん。
ユニバーサルトイレ以外にも、小児用小便器と小児用大便器が集まったブースもある。「トイトレ(トイレトレーニング)」中の子どもや1人で用を足せるようになった子どもなど、幅広い年齢の子どもが自分に合わせたトイレを利用することができる。
トイレはその公園を使う理由の1つでもあるようだ。別途行ったユーザー調査では、「きれいなトイレがあると、小さな子ども連れでも安心して遊べる」、「小さい子どもがいるとトイレが使いやすいというだけでこの公園に来たくなる」という声も聞かれた。「トイレがきれいだと人が集まり、公園に活気が出る」、「前は使いたくなかったが、今は他の公園トイレよりも優先して使っている」という声もあり、年齢を問わず誰もがトイレを、公園を使うというインクルーシブな空間が実現している。