無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」(2/2)無人運航船プロジェクト コンソーシアムDFFASの方々へインタビュー
5つのコンソーシアムのうちの一つ、最大規模のDFFAS(Designing the Future of Full Autonomous Ship)コンソーシアムは、国内30社で構成され、各社が連携して無人運航船の実用化を目指して活動している。今回、参画メンバーに思いを語ってもらった。
株式会社日本海洋科学
プログラムディレクター 桑原悟氏

MEGURI2040プログラムへの参画理由について教えてください。
日本海洋科学含めた日本郵船グループは、船舶の安全効率運航達成と、船員の労働負荷低減という現場の課題を、先進技術を使っての解決に取り組んでおり、その一つとして有人での自律運航船開発を行っていました。そんな中、日本財団の無人運航船プロジェクトの存在を知り、上記課題の解決に資する取り組みができるのではないか、と参画しました。
30社を超える巨大コンソーシアムの運営にあたり、考慮した点や苦労した点について教えてください。
無人運航船の実用化には、技術開発以外に保険や船舶の安全性検査(船級)など、広く環境の整備が必要となります。DFFASコンソーシアムでは、組成当初から社会実装を目指し体制を構築しています。コンソーシアムの運営にあたっては、海事業界の競合他社同士が参画していることもあり、情報開示の範囲など常に気を配っています。また、海事業界以外の方々も多く参画するので、これまでの常識が通じず、苦労する場面も多くありました。

MEGURI2040へ期待することを教えてください。
無人運航船の実用化に向けて、コンソーシアム以外の協力団体など含めるとおよそ60社という大きなチームで進めていることは大きな価値です。無人運航船という世界初の取り組みに対して、日本発信で世界を先導していくようなコアジャパンの取り組みを推進していきたいと考えています。
また、MEGURI2040のような夢のあるプロジェクトに参画し、島国日本として、より海に興味を持ってもらえるような機会を作っていきたいと考えています。

株式会社pluszero
AI画像解析による障害物の検出を担当
永田基樹氏

AIスタートアップという異分野から参画した経緯、理由について教えてください。
当社pluszeroは、数学・統計・AI技術を活用して、様々な企業の課題解決を行っています。今回、船舶のレーダーの「偽像」という、実際は存在しないのに映ってしまう像をAIで検出するプロジェクトについて、コンソーシアムメンバーである古野電気さんにお声がけいただいたのがきっかけです。

プロジェクトによっては、最初から必要なデータが揃っており、後はAIが学習するだけという例もありますが、MEGURI2040では、データそのものの構築から始めました。データを作る上での重要なポイントは、AIにデータをどう学習してもらうかを考慮した上で、適切なデータを作成する点にあります。偽像の検出を通じた海難事故減少というテーマも取り組み甲斐があり、かつ、実現したときの社会的インパクトが非常に大きいこともあり参画しました。
異分野業界から参画されて、今回のDFFASコンソーシアムと日本の海事産業はどのように映っているのでしょうか?
DFFASコンソーシアムでは、多数の企業が協業して初めて実現できる取り組みが、的確な連携によって進められていると感じます。ヒューマンエラーによる海難事故を減少させる仕組みづくりは非常に大きなインパクトがあると考えます。コンソーシアム参画をきっかけに、海事業界の様々な企業・団体とのやり取りや、開発の支援を通じて、AIという新しい技術を積極的に理解・活用していこうという雰囲気を持った業界だと感じております。
MEGURI2040に期待することを教えてください。
今後も、船舶の安全性向上や、船員の労働負荷低減などの目標に向かって取り組んだからこそ分かる様々な課題があるかと思います。今回のコンソーシアムのように、多様なスキル・ノウハウ・資産を持つ団体同士で協力しながら、解決に向かうことを期待していますし、弊社としてもお力になりたいと考えています。

株式会社ウェザーニューズ
子どもたちに無人運航技術を伝える
古山愛理氏

気象会社であるウェザーニューズがMEGURI2040に参画した経緯について教えてください。
MEGURI2040による無人運航船の実用化を通して、日本の海事クラスターに新たなビジネスや産業を創り出すことに思いがあります。当社は気象会社として、長年船舶に対して気象・海象予測に基づき、乗組員・貨物・船体に関わる安全運航を支援するウェザールーティングサービスを提供してきました。その経験から得られた膨大な航海データ、ノウハウ、気象・海象予測技術などを、AIテクノロジーを駆使し無人運航技術に昇華させ、海事産業への発展に貢献したいと思っています。
気象業界から見た、DFFASコンソーシアムと海事産業について教えてくだい。
当社の日常業務自体が、コンソーシアムのメンバーを含む海事産業のステークホルダーと深く関わっています。そうした仲間同士と共に無人運航船を実現することで、未来の海事産業を一緒に創り上げていけることが何より嬉しいです。海事産業には、それぞれの得意分野を磨き、生き残りをかけた「競争」のイメージもあったと思いますが、これからは共に理想の未来を創るための「共創」に変える、当社がその一助となれればと思っています。
MEGURI2040に期待することを教えてください。
当社も参画メンバーです。“自分事”としてMEGURI2040に期待することは「流通、人、コスト、交通などの循環が良くなり、便利になる、すなわち、日本の循環が良くなること」を理念として持ちながら、オープンイノベーションで最先端の知識、技術を追求・結集し、日本における物流革命を達成することです。
千葉市立海浜打瀬小学校の子どもたちを対象にした特別授業「アシタノフネ無人運航船」について教えてください。
小学生向けに開催された無人運航船について学ぶ特別授業に参画しました。あの日、子どもたちの目にはキラキラと光るものがありました。後日、そのキラキラが何だったのかを子どもたちの手紙で教えられました。そこには自分たちが大人になったとき世の中がどうなっていてほしいか、自分は何がしたいか、が書いてありました。人の力では防ぎようのない極端な気象による災害や感染症などが起きてしまうのは仕方ないかもしれませんが、今を生きる子どもたちの将来まで「こういう時代だから仕方ない」と諦めてほしくはありません。あの日、特別授業に来てくれた子どもたちが大人になった時「良い世の中に生まれたね」と心から言えるよう、こういう時代だからこそ、力を合わせて良い未来創りをしていきたいと思います。

