2023年度『夢の奨学金』活動報告会卒業する奨学生は、さらなる夢に向かって出発!

「夢の奨学金」を活用して学業を終え、新たな一歩を踏み出す奨学生たちが、これまでの学生生活について発表する活動報告会が、2024年3月9日(土)日本財団(東京・赤坂)にて開催されました。今年度は新型コロナ感染予防対策も落ち着き、東京の会場に集合。本年度で卒業する奨学生、次年度からの新奨学生、在学中の奨学生、すでに社会で活躍する奨学生OB、夢の奨学金寄付者様、ソーシャルワーカー、日本財団職員等、多くの参加者が祝福し見守るなか、これまでの学業や活動、これからの進路などを発表してくれました。

新しい門出を迎える8名の奨学生

「夢の奨学金」活動報告会は、毎年年度末に開催され、卒業する奨学生が学業や活動について報告する会で、もっとも多くの関係者が集まる行事です。今年度は卒業を迎える8名より発表がありました。

写真:日本財団で開催された活動報告会の様子

開会後、日本財団公益事業部部長の高橋より、挨拶がありました。
「本日は、会場とオンラインでも非常に多くの方にご参加いただき、改めてお礼を申し上げます。ちょうど昨日、新しく奨学生となった第9期生20名の認定式が終わりました。これから大学や専門学校での学びはもちろん、この時期にしかできない経験を楽しんでください。

今日卒業される8名の皆さん、新型コロナ感染症予防対策と重なり、登校もアルバイトもできない大変な期間が長かったと思います。困難な状況のなかでも皆さん卒業を迎えられたことに、お祝いを申し上げたいです。皆さんはすでにたくさんのことを成し遂げてこられました。これから自信を持って進んでいってください。

本日は寄付者と支援者の方々が会場とオンラインでお越しくださり、卒業生の発表を楽しみになさっています。夢の奨学金は皆さまの寄付金で運営されています。寄付をくださるだけでなく、こうして学生たちを見守り、応援してくださることで奨学金は成り立っています。この場をお借りして改めてお礼申し上げます。それではこれから活動報告を拝聴し、楽しく交流してください」

続いて、新年度から『夢の奨学金』奨学生の仲間に加わる第9期生20名の紹介がありました。皆さん壇上で名前と進学先を紹介し、大学での目標や将来の夢を伝えてくれました。また、すでに社会人として活躍している第2期生、3期生、5期生、6期生のOBの皆さんも「発表を楽しみにしています」と卒業生を激励しました。

さらに、今回は選考委員もオンラインで視聴いただき、会場には選考委員の一人であるボートレーサーの木村選手も駆けつけてくださいました。木村選手からも卒業生へのお祝いと、改めて寄付者の方にお礼の言葉が伝えられました。

写真:寄付者や支援者の方々も会場とオンラインで参加

地方自治体や放送局関連団体など希望の就職先へ

いよいよ卒業する奨学生の活動報告がスタート。新たな門出を迎える奨学生が、これまでの学生生活を振り返り、どのようなことを学んだか、自分はどう考えたか、これからの進路や後輩へのメッセージ等の発表がありました。

トップバッターは愛知県の公立大学の国文科で文学や日本語学を学んだ4期生です。一年生の頃は勉強にも自炊生活にも前向きでしたが、頑張りすぎて疲れが出たのか、しばらく外出できない欝々とした状態が続いてしまったといいます。アルバイトを始めたり、友人とルームシェアをしたり、気力を取り戻そうと行動しましたが、体調不良のため1年間の休学を余儀なくされました。それでも、病院通いをしながらも紆余曲折を経て復学を果たし、『愛知県の方言』をテーマに卒論を書き上げ、無事に卒業することができました。
「一度は諦めかけた大学進学を果たし、途中は退学を考えたこともありましたが、ソーシャルワーカーさんにも支えていただき卒業することができました。心から感謝しています」と込み上げる思いを伝えてくれました。

児童相談所の児童福祉士を目指して公立大学に進んだ5期生。社会福祉士と精神保健福祉士の資格も取り、地方公務員として採用になりました。在学中は地域ボランティア、サークル、アルバイト、実習、留学と活動的で充実した毎日を過ごし、これらの経験から「生きる上で大切なこと、それは人と人のつながりだと思います。無限の可能性や楽しさに気がつくことができました。今後は児童相談所への配属を希望し、一人でも多くの子どもたちに生きていてよかったと思ってもらえるよう貢献したいです」と語りました。

写真:奨学生の発表の様子

在学中は毎年成績優秀者として表彰を受けた5期生は、見事首席で卒業。就職も希望の放送局関連団体に決まりました。奨学生に採択されたときは「たくさんの応募があるなかで、自分なんかでいいのかな」と思ったそうです。だからこそ、支援してくれた方に恩返しをしたいと、一位の成績を目指して努力を続けました。学業やさまざまな活動を通して、「傾聴力」が大事だという気づきを得たとのこと。また、社会は自分が思うよりもつながりあっていて、一人で抱え込む必要はないと感じたそうです。「失敗はするのは当たり前、挑戦する姿勢を忘れず仕事もプライベートも精進していきたいです」と胸を張りました。

北海道の大学で酪農を学んだ5期生。大阪で農業高校卒業後、一度は就職しました。しかし、「教えることが好き、教師になりたい」という思いが湧き上がり、奨学金に応募。広大な新天地で新しい学びをスタートしました。家畜管理行動学研究室に所属し、学校内の家畜の世話やコンビニのアルバイトをしながら、カナダ留学も果たしました。スノーボードを楽しんだのも北海道ならでは。「学生生活を通してたくさんの人に支えられていることを実感しました」と語り、春からは地元に戻って念願の講師として学校に勤務します。「教育をよりよく変えていくことを目指します」と力強く宣言しました。

学びを社会に還元することで感謝を表現

国立大学の看護学部で学んだ6期生は、授業料の面で不安を感じながらも自費で進学しました。しかし、初年度はコロナ禍で入学式もなくフルリモート。アルバイトも制限を余儀なくされ金銭的な不安も増すなか「進学は誤りだったのか」と落ち込むこともありました。しかし、奮起して奨学金に応募して採択となり、「暗い中に光が差し、プレッシャーから解き放たれました」と振り返ります。学業に専念することができ、奨学生仲間との交流でよい刺激を受けました。3年生では密度の濃い実習をこなし、4年生の長期休みは留学も経験。春からは看護師としてスタートします。

大学院で物理学の研究を続けた7期生は、大学時代の4年間を含めて6年間、学びを続けました。発表では、自身の研究テーマの一つである「ブラックホールの蒸発」について、物理が苦手な人にもわかりやすく解説してくれました。「ブラックホールはとても重くてとても小さな天体のことです」から始まり、量子力学の話など、難しいけれど興味深い研究内容を教えてくれました。卒業後の進路としては、熟考の末、就職を選んだとのこと。新たな道で最大限の取り組みをしつつ、人生の目標として研究者を見据えています。

国立大学大学院の数学科を卒業する7期生。研究室で過ごした2年間、純粋数学の分野の自身の研究について報告してくれました。代数学、幾何学、抽象代数学など、大まかな数学という学問について、そして研究分野についても解説。研究成果としては指導教員との共著で論文を書き上げました。また、京都で学会発表も行い、専門性の高い分野の知見を得たことも有意義でした。「世界初のことを見つけるというのが私の夢であり大きな目標でした。夢の奨学金で支援していただけたことで夢が叶いました。ありがとうございました」と感謝を伝えてくれました。

最後は、国立大学大学院を卒業する理工学部機械システム工学を修めた8期生の発表となりました。大学院最後の1年間を夢の奨学金を受けて学びました。幼いころからものづくりが好きで、ロケットのような人類の可能性を広げるような技術者を志したそうです。「空気の通り道の形状」という研究では学会で優秀発表賞を受けました。学生時代を振り返っての思い出は、約1,000kmを3日間かけてヒッチハイクした経験。人の温かさを知ることができたそうです。「メーカーに就職をしまして、研究開発の業務に取り組みます。技術者として社会に新しい価値を提供していくことを通して、皆さまからいただいたご恩を広く還元してまいります」と宣言してくれました。

それぞれの発表の後には、担当のソーシャルワーカーから卒業のはなむけの言葉が伝えられました。奨学生が人知れず苦労していたこと、努力していたことを明かして労うと同時に、奨学生と支援者という立場を超えて、人と人としての楽しかった思い出などを懐かしく振り返りました。

記念品を贈呈

8名の活動報告が終わり、卒業生に記念品を贈呈しました。記念品はポータブル充電器。壇上で一人ひとりに手渡されました。

写真:奨学生一人ひとりに記念品を贈呈

最後に日本財団常務理事の吉倉より挨拶がありました。
「本日の8名の卒業生のご報告をお聞ききしまして、皆さん本当にさまざまな経験をして、苦労も多かったと思います。よくがんばってこられました。

お若い皆さんの話をお聞きしていると、私くらいの年齢の者は自分の若い頃が思い起こされてきます。自分を投影して、お話をお聞きしていました。そして、何かあれば支えたい、応援したいという気持ちが湧いてくるのです。皆さんはそういわれても「ほんとかな?」と思うかもしれません。相談しにくいと思うかもしれません。でも人は、人を助けることで幸せを実感したり、人生を充実できたりするということが、さまざまな研究でも示されています。例えば、高齢者施設に赤ちゃんを連れていくと、普段はあまり活動されない人でも、赤ちゃんのお世話に関わることでイキイキしてくるそうです。

写真:日本財団常務理事からの挨拶

卒業してからも何かあったら遠慮なく相談してください。それが周りを幸せにすることにもなります。お互いに支え合いながら成長していきましょう。

最後になりますが、アフターケア事業部の方を含めて、ケアワークしてくださる皆さま、そして寄付者の皆さまに感謝申し上げ、そして皆さんの今後の活躍を祈念いたしまして、ご挨拶とさせていただきます」

活動報告会は無事に終了し、最後に集合写真を撮影して、閉会となりました。
卒業生の皆さん、誠におめでとうございました。今後、皆さまが益々ご活躍されますことを、心から祈念しております。

写真:日本財団ビル前にて奨学生たち