高校生がプロサッカーチームに提言!スポーツの試合で使い捨てプラスチックごみを減らすには?
スポーツ界を横断して「使い捨てプラスチックごみゼロ」に挑戦する日本財団のプロジェクト「HEROs PLEDGE(ヒーローズプレッジ)」に参加するプロサッカーチーム・川崎フロンターレでは、試合やイベント会場における使い捨てプラスチックごみの削減、分別・資源化に取り組んでいます。2024年6月にはホームタウンである川崎市の市立橘(たちばな)高校の生徒が試合会場でごみ分別推進のボランティアに参加し、試合後に、使い捨てプラスチックごみの削減・分別促進に向けたアイデアをフロンターレに提言しました。高校生たちは試合会場でどのような光景を目にし、どのようなアイデアを提言したのでしょうか?高校生たちのプレゼンテーションの様子をリポートします。
SDGs実現に若者の声を届けよう~事業者の課題に高校生が提言
神奈川県川崎市の市立橘高校では、2・3年生の生徒たちがSDGs実現に向けて興味・関心のあるテーマを選び、総合研究を行っています。その一環として、2024年度は川崎市主催の「かわさきプラスチック循環プロジェクト」に参画する事業者(川崎フロンターレ、アサヒ飲料、セブン-イレブン・ジャパンなど全7事業者)が抱える課題について生徒らが現状を調査・分析し、解決策を提言にまとめる学習に取り組みました。
スタジアムで高校生がプラごみの分別を呼びかけ
このうち、川崎フロンターレを学習対象に選んだのは2年2組・3年2組の生徒たち78名です。生徒たちは、気候変動の影響で世界的にスポーツの試合の中止や延期が相次いでいることを背景に、川崎フロンターレが気候変動対策の一環として試合・イベント会場でのプラスチックの使い捨て削減に取り組んでいることに着目、ごみの分別を促進する方法・使い捨てプラごみを減らす方法について総合研究を行いました。
生徒たちは授業で、スタジアムで出るプラごみの問題についての事前学習を行った上で、2024年6月2日(日)には実際に川崎フロンターレのホームスタジアム・Uvanceとどろきスタジアムby Fujitsu(通称:とどろきスタジアム)で行われた名古屋グランパス戦の会場に出向き、「ごみステーション設置による啓発活動」に参加。会場でのごみ分別の現状を視察するとともに、会場を訪れた観客らにごみ分別を呼びかけました。
2024年6月2日(日)とどろきスタジアムでの「ごみステーション設置による啓発活動」の概要
- 6つに分類(①燃えるごみ、②プラスチック、③ビン・カン、④ペットボトル、⑤食べ残し・飲み残し、⑥ペットボトルキャップ、)したごみ箱を1セットとして、ごみステーションを4か所(場内外)に設置し、来場者がごみを捨てる際に分別に協力してもらい、理解を深めてもらう取り組み。
- わかりやすいPOPを使ってごみ箱をデザインし、分別方法を明示。
- 橘高校の生徒が各ステーションに立ち、サポーターに分別の協力を呼びかけ。
- 最後は、生徒が捨てられたごみの量を調査。プラスチックごみは、容器やプラカップ、カトラリーなどに細かく分類し、どういった種類のプラスチックが捨てられているかまで調査しました。
斬新なアイデアが続出!川崎フロンターレの担当者に高校生が直接プレゼン
会場での学びを持ち帰った生徒らは、2・3年生混合のチームに分かれてごみ分別促進・プラごみ削減のアイデアを提言にまとめる学習を継続。6月24日の授業に川崎フロンターレの担当者を招いて、プレゼンテーションを行いました。
当日のプレゼンテーションで発表された提言の主な内容は以下の通りです。
【生徒らの主な提言内容】
- 選手から直接サポーターに呼び掛けてもらう
- スタジアム内の店舗で物を買ってくれた人には、スタジアム特製のごみ袋を配る
- ごみの分別がうまくできたら景品がもらえるなど、遊び感覚で楽しみながら分別できる仕組みを作る
- 食べ物の容器の種類が多すぎるので1種類に統一すると、分別が簡単になる
- 紙容器は再利用できないが、プラ容器はリサイクルできるので、全ての容器をプラスチックに統一する
- 「捨てる」ではなく「リサイクル」をゴールに。ごみステーションの横に水道を設置してプラ容器を洗ってもらい、リサイクルしやすい状態のプラ容器を効率良く回収できるようにする
- 分別ステーションを人通りの多い場所に設置。人に見られているという意識が分別の後押しになる
- 小学生にごみ箱を作ってもらう。子どもたちに恥じない行動をしようという気持ちを醸成する
- 試合ごとに高校生など地元の若者ボランティアを使って、分別を呼び掛けてもらう。ボランティアをする側の若者たちにも環境問題への意識が高まる効果が期待できる
- 試合やイベントごとにごみの量を測り、少なさを競う。ごみの量が少ない試合の観客には選手から感謝の言葉が述べられるなどして機運を盛り上げる
柔軟な発想に感動!フロンターレ担当者が興味をもったアイデアは・・・・・・?
生徒たちからの提言を受けた株式会社川崎フロンターレ サッカー事業部経営企画室の黒木 透さんは「高校生ならではの柔軟な発想が多く、期待以上の内容に驚いています」と生徒らの提言を高く評価。実現してみたいアイデアについて聞くと、「専用のごみ袋を配するアイデアは、個人的にすごく興味がありますね。もし、1枚の袋でプラごみとそれ以外のごみを分けられるようにすれば、優秀な分別促進アイテムになるかもしれません。まずは、すべてのアイデアを社に持ち帰ってしっかり検討したいと思います」とのこと。「今回、高校生と一緒にプラごみ問題を通じて将来のスポーツ業界のことを考える機会が得られたのは、川崎フロンターレとしても非常に大きな収穫でした。これからもホームタウンの若者たちと意見交換して、良いアイデアはどんどん実現することで、より良いスポーツの未来を一緒に創っていきたいですね」。
大企業に自分のアイデアが届いた!~大人との協業が高校生の自信に繋がる
プレゼンテーションを終えた生徒たちからは、今回の総合研究について次のような感想が聞かれました。
- 川崎フロンターレのようなすごいチームの人が、自分たち高校生のアイデアに真剣に耳を傾けてくれたのが本当に嬉しかった
- 橘高校では普段からごみの分別を当たり前に行っているので、スタジアムで分別をしない人がいるのを見て驚いた
- 次回、サッカーの試合を観に行ったときは、自分が率先してごみの分別をしたい
- 高校生が声をかけると意外と効果があるのかなと思った。今後も地元の高校生がフロンターレと協力して何かができるといいなと思った
- 実現不可能かもしれないけど、たくさんアイデアを出すのが楽しかった。一つでも実現してもらえたら嬉しい
生徒たちを指導した橘高校3年2組担任の長谷川剛士教諭は、今回の取り組みについて次のように評価しました。「一連の総合研究を通じて、生徒たちは自分の目で現状を見て自分の頭で考え、自分の言葉で意見を伝えるという、貴重な経験を積むことができました。何より、憧れのプロサッカーチームの皆さんが同じ目線でしっかり話を聞いてくれたことが、『自分にも環境問題解決のためにできることがある』という自信につながったと思います。卒業後も、今回の学びを活かして、生活の中で感じる疑問や課題をそのままにせず、探求する気持ちを持ち続けてほしいですね」。
日本財団で「HEROs PLEDGE」を担当する経営企画広報部HEROsチームリーダーの藤田 滋は「地球規模で環境問題が急激に深刻化しており、ここ数年が改善のラストチャンスになると言われています。実際に、猛暑や雪不足の影響で試合や練習が困難になるケースが生じるなど、スポーツ界への影響も大きくなりつつあります。将来の子どもたちにスポーツを楽しめる環境を残すためにも、引き続き、アスリートの皆さんの発信力を生かして、スポーツ業界から使い捨てプラごみゼロを訴え、実践していきたい」と話しています。