カンボジアから被災地へ届けられる支援の恩返し

写真:「pray for Japan from cambodia」というメッセージカードを持ったカンボジアの生徒たち

平成30年7月豪雨への支援はカンボジアからも行われており、教師や学校生徒を中心に1,317名から寄付金が日本財団に集まりました。その背景には、日本から受けてきた支援の恩返しをしたいという想いがありました。

カンボジアから支援金が日本財団に渡されました

平成30年7月豪雨を受けて、被害を受けた被災地への継続的な支援が行われています。被災地の支援に貢献したいという想いは、日本のみならず世界各国に広がっており、日本から遠く離れたカンボジアからも、被災地への支援が行われています。

日本財団では、カンボジアで教員養成学校生に向けた教育支援プロジェクトを行ってきました。その縁から日本に親近感を持ってくれている教職員関係者が多く、平成30年7月豪雨からの復旧・復興に少しでも貢献したいと、寄付金が日本財団に寄せられました。

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寄付金を日本財団の現地パートナーであるESC KIZUNAの職員(写真左)に受け渡すカンボジアの教職員関係者(写真右)

「テレビのニュースとFacebookを通じて日本の洪水災害について知り、ショックを受けました。教員養成学校時代の同窓生で作ったFacebookページで災害へ募金を集めるという呼びかけを見て、寄付金を集めようと思いました」
教職員のボン・ソクチャンさんが、寄付金を集めたきっかけについて教えてくれました。

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寄付金を集め始めた当時の様子について振り返るボン・ソクチャンさん

「教員養成学校時代の同窓生、自分の親戚、いま在籍している学校の友達、学校の生徒とその保護者たち。様々な人に支援を募りましたが、みんな喜んで参加してくれました。同窓生の多くは首都から離れた地方で教師をしているのですが、卒業後お互いに会うこともほとんどありませんでした。そのため、募金の呼びかけが、ここまで広がるとは思いませんでした」
寄付金を集め始めた当時の様子について、さらに詳細に説明してくれました。

教員養成学校の元奨学生が参加するFacebookページ内で平成30年7月豪雨による被害の様子がシェアされ、被災地を支援するための募金の呼びかけが広がっていきました。その結果、カンボジアの教師や学校生徒を中心に1,317人から寄付金が集まり、日本財団へと渡されました。この寄付金は、被災地の一刻も早い復旧・復興を行うために活用させていただきます。

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教員養成学校の元奨学生の間では卒業後も定期的な交流会があり強い結束がある

これまで受けた支援の恩返しをするために

「日本財団の奨学金を受けたことで、私自身も中学校の英語教員になることができました。Facebookで寄付金の呼びかけを見た時には、これは日本に恩返しをする機会だと思いました」
元奨学生のひとりが寄付を行った理由について教えてくれました。

日本財団はカンボジアの教員養成学校生に、生活を補助するための奨学金を支給しています。特に農村地域出身者には貧しい学生が多く、学校に通うかたわらアルバイトをする必要があり、それが教職課程に集中するにあたっての妨げになっています。日本財団はこの問題を解決するために、2004年より累計2,300人以上の教員養成学校の学生に対し、奨学金を支給しております。

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カンボジアの文化・歴史を知るために研修を行っている奨学生の様子

日本財団のカンボジアでの教育支援プロジェクトには、奨学金の支給以外にも様々な活動を行っております。その中の一つが英語教材の作成です。もともとカンボジアの中学校での英語教育は、中学生が学ぶにはあまりにも難しすぎる教材が使用されており、先生は十分に英語を教える知識・技術がない状態でした。そのため、日本財団は現地の教職員等のアドバイスを受けて、中学生が英語を楽しみながら学習するのに最適な教材を作成しました。

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日本財団が作成した英語教材“English is Fun”で授業を受けるカンボジアの中学生たち

この英語教材は大きな反響を呼び、今では全国のカンボジアの中学校で使用されるようになりました。また、政府の要請のもと、新国定中学英語教科書の作成も支援しました、その功績が称えられて、ロイヤル・モニサラポン勲章をカンボジア王国政府からいただきました。

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カンボジアの教育大臣(写真右)から勲章を受ける日本財団会長の笹川陽平(写真左)

このように、日本財団は以前よりカンボジアの教職員関係者と深い結びつきがあります。今回カンボジアの教職員関係者から、平成30年7月豪雨の被災地への寄付金が日本財団を通して集まった背景には、これまでカンボジアで行ってきたこれら教育支援プロジェクトへ恩返しをしたいという想いがあるようです。

「もともとカンボジアは海外から支援を受ける機会は多いものの、支援をする側になることは少ないので、参加者の多くは、他の国のために何かを支援できたということを、大変嬉しく誇りに思っています。被災地が1日も早く復興し、平常の生活ができますよう心からお祈りします」
寄付を集めた感想について、元奨学生が答えてくれました。 国境を越えて、カンボジアから日本へ支援の恩返しが行われました。