「HEROs AWARD 2018」 の舞台裏

今月は、昨年12月に開催したスポーツを活用した社会貢献活動の表彰「HEROs AWARD 2018」の審査委員会の裏側をお届けいたします。

こちらの最終審査委員会は大賞にあたるHEROs of the yearを決定するため、AWARD直前に開催されたものです。

スポーツの注目力やアスリートの発信力を社会のために使うことで、多くの人が社会の課題を知り、一人ひとりの行動へとつなげ、課題解決の大きな力としていくことを日本財団HEROsは目指しています。

事前の審査委員会で選ばれた6つの活動内容はそれぞれ異なりますが、 全てが非常に良い活動をしているため、審査の基準が設けられていても最優秀賞を決めるのは容易なことではありません。

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2018年受賞者。左から・敬称略、飯沼誠司、赤星憲広、有森裕子、北野華子(Being ALIVE Japan)、浦和レッドダイヤモンズ代表者3名。(欠席:長谷部誠)

いかにスポーツの力を社会課題の解決に役立てているか、スポーツやアスリートが関わることで社会貢献活動の効果が拡大しているか、が審査のポイントです。 審査委員の皆さまによる白熱した議論が交わされる様子をぜひご覧いただければと存じます。

ここからは、2019年2月9日にGOETHE公式WEBの情熱パーソンのコーナーに掲載された「【HEROs】AWARD審査委員会「社会とつながるスポーツマンシップの本質とは?」の記事転載となります。 オリジナルサイトをご覧になりたい方は、GOETHE公式WEBをご覧ください。

AWARD審査委員会「社会とつながるスポーツマンシップの本質とは?」

アスリートによる社会貢献活動の輪を広げていくことなどを目的に2017年に創設した「HEROs SPORTSMANSHIP for THE FUTURE」(以下「HEROs」)。年末には「社会とつながるスポーツマンシップ」を発揮したアスリート、チーム、団体を表彰する「HEROs AWARD」を開催しており、昨年12月17日には最高賞の「HEROs of the year賞」を選考。その審査過程で見えてきたのは、スポーツによる社会貢献の「本質」だった。

HEROsは、何を見据えているのか?

昨年12月17日に行われた「HEROs AWARD 2018」。その開始1時間半前に、審査委員会は開催された。目的は、事前審査により6つの活動が選ばれた「HEROs AWARD」の中から、もっとも社会とつながるスポーツマンシップを発揮したアスリート、チーム、団体を表彰する「HEROs of the year賞」を選ぶこと。①社会課題の改善にスポーツの力が効果的に活かされているか? ②スポーツの力がもつ可能性を感じさせるか? ③ビジョンの実現や活動の推進に対する意志の強さを感じさせるか? という3点の選考基準をもとに白熱の最終審査が行われた。

審査委員は、宇賀康之さん(Number編集長)、笹川順平さん(日本財団常務理事)、中井美穂さん(アナウンサー)、中江有里さん(女優・作家)、藤沢久美さん(シンクタンク・ソフィアバンク代表)、松田裕雄さん(株式会社Waisportsジャパン代表取締役)、間野義之さん(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)の7人(五十音順)。

「HEROs AWARD」には、以下の6つの活動が事前に選出されていた。

  • 「Ring of Red~赤星憲広の輪を広げる基金~」赤星憲広さん(プロ野球)
  • 「HEARTS of GOLD」有森裕子さん(マラソン)
  • 「ATHLETE SAVE JAPAN いのちの教室」飯沼誠司さん(ライフセービング)
  • 「ユニセフを通じて世界の子どもたちを支援」長谷部誠選手(サッカー)
  • 「浦和レッズハートクラブ×バーンロムサイ」浦和レッズ(サッカー)
  • 「長期療養中のこどもにTEAMMATESとの『青春』を」Being ALIVE Japan(NPO法人)

審査会の冒頭で、日本財団常務理事の笹川さんが「社会にいい影響を及ぼすことができるように、中正な目で選考をお願いします」と挨拶。まず、名前が登場したのが、赤星さん、有森さんの活動だった。

中井さんは、「赤星さんは、現役時に盗塁を成功する度に、ひとつの車イスを提供する活動をしていたことに加えて、現役を終えてもなお様々な活動を続けているということがすごい。それは、他のアスリートにとってのモデルになる」と発言。その後、宇賀さんは「有森さんは、長い間活動を続けていて、発信力も抜けていて、国際貢献もしている」と、マラソンを通じて20年以上もアジアの貧困問題などに取り組んでいる継続性を評価した。

その中で、中江さんは「有森さんの活動が心に残っている」と前置きした上で、「Being ALIVE Japanは、支援する相手に何をしたいかを聞き取った上で活動している。施すのではなく、自立を促している」と、長期療養中の子どもたちにスポーツで青春を与える活動を行うNPO法人の名前を挙げた。

すると、笹川さんが「Being ALIVE Japanは一番マイナーかもしれないですけど、さまざまなスポーツに活動が広がって行く可能性がある。長期療養中の子どもたち25万人というターゲットがあり、そこに参加するスポーツ団体もプロだけではなく、アマチュアにも広がっている」と賛同した。藤沢さんも「活動を知り、自分もやってみようと思えるかどうかが大事。自らやっていくというふうに考えたら、Being ALIVE Japanや、赤星さんのように、自分で組織を立ち上げた人がいいのかな」と意見を述べた。

そんな議論の中で確認されたのは、審査基準①の「社会課題の改善にスポーツの力が効果的に活かされているか?」という側面だった。HEROs AWARDの取り組み自体が2年目と日がまだ浅いため、メディアへの訴求力が高い人物に「HEROs of the year賞」を与えてもいいのではないか、という一部意見があった。しかし、それに対して、笹川さんが「本質的なところで攻め続けた方がいい。HEROsは本当に大事なものを見続けているということを5年、10年かけてやっていく方がいいと思います」と力説。あくまでも、知名度ではなく、内容を重視することを再確認した。

そして、審査時間が残り10分を切ったところで、松田さんが初めて口を開いた。松田さんは、筑波大学でスポーツを通じて人材、市場、地域等を活性化して行く活動や研究を行っている。

「Being ALIVE Japanの活動は、長期療養中の子どもたちに、「身体性(somatic experience)」、つまり身体の可能性を感じてもらうことができる機会を現役アスリートと一緒になって創り出していることが印象的。自分が望まない、意図しない、変えられない運命のもとで生きている子どもたちと触れ合うことは、五体満足が当たり前のすべてのアスリートにとっても、自己の見直しのため、また身体性を高めるためにも学びの場になる。モノの提供ではなく、ソフトに特化してやっているところも素晴らしい。身体を動かすことは、スポーツの本丸。そこに直結する活動を、日常的にはなかなかスポーツに触れ合えない長期療養の子どもたちのためにやっている挑戦的なところが大きいと思います」

笹川さん、そして、松田さんの本質を捉えた発言によって「影響のある人物優先」という空気は完全に払拭された。「病気だからこそ、出会える喜び、経験を得るものがあるのは、すごく前向きな考え方だと思います」(中江さん)、「こういう着眼点があったのか」(中井さん)、「病気療養中でもスポーツができるというのは、素晴らしいメッセージになる」(藤沢さん)、「メディアへの訴求力はこだわらなくていい」(間野さん)と、次々と賛同の意見が寄せられ、2018年の「HEROs of the year賞」は全会一致でBeing ALIVE Japanに決まった。

6つの活動がいずれも素晴らしい取り組みを行っていることは間違いないが、その中でも目先の話題性に流されることなく、いかに幅広い範囲で人々をつなげたスポーツマンシップを発揮しているかどうかにフォーカスを当てて議論が交わされた1時間。まさに「社会とつながるスポーツマンシップ」の本質を捉えた審査委員会だった。

2018年の受賞は以下の通り。

■HEROs of the year賞■

スポーツの力を活かした社会貢献活動のモデルにふさわしい、もっとも優れた「アスリート・チーム・NPO」を選出。

特定非営利活動法人Being ALIVE Japan

スポーツを通じて、長期療養を必要とするこどもたちに「青春」を 入院治療中のこども向けのスポーツ・文化活動の提供(対象:小中高生)。国内外のNPOと連携したスポーツ・レクレーション事業の実施。プロ・社会人・大学スポーツチームへの入団を通じた長期療養を必要とするこどもの退院・復学支援事業。

■HEROs賞■

スポーツの力を活かし優秀な社会貢献活動を行った「アスリート・団体・NPO」を表彰。

赤星 憲広Ring of Red ~赤星憲広の輪を広げる基金~

2001年、足に病をかかえた体の不自由な女性ファンとの出会いをきっかけに、様々な人に“プレー以外でもお返しを”と考え、車椅子の寄贈を始める。’03年から現役を引退した’09年まで毎年1年間、盗塁した数の車椅子の寄贈を続け、通算301台の車椅子を寄贈。現役引退後もこの活動を続けたいと考え、基金を設立。

有森 裕子HEARTS of GOLD

第1回アンコールワット国際ハーフマラソン(AWHM)に関わった人々により「スポーツを通じて希望と勇気をわかちあう」ことを目指し、1998年10月10日に設立。有森裕子が代表が務める。AWHMに加え、青少年指導者育成スポーツ大会実施、養護施設運営、カンボジアの小・中学校で体育の授業が実施できるよう教育省と共に取り組むなど、国内外で幅広く活動している。

飯沼 誠司ATHLETE SAVE JAPAN いのちの教室

競技の枠を越えたアスリートによる「いのちの教室」の実施を通じ「一次救命の知識と技術」「いのちの大切さ」を子どもたちに伝える。スポーツ中の事故や事故防止に向けたアクション事例をアーカイブし、同じ事故を繰り返さないよう啓発する。

長谷部 誠ユニセフを通じて世界の子どもたちを支援

日本ユニセフ協会大使として、ユニセフの支援現場を訪問し、弱い立場にある世界の子どもたちの状況やユニセフの取り組みを自身のSNSやマスメディアを通じて広く日本の人々に伝えるほか、ユニセフ本部および日本ユニセフ協会が展開するキャンペーンに参加し、子どもの権利を守るためのメッセージを発信。また、2015年4月より、長谷部誠公式ホームページの会費を通じてはしかのワクチンを供給する支援を続けている。

浦和レッドダイヤモンズプロジェクト名:浦和レッズハートフルクラブ×バーンロムサイ

2006年J1リーグ優勝し、翌年からACLに出場。対戦国はもとより、アジアの国々の子どもたちにサッカーを通してスポーツの楽しさを届ける「ハートフルサッカーinアジア」を立ち上げ、タイ、インドネシア、ミャンマー、ベトナム、ブータン等過去10年間で延べ27か国40都市以上を訪問し、8000人以上の子どもたちと「こころの交流」を行う。

皆さまからのご寄付は、HEROs AWARDを受賞した活動をより拡大していくために、受賞者・受賞団体への活動奨励金としても活用させていただいております。

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審査委員一同。左から・敬称略、松田裕雄(㈱Waisportsジャパン代表取締役)、中江有里(女優・作家)、中井美穂(アナウンサー)、間野義之(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)、笹川順平(日本財団常務理事)、藤沢久美(シンクタンク・ソフィアバンク代表)、宇賀康之(Number編集長)
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2018年受賞者。左から・敬称略、飯沼誠司、赤星憲広、有森裕子、北野華子(Being ALIVE Japan)、浦和レッドダイヤモンズ代表者3名。(欠席:長谷部誠)
寄付の状況 2022年9月末現在 
1億8,095万3,302円

日本財団への寄付 4つの特徴

  1. 寄付金はすべてを支援活動に活用します
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