2022年度『夢の奨学金』活動報告会卒業する奨学生が日本財団に集合し、これまでの活動報告を行いました
「夢の奨学金」を活用して学業を終え、新たな一歩を踏み出す奨学生たちが、これまでの学生生活について発表する活動報告会が3月12日(土)、日本財団(東京・赤坂)にて開催されました。前年度はコロナ禍の影響もあり、対面とオンラインのハイブリット形式で開催されましたが、今年度は会場に集合し、在学中の奨学生、ソーシャルワーカー、日本財団担当者等、多くの参加者が祝福し見守るなか、これまでの活動を発表してくれました。
新しい門出を迎える15人の奨学生が発表
「夢の奨学金」では奨学生同士の交流を図るイベントが年に複数回開催されていますが、年度末に開催されるこの活動報告会は、もっとも多くの関係者が集まる行事です。今回は卒業を迎える15人の奨学生が、これまでの学生生活を報告してくれました。
まず日本財団の吉倉和宏常務理事より開会あいさつ
「活動報告会はオンラインやハイブリット形式での開催が続きましたが、いよいよ対面で実施することができるようになりました。今年度の卒業生は学生生活の大半がコロナ過でたいへんだったと思います。でも今日はこうして直にお会いできることが、ほんとうにうれしいです。同じ空間でお話を聞くのは、表情や熱量が伝わってくるのがいいところですね。皆さんの気持ちと気持ちが触れ合う場になることを願っています」
続いて、新年度から『夢の奨学金』の仲間に加わる6人の第8期生の紹介です。緊張した面持ちで前に出て、一人ひとり学校や所属を紹介してくれました。
いよいよ卒業する奨学生の活動報告が始まりました。就職など新たな門出を迎える奨学生が、これまでの学生生活を振り返り、どのようなことを学んだか、自分はどう考えたか、これからの進路や後輩へのメッセージ等を伝えてくれました。その発表の後、担当のソーシャルワーカーからも一言ずつお祝いと励ましの言葉が贈られました。
心理学や経済学、デザインなどそれぞれの学び
トップバッターは香川県の大学で心理学を学んだ4期生。コロナ禍で制限が多かったとはいえ、大学生活で友人が増えて貴重な体験ができたと語りました。後輩の奨学生へ「学生生活を楽しんで、いろいろな人と関わることを大切にしてほしい」とメッセージを贈ってくれました。
地元が長野の4期生は「新しい土地で新しいつながりを得たかったから」と、あえて地元から離れた青森の大学で経済学と経営学を学びました。その言葉通り、大学やアルバイト先で多くの地域の人とつながりができたそうです。
後輩へは「自分とは異なる考え方の人とも対話することで、自分の可能性を広げてほしいと思います」会場からは人間関係の作り方などについて、質問が飛び交っていました。
生活デザイン学科に在籍した4期生は、建築と住居デザインを学びました。自ら図面を描き、模型を作る作業を徹夜でこなしたことが思い出に残っています。卒業制作では、自分の思いが込められるテーマとして児童養護施設の設計にチャレンジ。「地域が児童養護施設を見守るような造りで、社会的養護の子どもたちが地域社会とのつながりを感じられる建物を設計しました」と、その作品の図面と模型を映像で披露してくれました。この作品は大学内で作品賞を受賞したとのことです。
カウンセリングや精神分析の基礎、臨床心理学を学んだ4期生。「2年生から授業がオンラインとなり、一人で過ごす日が続いたことで、3年生のときは気持ちが落ちてしまいました。そんなとき奨学生の仲間との会話が支えになりました」と、コロナ禍での苦労を率直に語ってくれました。その後は持ち直し、成績も伸びて満足いく卒業論文を書けたということです。
外国語大学でモンゴル語を学んだ5期生は、4月からは国家公務員として省庁に勤めることになりました。3年生から公務員試験の予備校にも通い、イギリスやモンゴルへの短期留学も実現させました。社会人生活を経て学生生活を送ったという経験、これからも「一人ひとりに感謝をお伝えしたい」と改めて発表してくれました。
また、介護の専門学校から大学に編入し、社会福祉を深く学んだ奨学生は「自分が大学で学べるとは思いませんでした。児童福祉や地域福祉も含めて学べたことは財産です」と喜びを語りました。
音楽大学でサックスを続けてきた奨学生は、楽器を持参してその場で演奏を披露してくれました。「もう一回聴きたいです!」というアンコールのリクエストもあり、会場を沸かせてくれました。
記念品授与、ソーシャルワーカーからのメッセージ
全員の活動報告が終わり、今年度で卒業という区切りを迎える奨学生に、日本財団から記念品が贈られました。記念品はアウトドアや室内でも使えるステンレスマグカップ。「ぜひ普段から使っていただいて、夢の奨学金の仲間のことを思い出してください」と担当者よりコメントがありました。
最後に改めて、奨学生と共に歩んできたソーシャルワーカーよりお祝いと励ましのメッセージが贈られました。
「今日は本当におめでとうございました。卒業はおめでたいですが、さみしい気持ちもあります。コロナ禍の間は奨学生とソーシャルワーカーも直接お会いできない日々が続きました。それでも、最後にはこのように対面で卒業をお祝いできたことをありがたく思っています。皆さんのことをこれからも応援しています」
「皆さんおめでとうございます。それぞれの4年間や3年間のお話をお聞きして、胸がいっぱいです。学生生活に困難なことがなかった人はいないと思います。それでも、自分なりに考えて答えを出し、自分なりの選択をされたことが、すごいと思います
自分の中の世界を広げてたくさんの人に出会って、まだ知らない自分自身とも出会ってほしい。それを保障してくれるのが夢の奨学金なのだと思います。みなさんと出会えて、勇気や元気をいただきました。私たちが教えられることもたくさんありました。」
「皆さんを支える側のソーシャルワーカーですが、支えられる側が実は誰かを支えている。ソーシャルワークを行うときいつもそのことを実感しています。もし、ご自分の思うような成果がでない、役に立てないと思ってしまうときも、自分自身の存在が誰かを支えていることを思い出してください」
最後に日本財団の高橋恵里子部長より挨拶がありました。
「今日はここまでお越しいただき、報告・発表をしていただいたこと、ありがたく思っています。みなさんの人生の一端を知ることができ、胸がいっぱいになりました。人生には山も谷もあります。それぞれの状況やライフステージは異なりますので、人と比べる必要はありません。自分が何をしたいのか、ということを考えていくことが大事なのだと思います。本日の活動報告会に関わってくださった皆さん、ありがとうございました」
活動報告会は無事に終了し、最後に集合写真を撮影しました。活動報告会終了後、自由参加の交流会の場が設けられ、卒業生と現役の奨学生、ソーシャルワーカーらがざっくばらんに交流を楽しみ、別れ際まで盛り上がりました。