中小企業経営者の想いがつながり、生きにくさを感じている若者たちを受容する社会へ

画像:NPO法人み・らいず2の山村葉奈さん。画面左下に「誰もが自分らしく働くことができる社会に。NPO法人み・らいず2 山村葉奈」の文字

社会貢献活動に取り組む中小企業の皆さまとの連帯で、大きなソーシャルインパクトを起こすことを目的とした社会貢献企業基金。いただいたご寄付はその全額を災害復興支援、子ども支援、障害分野支援といったご指定の分野に活用させていただいています。

生まれつきの特性でコミュニケーションや対人関係を苦手とする子どもたちを支援するNPO法人み・らいず2は、そんな社会貢献企業基金の支援先の1つ。

そこにはどのような生きにくさが存在するのでしょうか。NPO法人み・らいず2の山村葉奈さんにお話を伺いました。

準備が整わないまま、社会に放り出されてしまう若者たち

生まれつきの特性でコミュニケーションや対人関係を苦手とする子どもたちがいます。そのなかには発達障害という診断を受けているケースもあれば、診断を受けていないけれど同じように生きづらさを感じているというケースもあります。

これまでは「変わった子」とされてしまうこともあった、子どもたち。周囲がこのような子どもたちへの理解を深め、それぞれの特性にあった環境や支援を提供することが今求められています。

大阪市を拠点に活動するNPO法人み・らいず2は「だれもが、自分らしく地域で暮らせる社会」を目指し、障害や経済状況、いじめ・虐待など、さまざまな理由で人との関係づくりや社会参加が難しくなってしまった子どもたちや若者への支援事業を行う団体です。

そして、み・らいず2の支援事業の1つが発達障害や知的障害のある児童期の子どもたちをサポートするスクール事業です。
子どもたちが将来、社会の中で役割を持って生きていくことができるように児童期からソーシャルスキルトレーニングを中心とする支援を行う同事業。

その一方で、み・らいず2では子どもたちが若者と言える年齢になってからも継続的な支援が必要だと感じているそうです。

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NPO法人み・らいず2の山村葉奈さん

「高校までは在学中の支援を学校がしてくれることも少なくありません。ただ大学や専門学校になると生徒数も多いので、学校側が一人ひとりに支援を行き届かせるのはどうしても難しくなってしまいます。

大学や専門学校になると連絡が口頭だったりメールだったりとさまざまな媒体で行われるために、どの情報が自分に向けたものなのかがわからなくなってしまうことも。
またコミュケーションや対人関係を苦手としている子どもたちだと、大学や専門学校はクラスのつながりも薄いので、どうやって友達を作ればいいかわからず、ずっと一人になってしまうケースもあるようです。

高校まではある程度敷かれたレールの上を歩くことができたのが、急に自分から動かなくてはいけなくなる。そこに対応できずに結果的に単位を落としてしまったりするケースがあるそうです」(NPO法人み・らいず2 山村葉奈さん)

高校までであれば学校のサポートのほか、利用できる公的な領域の福祉サービスも少なくありません。しかし、大学生になると極端に利用できる福祉サービスが減ってしまうそうです。

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事業紹介パンフレット。明るい雰囲気で手に取りやすく

そして、就職活動の段階になると、さらに周囲からのサポートはなくなっていきます。

「他の学生はいろいろな人とコミュニケーションしたり、アルバイトを経験するなかで、自分に向いている仕事がだんだんとわかってきますよね。そういう経験もなく、そのまま就職活動となってしまうと自分が何を得意で苦手なのか、それさえもわかりません。

また、どうやって応募すればいいかわからなかったり、面接には行くけれど何を話していいかわからないというケースもあります。グループディスカッションがはじまると、それでもうやりたくなくなってしまう、という方もいますね」(山村さん)

コミュニケーションや対人関係が苦手な分、ゆっくりじっくりと自己理解を深め、就職活動に取り組む必要がある若者たち。山村さんはそんな若者たちへ、長期にわたるサポートが必要だと語ります。

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NPO法人み・らいず2の山村葉奈さん

「大学生であれば1年生はアルバイトや自分探しをする段階。この段階から支援をする必要があると感じています。
そして大学3年・4年になったら、自分たちが将来どういう生活をしたいかを軸に就職活動に取り組んでいって欲しいです。

もしかしたら正社員ではなくてアルバイトという働き方が合っている(働く時間が自分に合わせて選べる、業務内容が決まっているなど)と感じる方もいらっしゃるかもしれません。週5フルタイムはしんどいという方がいてもいいと思います。
以前、就職したけれどやっぱりしんどいので辞めたいとおっしゃる方もいました。正直、今は人手不足なので、仕事自体は見つからなくはないんです。

でも、とりあえず働けるところで働いてしまうと、結局仕事が自分に合わず辞めてしまい、逆戻りをしてしまうんですよね」(山村さん)

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み・らいず2に通う子どもたちの作品

社会の生きにくさをなくすため、若者と企業の相互理解を

み・らいず2では、生まれつきの特性でコミュニケーションや対人関係が苦手な子ども・若者にさまざまな支援事業を展開しています。そしてその事業の一部には社会貢献企業基金を通じていただいた、中小企業の皆さまのご寄付が使われています。

「やっぱりまだ就職の支援に求職者側がお金を払うというのは浸透していません。一方で就職の支援をしていくには時間も人も多く必要になります。そういった面でも中小企業の皆さんのご好意はとてもありがたいものです」(山村さん)

そして山村さんは、コミュニケーションや対人関係が苦手な若者と企業がさらに相互理解を深めることで、多くの「生きにくさ」が救われると語ります。

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NPO法人み・らいず2で子ども・若者を支援する皆さん

「コミュニケーションや対人関係が苦手な若者には、障害者雇用と一般雇用の2つの選択肢があります。障害者雇用の場合、社会貢献活動の一環で雇用されるというケースが少なくありません。しかし、コミュニケーションや対人関係が苦手な若者のなかには診断を受けていない人もいます。

障害者雇用か一般雇用かに関わらず、企業は必要な人材を雇うという観点でコミュニケーションや対人関係が苦手な若者を雇用してもらえたらいいし、学生側はそのためのスキルアップをできるのが理想だと思います。

私が見てきた若者のなかには、すごく真面目で毎日コツコツと仕事に打ち込めるタイプの方も少なくありません。他の人ならば飽きてしまうような仕事に数時間ずっと真面目に取り組める人もいます。そういう特性を企業さんにも知っていただけて、上手くマッチングできると、皆さんがもっと社会で活躍できるようになると思うんです。
多様性や寛容性が社会に広がっていくように、私たちも働きかけていきたいと思います」(山村さん)