気候変動災害被災者を対象にしたメンタルヘルス支援

写真
気候変動の影響により沿岸部住居エリアの被災リスク向上が課題となっている

気候変動災害被災者を対象にしたメンタルヘルス支援とは

気候変動による災害の激甚化や頻発化により高まる被災者のメンタルヘルスケアのニーズに応えるため、WHO西太平洋地域事務局と連携し、被災者のメンタルヘルス支援の仕組みを地域レベルで構築するプロジェクトです。

気候変動災害がもたらすメンタルヘルスの課題

気候変動により、台風、洪水、高潮、干ばつ、海面上昇、熱波などの災害が激甚化、頻発化しています。こうした災害は、住まいの喪失、避難生活の長期化、生計手段の喪失、地域コミュニティの分断などを引き起こし、被災者のメンタルヘルスへ大きな影響を及ぼします。

世界中の避難民を対象に調査を行っている「国内避難モニタリング・センター(IDMC)」によると、2025年には、アジア・太平洋地域で自然災害による国内避難が1,753万件発生し、世界全体の約6割を占めました。特に、フィリピン、パラオ、バヌアツなどでは、台風や暴風雨などの災害により多くの国内避難が発生しており、アジア・太平洋地域が災害による影響を大きく受ける地域であることが示されています。避難生活の長期化や生活再建の不安は、被災者の精神的負担となるため、災害後の支援においては身体的な安全確保に加え、メンタルヘルス支援の重要性が高まっています。

このように、アジア・太平洋地域では自然災害による避難が多く発生しており、なかでも本事業の対象国が含まれる「西太平洋地域(WHO西太平洋地域事務局が所管)」では、気候変動災害への対応が重要な課題となっています。しかし、パラオやバヌアツ、そして日本を含むこの地域では、気候変動災害の影響を受けやすい一方で、精神科医、心理職、精神保健の専門職など、メンタルヘルス支援を担う専門人材が限られています。災害時には支援ニーズが一時的に急増するため、専門家だけで全ての被災者に対応することは困難です。そのため、地域の保健医療関係者、行政職員、学校関係者、地域の支援者など、専門家以外の人々も基本的なメンタルヘルス支援を担える体制づくりが求められています。

さらに、専門人材が限られるなかで支援を広げていくためには、気候変動対策、災害対応・防災、保健医療分野の取り組みを連携させることが不可欠です。限られた専門人材を有効に活用しながら、被災者のメンタルヘルス支援を災害対応の一部として位置付け、平時からの備え、災害発生時の初動対応、さらには復旧・復興までを見据えた仕組みづくりが必要となっています。

本事業が目指すこと

こうした課題に対応するため、本事業では、WHO西太平洋地域事務局と連携し、モンゴル、マレーシア、フィリピン、パラオ、バヌアツの5カ国を対象に、気候変動災害におけるメンタルヘルス支援を、各国の防災・災害対応、気候変動対策、保健医療政策に組み込むことを目指します。

具体的には、各国の政策・制度、支援体制、災害時のメンタルヘルスニーズに関する調査を行い、専門人材が限られる地域でも実施可能な支援のあり方や好事例を整理します。その上で、専門家以外の支援者も活用できる研修カリキュラムやツールキットを作成し、災害時に被災者のメンタルヘルスの状態を把握し、必要な支援につなげるための実践的な方法を広げます。

本事業が推進するメンタルヘルス支援は、専門家による治療だけを指すものではありません。地域の保健医療関係者、行政職員、学校関係者、地域の支援者などが、研修カリキュラムやツールキットを活用し、被災者の不安やストレス、孤立、喪失感などに早期に気づき、基本的なメンタルヘルス支援を行うことを目指しています。

また、女性、若者、高齢者、障害のある人、移民、国内避難民など、災害の影響を受けやすい人々への支援を重視します。地域で得られた知見を各国で共有し、災害時にも必要なメンタルヘルス支援を確実に届けられる、持続可能で包摂的な支援体制の構築につなげていきます。

関連リンク

お問い合わせ

日本財団 特定事業部 インクルージョン推進チーム

  • メールアドレス:100_inclusion_suishin@ps.nippon-foundation.or.jp