ベトナムでは2000年まで、聴覚障害者向けの教育を提供できる中学校は全国で1校しかなく、聴覚障害者は高校や大学には行くことができませんでした。このような状況から、日本財団はベトナムのろう者に大学までの高等教育の機会を提供するプログラムの支援を開始しました。
プログラムは下記の5つの柱で構成されています。
- 手話による成人対象の中等(中学・高校)教育<終了・ドンナイ省へ移行>
これは聴覚障害者が大学で学ぶことを目指して、中等教育の機会を提供するものです。この学校はベトナムの通常のろう学校とは違い、授業は全て手話で行われています。通常のろう学校では、授業の内容を削ったり、勉強の進め方を遅くしたりすることが多いのですが、この学校では手話で授業を行うことで生徒が内容をスムーズに理解できるため、聴者の学校と同じ内容のカリキュラムで1学年を1年間で終了しています。2006年に、この学校からベトナムで初めて高校を卒業したろう者が誕生しました。 - ホーチミン手話分析法の大学レベルの資格コース
ホーチミン手話の辞書や文法の教材はベトナムにないため、このコースでは、将来こうした課題に取り組むための人材育成を目指しています。 - ホーチミン手話教授法の大学レベルでの資格コース
現在のベトナムでは、手話で教えることができる教師や、手話を教えるための教科書が著しく不足しています。このコースでは、将来こうした課題に取り組むための人材育成を目指しています。 - 手話通訳者の育成
聴覚障害学生が大学で教授とコミュニケーションを取って学ぶためには、手話通訳者が必要となります。そのため、このコースでは聴者を対象とした手話通訳者の育成を目指します。 - 大学レベルの教員養成プログラム
ドンナイ大学におけるろう者の教員を養成するためのプログラムで、現在在籍している学生はベトナムで初めて大学に進学したろう者です。授業には手話通訳者が派遣されています。
中学校・高校は2010年度からドンナイ省運営に切り替わり、現在も多くの卒業生を輩出しています。日本財団は、「ろう当事者教員の養成」として引き続き大学で教員を目指すろう学生を支援しています。
このプロジェクトをモデルとした手話による中等教育支援は、フィリピンとラオスへも広がりを見せています。
- 支援した学生数:合計200人以上
- 中学入学学生数:200人以上
- 高校入学学生数:150人以上
- 大学卒業学生数:30人以上