アジア太平洋における手話言語学の普及及び手話辞書の作成 (香港中文大学)

聴覚障害者のうち、手話を第一言語とするろう者は手話でコミュニケーションを行いますが、彼らが聴者の社会に参画するためには、手話の社会的な認知と手話通訳者の養成が不可欠となります。しかし、アジアの多くの国々は、手話通訳制度はもとより、手話の辞書や手話を教えるための教材なども整備されていません。たとえ手話の辞書があったとしても、そのほとんどは単純な語彙集で文法の解説等はありません。また、聞こえる人だけで作ったために文法が間違っていたり、ろう者に通じないような手話が含まれていたりすることもあります。また、手話を体系的に学べる場所はほとんどなく、手話を指導するために十分なトレーニングを受けたろう者もほとんどいません。

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コンピューターで手話辞書作成の作業をするカンボジアの聴覚障害者

そのため、日本財団はアジア太平洋諸国において、手話普及の基盤となる手話言語学研究の拠点を高等教育機関に作り、実用的な手話辞書の作成、手話指導者の育成、手話クラスの開設を支援しています。この手話辞書の特徴は、音声言語からでも、手話からでも双方向から調べられるものであることです。また、辞書に加えて、手話の語彙を文法上の利用方法を含めて教えられる手話教材も作成します。これにより、手話辞書が実際に手話を普及する上で使いやすいものとなります。

香港中文大学で手話言語学を学んだ留学生が帰国後自国の大学に手話言語学研究の拠点を立ち上げ、手話の普及に取り組んでいる例もあります。2019年にはアジア地域6か国の大学で「アジア手話言語研究大学コンソーシアム」を発足しました。今後は、国を超えた情報交換や成果の発信を通じて、手話普及の土台を広げていくことを目指しています。

支援国:香港・ベトナム・カンボジア・フィリピン・インドネシア・スリランカ・フィジー・日本・ミャンマー