みかげ(コンテナ船ワーキンググループ)航海士の海技力と自動運航技術による操船サポートの融合
プロジェクト概要と開発状況
コンソーシアムメンバー(2024年4月時点)
他
プロジェクト概要
日本国内で運航される内航船の船員は高齢化が進んでおり、若い船員の数も減少傾向にあるため、船員不足は深刻な問題となっています。加えて、船員一人当たりの仕事量も増加しており、このような状況を改善するために、船員の負担を軽減し、より安全に航行できるよう自動化技術の開発に力を入れています。具体的には、以下の点を目指しています。
- 自動運航技術を用いて操船をサポートすることで、船員の仕事の負担を削減します。
- 熟練船員の知識と経験を自動運航技術に取り入れ、若手船員の操船をサポートします。
- 船員の海技力と自動運航技術を組み合わせることで、より安全な操船を実現します。
この自動運航技術の普及によって、内航船の船員不足を解消し、内航海運業界の維持と発展を支えることが期待されています。これは日本の日々の生活にとって欠かせない部分であり、船舶自動化技術の進展がその鍵を握っています。
開発状況(2024年4月現在)
通常の船舶では航海士が双眼鏡を使用して見張りを行い、船の進路の安全を確認していますが、自動運航の場合はこの役割をカメラによる物標の認識技術が担います。このカメラによる認識技術の性能を検証し、自動運航が安全に行える条件を確認しています。また、船舶が航行する際、航海士はレーダーを使用して他の船舶や避けるべき物標を把握します。このレーダー技術も同様に、現在どれだけの情報を捉えられるかを検証し、安全に自動運航できる条件を詳しく調べています。
航海士が他の船舶や障害物を避ける際に考慮する様々な状況を踏まえ、避航ルートを考える機能の必要要件を策定しました。船の針路を変更する際には舵を切る必要があり、提案された避航ルートに沿って船が適切に運航できるよう、自動で舵を操作する装置の改良も行いました。
開発のポイント
船舶が他の船舶を避ける際には、決められた海上のルールに従う必要があり、どちらの船が避ける動作をするかは状況によって変わります。これまでの自動運航技術の開発では、「ぶつからないこと」を最優先にしていましたが、今後はルールに正しく沿って他の船舶を避けることが求められています。そのため、今回の開発ではシステムが策定したルートがルールに沿っているかを判定する機能を追加し、航海士が手動で船を操船する場合と同様に、船を安全に避けるように進めています。
また、予定した航行ルートから逸脱した場合、システムは短時間でルートに戻ることを優先し、これが船の舵やエンジンなどに負担をかけることがあります。このような状況を防ぐために、舵やエンジンなどの制御装置の改良を行っています。これにより、システムの操作がよりスムーズで安全になるよう努めています。
今後について
センサーとカメラを用いた画像認識技術を組み合わせることにより、避けるべき船舶や物標をどの程度認識できるかを検証し、自動運航が安全に行える条件を詳細化していきます。また、システムが策定した他船を避けるルートが適切なルールに沿っているかを確認するためのフィルター機能の開発を進めています。自動で舵やエンジンを操作する装置については、航海士が手動で操船する際の操作に近い形で船舶を動かせるよう、開発を継続しています。自動運航技術を担う様々な装置が適切に連携して機能するかを船舶に搭載する前に確認するための試験を実施し、事前の試験で安全性が確認できれば、実際に船舶に搭載して海上での試験を行います。
関係者コメント
佐竹 賢一(株式会社商船三井 マリタイムDX共創ユニット マリタイムインテリジェンスチーム コーディネーター)
MEGURI2040 第1フェーズに続き、第2フェーズでも海技者としての知見を活かして開発に参加しています。多様なバックグラウンドを持つメンバーとのやり取りからは多くの新たな気づきを得ることができ、プロジェクトへの取り組みを通じて貴重な経験をさせていただいております。私自身、航海士としての乗船経験があり、現場の困難や問題を直接見聞きし、時には経験してきました。MEGURI2040の取り組みが船の安全運航や船員の労働環境の改善に繋がり、海事産業が魅力ある職場として認識されることを願っています。そのために、現場と開発者を繋ぐ役割を果たし、海技者の視点を忘れずに開発に取り組んでいます
片桐 高輔(三井E&S造船株式会社 事業開発部 自律船Gr. 課長補佐)
船舶同士の衝突や座礁を回避しながら、新しい航路を自動で提案するシステムの開発を担当しています。
人が行っている認識や判断をシステムが担うとともに、関連するシステムとの情報伝達を適切に行い、またユーザビリティの高いシステムとするため、社内外の様々な方の知見や協力を得て開発を進めています。
こうした自動運航技術が、船員の方の業務のサポートとなり、より安全な航海の実現に結び付くことを願っています。