ペルーへの医療サービス提供(日系社会支援)日本とペルーの架け橋となる日秘移住百周年記念病院

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ペルー日系人移住100周年記念病院にて消化器内科医師として勤務する岸本グスタボさん。岸本グスタボさんは日系スカラー3期生(外部リンク)として、国立がん研究センター(東京都)にて、早期消化管がんの高度な内視鏡治療を学んだ。

経済的な理由や新天地での挑戦を目的にした日本人の海外移住は、1880年代から本格化しました。多くの移住者が北米や南米で農業に従事していましたが、手つかずの未開の土地を開墾する農作業は、決して容易ではありませんでした。

そのため、移住した日本人は各地に「援護協会」や「県人会」といった日本人・日系人による互助組織を設立し、生活や健康の維持、子息への教育の提供や日本文化の伝承を行ってきました。ブラジルでは、日系人が多く住んでいる地域ではKAIKAN(会館)と呼ばれる日系人が設立した集会場やスポーツ場のような施設が各地に残り、日本にちなんだ祭りや季節ごとの行事が行われています。

また、マラリアなどの風土病、怪我や病気から身を守るための診療所や病院は移住者にとって最も重要な施設の一つでした。移住した日本人は各地で診療所を設立し、移住者の健康と安全を守っており、今日に至るまで設備が整った病院を運営している日系団体も少なくありません。

例えば、2005年12月に建設したリマの中心部に位置する日秘移住百周年記念病院はペルー日系人協会という日系人組織が運営をしています。日本財団は2000年度に建設費用の一部、そして2009年度に増設費用として合計約6億円の支援を行いました。この病院は地下2階の14階建てで、JICAや日本企業からの支援を受けて、100床のベッド、CTスキャン、MRI、超音波検査、内視鏡検査、マンモグラフィーなど最新設備を備えています。建設以来、この病院は日系人のみならず、ペルー国民にとって欠くことの出来ない医療サービスを提供し、今日では一日に約1,000名の外来患者があります。さらに、外来専門棟を新設するなど、病院施設をさらに拡充する予定もあるそうです。

2022年7月、新型コロナ感染症の対策として、屋外にもテントを張り、屋外でも診察やワクチン接種を行っていました。

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JICAや日系企業からの支援により、最新の医療設備が整えられている。
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病院の医療設備について説明を受ける日本財団の尾形武寿理事長(2022年10月)

日本財団は、ペルーにおいて病院支援の他、移住に関する記録と資料を展示する資料館の建設支援、中古救急車や福祉車両の寄贈などを行いました。これらの支援は日系人のためだけではなく、現地の日系団体を通じて、広くペルー社会全体の発展につながっています。今後も、日本とペルーの架け橋となる活用が続けられることを期待しています。

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病院の待合室で診察を待つ人々。リマ市内だけでなく、遠方からも診察に訪れる人も多い。