組織体制の強化(2/2)
業務多様化と職員体制の強化
当財団では、円滑なコミュニケーションと業務効率向上を目指すと共に、社会課題解決に向けた地域社会との関係強化も図ってきた。
2013年4月、ミャンマー連邦共和国のヤンゴン市に日本財団ミャンマー駐在員事務所を開設。間遠登志郎と梅村岳大の職員2名を派遣し、同国の和平構築のために学校建設を中心とした事業を推進する機能を同駐在事務所に持たせた。

2016年には、鳥取県との共同プロジェクト実施(縮小社会の中でも持続可能な仕組みづくり 参照)にあたり、鳥取県庁本庁舎内に日本財団鳥取事務所を開設。地域住民が元気に暮らし、誇りを持てる社会づくりを目指している。
また、同年4月14日、16日に発生した熊本地震では、行政と連携した復旧・復興活動を、NPOやボランティア、企業等の民間団体が円滑に実施できるよう、4月26日に熊本県庁前に日本財団災害復興センター熊本本部を開設。同センターに必要な支援を一元的に行うための機能を持たせ、1年2カ月にわたり震災復興支援に携わった。

2021年6月には、岡山県、広島県、香川県、愛媛県と連携し、陸域から瀬戸内海に流入するごみをなくす包括的な海洋ごみ対策事業「瀬戸内オーシャンズX」(産官学民オールジャパンで海洋ごみ対策のモデル構築 参照)を推進するため、香川県庁内に日本財団香川事務所を設置した。
また、大阪府箕面市とは「子ども第三の居場所」プロジェクト(「子ども第三の居場所」-困難に直面する子どもが、生き抜く力を育む 参照)を共に推進した経験を、将来的に市の行政に活かすことを目的に、同市と市職員派遣に関する協定を2016年に締結、同市職員1名を受け入れた。(その後2018年より4名追加受け入れ)
こうした人材交流は箕面市以外にも波及し、翌2017年には、人材育成を目的に鳥取県から、2018年には香川県丸亀市と三重県伊勢市から各1名、2019年には東京都渋谷区から1名、計5自治体から12名の出向職員を受け入れた。
地方行政が抱える社会課題を、当財団職員と共に協力し考え解決に導く一助とするため、こうした取り組みが、それぞれの自治体と当財団との絆を堅固なものにしている。
また、公募し申請を受けて審査、採択、助成する受動的組織から、当財団自らが社会課題を調査、発掘し、選定した上で解決のための事業を展開していく能動的な組織へと変化してゆくことで事業規模が拡大し、人員不足が顕在化したため積極的な採用活動を実施した。2012年には職員、嘱託職員で計133名の組織であったが、2021年には職員130名、嘱託62名の合計192名の体制となった。
理事8名体制から11名体制へ
年度内採択事業の決定並びに調査研究事業、および情報公開事業、協力援助事業等の実施に伴い発生する委託業務の審議決定を適時、適切に行うため、特例民法法人当時までは常勤理事で構成する執行理事会が業務執行機能を果たしてきた。しかしながら、公益財団法人移行後は理事会の機能を執行理事会が一部担うことができなくなり、理事会が担わなければならないことになった。また、法人法の規定上理事会成立要件が厳格に定められたことから出席者の割合が重要となり、常勤理事により理事会を構成し組織運営を行ってきた。
2017年、透明性をより高め説明責任を果たす上で、外部識者を理事メンバー(非常勤)に加えることが必要と考え、3名の理事を追加し理事会を11名体制とした。理事会において非常勤理事から深い専門知識、幅広い知見を基に、当財団の事業、組織の運営等について多角的な助言を得るため、適切な業務執行体制の強化を図った。
(菅 みずき・庄野 麻希子/総務部)
特定業務の多様化
当財団では、モーターボート競走法第45条第1項第3号及び第5号の規定に基づき、2022年3月時点で7つの特定業務を実施している(特定業務一覧 参照)。
特定業務は、船舶および海事に関する事業並びに公益の増進を目的とする事業の振興を図るために必要な業務として国土交通大臣の認可を得て実施するもので、社会の変化と共に加えてきたものである。
直近10年においては、寄付金による社会課題の解決を実践することにより我が国における寄付文化の醸成を目的として、2012年4月に寄付文化醸成業務を新たに開始した。2015年および2020年には本業務による有効性と効果を検証し、新たな寄付の仕組みづくりの試行など、今後の方向性を確認した。
2014年9月には、これまで海外協力援助業務規程および国内協力援助業務規程に区分し実施してきた協力援助業務について、規程の整理統合を行い一本化した。
2015年4月には、適切な担い手が不在であるものの、早急に取り組む必要のある社会課題の解決に向け、将来的には担い手の育成と補助事業化を目指し、当財団自らが主体となり、先駆的かつ波及効果の期待できる事業を行うため、社会変革推進業務を開始した。
2019年4月には、社会変革推進業務の対象から海洋の領域を分離し海洋連携推進業務を開始。本業務は世界規模で進行し、多様なセクターが連携して解決すべき海洋に係る諸課題に対し、当財団自らが主体となって課題解決に向けた機運を醸成するため、国内外の様々な関係者との連携・協調を先導することを目的としている。
特定業務一覧
業務名 | 開始年度 | 内容 |
---|---|---|
日本財団ビル運営業務(※1) | 1964 | 公益活動を行う団体に低廉な賃貸料で活動スペースを提供する。 |
情報公開業務(※2) | 1971 | 財団の活動状況について積極的に情報発信・公開を行い、公益事業の発展及びモーターボート競走に対する国民の理解の促進を図る。 |
協力援助業務(※3) | 1971 | 災害救援活動や国際協力などの国内外のニーズに対応するため、助成金の交付や物品の供与を行う。 |
調査研究業務 | 1990 | 新規事業の発掘並びに補助事業等のより一層の振興を図るために調査研究及び情報交換等を行う。 |
寄付文化醸成業務 | 2012 | 寄付金による社会課題の解決を実践することにより、寄付文化の醸成を図る。 |
社会変革推進業務 | 2015 | 実施団体として相応しい団体が存在しない場合において、当財団が主体となって社会課題を解決するために事業を実施する。 |
海洋連携推進業務 | 2019 | 海洋の諸課題に対し、当財団が主体となって、国内外の様々な関係者との連携・協調を先導し、諸課題の解決を図る。 |
- ※1
1964年:日本船舶振興会館(仮称)事業として開始。
2007年:日本財団ビル運営業務に改称。 - ※2
1971年:造船事情等の周知事業として開始。
1999年:造船事情等の広報事業に改称。
2004年:造船事情等の情報公開事業に改称。
2007年:情報公開業務に改称。 - ※3
1971年:非常災害等援助事業として開始。
1981年:海外を対象とする事業の増加を受け、業務執行の一層の適正化を図るため、海外協力援助業務規程を制定。
1997年:国内協力援助業務を監査の対象に加えたことを機に、国内協力援助業務規程を制定。
2007年:協力援助業務に改称。
2014年:海外協力援助業務規程及び国内協力援助業務規程を廃止し、協力援助業務規程を制定(一本化)。
(笹野 綾香/総務部)
新たな組織の設立支援
当財団は、社会の変化から生まれる課題に対して自ら調査研究し、中には事業の実践まで行った上で、特定の社会課題に専門的に取り組む組織の設立を支援してきた。
2013年9月に、2020年のオリンピックとパラリンピックの東京招致が決定したことから、「パラリンピックの成功なくして、東京2020大会の成功はない」を合言葉に、「日本財団らしい貢献」のあり方を検討。2014年6月には、パラリンピックの中で最も成功を収めたと言われる2012年ロンドン大会を分析・研究するため、当財団や若手研究者等からなる「パラリンピック研究会」を立ち上げた。代表には、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会評議会事務総長を務めた小倉和夫氏が就いた。
また、日本ではパラリンピックや障害者スポーツの選手が所属する競技団体の組織基盤が脆弱で、これを改善するには市民による大会ボランティアへの参画と、パラスポーツの観戦と体験による認知度の向上が必要不可欠であった。こうした課題に取り組むため、当財団も全面的に協力することとし、2015年5月に「一般財団法人日本財団パラリンピックサポートセンター」が設立された。会長職には、国際パラリンピック委員会理事の山脇康氏に就任要請した。なお、法人名に“パラリンピック”を冠するに当たっては国際パラリンピック委員会の使用許可を得た。当財団からも、職員4名を出向させると共にボートレース業界の協力を仰ぎ、3施行者(東京都府中市、大阪府箕面市、長崎県大村市)に職員の出向を要請し、協力を得て業務に当たった。
さらに2020年8月には、「一般財団法人日本財団電話リレーサービス」が設立。翌年2021年4月には「一般財団法人日本財団母乳バンク」が設立され、各団体に職員を派遣した。
(山下 大輔/総務部)