事業評価

1. 評価の目的

日本財団の事業評価は、実施した助成事業について「助成金が、期待される成果を挙げているか、そしてその成果がいかに国民生活の向上に貢献したか」を効果測定することです。
そして、評価結果を助成事業の計画内容の修正や変更、実行プロセスの改善など質の向上や事業継続の判断、予算への反映などマネジメントの判断のために反映・活用することとしています。また、次年度以降の審査にも、評価結果を参考にすることにより、限られた資源をいかに有効に日本財団として、配分していくかの判断の材料にもなります。
また、評価結果を公表することにより社会的説明責任を果し、ひいては助成金交付事業の一層の透明化を図ろうとするものです。

2. 事業評価導入の経緯

監査グループでは以前から、日本財団の実施した助成事業が目的に合致し、適正かつ効率的に実施されているかどうかを確認する監査を重点に行ってきました。

1994年

組織・業務改善計画(外部リンク)」の一項目「監査体制の充実と事業実施団体への指導の徹底」の中に「大規模な補助事業、先駆的な新規事業、又は重要な海外協力事業等を中心に、業務部門と協力して、事務的、会計的側面に止まらず事業の評価にまで踏み込んだ監査を行う。」が方針として示されました。これにより、従来の視点に加え、事業の成果を重視する監査を目指すこととなりました。

1995年

事業評価を開始しました。当財団の透明性と評価の客観性を確保するため、外部機関 株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメント(外部リンク)へ委託し、2009年度までに計91件の事業評価を実施しています。また事業評価がPDCAマネジメントサイクルの一部として、評価結果が当財団の助成制度へ反映されることを目指しています。2003年12月には、同社によって事業評価の手法と12の実例とをまとめた書籍「事例で学ぶ非営利組織の事業評価(外部リンク)」が出版されました。

2000年

助成事業者の利便性の向上と財団業務の効率化のため、業務支援システムを財団内に構築し、事業部門による審査時、事業完了時の評価に重点を置いた業務フローを導入しました。このフローでは、審査時には申請事業の内容や予想される効果を明確に整理し、事業実施の必要性、優先度等を総合的に検討・評価の上、採択を決定しています。期中には事業の進捗状況や実施プロセスの把握(進捗状況確認)に努め、必要に応じて改善を提案しています。事業完了時には完了報告書の提出を受け、当初設定した目標を達成できたかどうかについて確認しています。

2004年

当財団の組織体制の見直しと再編成により、監査グループに内部で事業評価を行う部署を設置しました。外部機関によるノウハウを応用するとともに、ピーター・F・ドラッカー「非営利組織の『自己評価手法』」などを参考に、当財団独自の手法により監査グループによる事業評価に着手し、2009年度までに計30件の評価を実施しました。評価手法については随時見直し、より精度を高めることを目指しています。

2006年

2005年12月に政府で閣議決定された「行政改革の重要方針(外部リンク)」に基づき、助成事業等評価実施規則(外部リンク)を制定しました。

以上のように当財団では、政府の「行政改革の重要方針」に先行して、事業評価に対する取り組みを行っていました。
「助成事業が目的に合致し、適正に実施され、助成金がムダに使われていないかを確認する監査」に加え、「助成事業が効率的に運営され、期待される成果が挙がっているかどうかの有効性・波及性の効果測定を行う事業評価」が組み込まれたことにより、助成金の活用の実態と社会への寄与とをより明らかにしています。

3. 評価の対象事業と選定方法

全ての対象事業から、当財団の定めた選定基準(支援の柱とした事業、社会的関心の高い事業、先駆的で他の事業のモデルとなる事業など)により選定し、評議員会の審議を経て理事会において決定しています。事業の選定に際しては、単独の事業(プログラム)評価を行うだけでなく、日本財団が支援の柱として実施した、犯罪被害者支援や、福祉車両整備等のようなプログラム評価も行なうことにより、事業をより深く横断的に分析し成果を確認するようにしています。

4. 評価の方法

(1) 監査グループによる評価(内部評価)

事業部門とは独立した監査グループにチームを編成し、日本財団独自の手法により評価を実施しています。

(2) 日本財団が委託した評価を専門とする民間法人(以下「外部評価法人」という。)による評価(外部評価)

評価の質を高め、客観性を保つため評価を専門とする民間法人に委託し、専門的な分析を取り入れ、評価を実施しています。
外部評価法人の選定は選定基準により評議員会の審議を経て、理事会において決定しています。

5. 評価の実施時期

助成事業の完了後原則として1年以内に評価を実施しています。

6. 評価の内容

評価の内容は評価実施要領に基づき以下の項目としています。

(1) 事業評価

  1. 会計評価
  2. 事業プロセス評価
    • 推進姿勢・推進体制・推進プロセス
  3. 事業成果評価
    • 直接的成果(量的、質的)・社会的成果(波及性、社会ニーズ対応性)
  4. 資金効率評価
  5. 総合評価

(2) 団体評価

  1. 会計評価
  2. 事業活動評価
    • 事業構造・事業内容
  3. 組織構造評価
    • 組織体制・運営マネジメント
  4. 資金効率評価
  5. 総合評価

<参考>外部評価のフレームワーク

(1)事業評価

事業評価の説明図。括弧内の数字は、スコア化する際のウェイトで合計は100。「総合評価(100)」は、総合的に見て事業がすぐれたプロセスで推進され、成果をあげているかで、「事業プロセス評価(35)」と「事業成果評価(65)」で構成される。まず、「事業プロセス評価(35)」は次の三つで構成される。1. 推進姿勢評価(10):支援団体の事業活動のなかで明確な位置づけがなされているか。2. 推進体制評価(10):推進の組織・仕組みは十分に整理されているか。3. 推進プロセス評価(15):安定的・効果的に推進されているか、向上改善の努力がなされているか。次に、「事業成果評価(65)」は次の二つで構成される。1. 直接的成果評価(45):量的(利用量・到達量など)にみた成果は十分だったかという量的成果評価(15)、そして受益者・関与者のニーズを満たす成果があげられたかという質的成果評価(30)で評価。2. 社会的成長評価(20):どのような波及効果が期待されているか、それがどの程度実現しているかという波及性評価(10)、そして社会の実態とその変化の方向に対応しているかという社会ニーズへの対応評価 (10)で評価される。

(2)団体評価

団体評価の説明図。括弧内の数字は、スコア化する際のウェイトで合計は100。「総合評価(100)」は、総合的に見て事業がすぐれたプロセスで推進され、成果をあげているかで、「事業活動内容評価(55)」と「組織構評価(45)」で構成される。まず、「事業活動内容評価(55)」は、「事業構評価(15)」と「事業内容評価(40)」で構成される。「事業構評価(15)」には、「1) 長期的構想(5)」、「2) 団体の理念との対応性(5)」、「3) 事業部の相互関連性(5)」がある。「事業内容評価(40)」には、「1) 直接的成果(25)」と「2) 社会的成果(15)」がある。次に、「組織構評価(45)」は、「組織体制評価(15)」と「運営マネジメント評価(30)」で構成される。「組織体制評価(15)」には、「1) 財政(5)」、「2) 人材・体制(5)」、「3) 技術・ノウハウ(5)」がある。「運営マネジメント評価 (30)」には、「1) 幹部のリーダーシップ(5)」、「2) 業務プロセス(15)」、「3) 組織活性化(5)」、「4) 広報活動・アカウンタビリティ(5)」がある。評価点の計算方法:1. 各項目ごとに 0~10 点のスコアづけを行う。2. 各項目のスコアに評価ウエイトを乗じて総合スコアを算出する(1,000点満点)。評価点 0~499:多くの問題がある。評価点 500~649:良好な面もあるが、かなりの問題がある。評価点 650~749:良好な水準にあるが、一部問題がある。評価点 750~849:優秀な水準にある。評価点 850~1,000:卓抜した水準にある。

7. 評価のフロー図

事業評価フロー:1. 事業担当部署による審査 2.助成事業の実施 3.事業担当部署による進捗状況確認 4.助成事業の完了報告 5.事業担当部署による事業目標の達成確認 6.監査グループによる会計監査 7.外部評価法人による評価(外部評価)または監査グループによる評価(内部評価)(外部評価法人の選定及び対象事業の選定は評議員会、理事会に諮る。) 8.会長、評議員会、理事会の順で評価結果を報告し、ホームページ等により評価結果を公表 9.事業実施団体は理事会からの講評を助成事業の改善等に反映、活用(必要に応じて、理事会に回答)、事業担当部署は理事会からの講評を事業計画・予算等へ反映、活用 10.助成事業への反映

8. 外部機関による当財団の評価結果の公表

日本財団では、1995年度以降、助成事業の中から評価対象事業を選定し、外部機関による事業評価を毎年実施してきました。
本事業評価は、「助成金が適正に使用されたか、期待される成果を挙げているか」を効果測定することで助成事業の効率化を図るとともに、その結果を公表することで助成制度の透明性を確保するために実施しているものです。
また、2004年度からは、事業評価の充実を図るため、外部機関による評価に加えて当財団独自の手法による事業評価も実施しています。

今般、当財団では、これまで評価を行ってきた助成事業と同様に、当財団自身の事業活動及び組織について外部機関の評価を受けました。
本評価は、各種の調査をもとに客観的に評価がなされたものであり、この評価結果を今後の当財団の発展や改善に活かし、より社会のニーズに応える助成財団であり続けたいとの思いから行ったものです。
当財団では、この評価結果を真摯に受け止め、改善すべき点は改善を図り、今後の財団の事業及び運営に活かしていく所存です。

評価結果の公表については、当財団の「顧客」である助成事業実施団体の皆様により一層当財団をご理解いただくとともに、広く一般市民の皆様にもご覧いただき、当財団の活動及び運営の透明性向上に努めようとするものであり、評価結果の公表にあたっては、評価を実施した外部機関が作成した評価報告書要約版(21ページ)を公表しております。

最後に、本評価のため調査にご協力いただいた関係者、関係機関、一般市民の皆様に厚く御礼申し上げますとともに、今後とも当財団の活動及び運営にご理解、ご協力を賜りますようお願い申しあげます。

下記より各年度毎の事業評価結果をご覧頂けます。