第2回モンゴル・ウランバートルフォーラム

モンゴル・ウランバートル

写真:第2回ウランバートルフォーラムの様子

 

尊敬するエンフバヤル大統領閣下並びにご列席の皆様、

記念すべき第2回ウランバートルフォーラムにおきましてご挨拶する機会を賜りましたことに対して、モンゴル開発研究センター・バトバヤル理事長を始めとするモンゴル国ウランバートルフォーラム実行委員会の皆様に深く感謝いたします。

今年の2月、エンフバヤル大統領閣下が来日したおり、お時間をいただきモンゴルと日本の歴史や文化、将来に向けての友好関係などを話し合うことができました。その際、大統領閣下のモンゴルへの愛国心や発展にかける情熱のみならず、日本、ロシア、中国など周辺国の文化に対する理解と知識の深さを知り敬服いたしました。

モンゴルは、東西冷戦の終結以降、アジアに自らの位置を見出し、この地域の政治・経済の協力関係の構築に積極的に参加し、アジアにおけるその存在の大きさを示し始めております。

現大統領の指導の下に進められている民主主義と市場経済体制の導入は、モンゴル社会を改革し、国民に豊な生活を与えると共に、優れた外交政策を推進していることは、世界の国々の衆目の一致するところだと思います。

モンゴルと日本、そして、両国の近隣国であるロシア、中国、韓国、北朝鮮は、ともに互いに影響しあいながら長い歴史を持つ友好関係を築き上げてきました。この歴史は、一時的に反目しあうことがあっても、長い目で見れば、互いに発展するための糧となり、礎となっています。

そして、今、このウランバートルに北東アジア各国の有識者が集い、共通の文化や伝統を持つ北東アジア地域として、新たな協力関係を模索するための熱心な意見交換が行われました。

21世紀に入り、グローバル化が進むと同時にIT(情報技術)が全ての人々の日常生活に不可分なものとなり、かつてない便利さと社会活動における質的変化をもたらしています。しかしその反面、環境汚染、地球の温暖化、鳥インフルエンザなどの新しい感染症、難民の問題などが国境を越えた問題が世界中で起こっています。

安全保障の面においては、相変わらずテロリズムの脅威が世界を覆い、核兵器を伴う軍備拡張が複雑化し、拡大しています。

これらは、一国の力、一国の努力だけで解決できる問題ではありません。

北東アジアにおいては、朝鮮半島の混乱が、私たちを少なからず不安にさせています。北東アジアの平和と安全保障を確立していくために、朝鮮半島の安定は極めて重要です。

写真:スピーチする日本財団の笹川陽平会長

 

北朝鮮の核開発問題を六か国協議の枠組みで、対話により、非核化の道を築いたことに、一応の安堵を感じておりますが、本質的な解決への道はまだまだ遠いという実感です。

世界、そして北東アジアに存在する問題は、地域内の各国が総合的パートナーシップを組み地域協力メカニズムを確立し、対処しなければ改善することはできないと考えます。

しかし、今回のウランバートルフォーラムの議論でも何人もの方がご指摘になったように、北東アジアの政治・経済協力の地域メカニズムは未だ確立されておらず、その創設が間違いなく求められています。

第二次世界大戦と冷戦の残滓が現在においても厳然と存在し続けるこの地域において、現在、多国間の枠組みによる具体的な地域協力メカニズムを創設することが重要です。

モンゴルは北東アジアの安全保障の課題である朝鮮半島問題では、韓国、北朝鮮とそれぞれ良好な関係を持っている国として、注目されています。そして、モンゴルは、北東アジアの安全保障の仲介者として、地域協力メカニズムの創設にあたり重要な役割を果たすことが期待されています。

私たち日本財団は、早くからモンゴルの北東アジアでの役割に注目し、多角的に、また、長期的な展望にたってモンゴルの自立と国際社会における共存の方策を支援してきました。

そのためには、モンゴルの次世代を背負う優秀な若者の養成は不可欠であると考え、モンゴル・経営アカデミーに100万米ドルのヤングリーダー奨学基金を設置し人材育成を支援しています。若く優秀な人材が核となり地域協力メカニズムの創設が進められることだろうと期待しています。

また、最近、モンゴルは伝統医療の有用性を、WHOを通じて世界に働きかけることに成功しました。明日、WHOと日本財団の主催による伝統医療国際会議がウランバートルで開催されます。

実は、私たち日本財団が、呼び水となるような、日本の『置き薬』と呼ばれる個別の家庭に医薬品を配備する伝統的な医療手法をモンゴルの遊牧民の暮らしに導入することを支援しました。

配備されるのは、モンゴルの伝統医薬品です。日本という類似した文化を持つ国の協力をばねとして、モンゴル人自身の取組みにより、モンゴルの伝統医療を復興し、国民の健康維持に大きな前進をしました。

今回のウランバートルフォーラムの提案からも同様に、隣国同士の協力により、あらたな安全保障の枠組みを構築することで、自国の発展も促進されることになると思います。皆様の努力が実を結び、新たな地域協力メカニズムを創設する動きとなっていくことが期待されます。

国と国との関係は、一朝一夕に作れるものではありません。私は、人と人とのつながりがあってこそ、平和で豊な国際社会を創ることができるのだと思います。私ども日本財団の使命は、人を育て、互いに助け合う人と人との関係をつくることにあります。

このフォーラムに参加されたみな様が、熱心な議論をきっかけとして、知己の関係を築かれたことと確信しております。

北東アジアの国々、北東アジアで暮らす人々が、互いに尊敬し、認め合いながら、更なる平和と繁栄に向け協力する糸口を見出したと感じたことが、このフォーラムに参加した私の収穫であり、次回の会合で具体的な進展があることを願い、私の挨拶とさせていただきます。

ご清聴ありがとうございました。