グローバル・アピール2008 宣言式典 〜ハンセン病に対するスティグマ(社会的烙印)と差別をなくすために〜

英国・ロンドン

 皆様、本日のグローバル・アピール2008発表式典にご参加くださり、ありがとうございます。

 このグローバル・アピールを呼びかけた者として、このアピールにご賛同くださったNGOとその代表の皆様に深い感謝の意を表したいと思います。また、この素晴らしい会場の使用をお許しくださった王立医学協会にも御礼申し上げます。

 ハンセン病患者や回復者、及びその家族への差別をなくすための本アピールは、2006年から3回目を数えます。いずれも世界ハンセン病の日 – 今年は昨日がそうでした – あるいはその前後に、開催してまいりました。なぜ3回もアピールを続けて行うことが必要なのか、皆様は不思議に思われるかもしれません。

 ハンセン病は世界で最も古い病気のひとつです。そして、その長きに渡る歴史は、根強い差別の歴史でもあります。的確に治療されなければ、ハンセン病は患者に障害をもたらすことがあり、また、その障害がスティグマ(社会的烙印)を生みます。

 これは、歴史上繰り返されてきた事実です。これが負の部分とすると正の部分は、現在ハンセン病が完全に治る病気となったことです。1980年代に新薬が手に入るようになり、現在までに1,600万人の人々が治癒しました。

写真:スピーチする日本財団の笹川陽平会長

 しかし、ハンセン病に係るスティグマは社会に深く根を下ろしています。それは簡単に解消できるものではありません。だからこそ、問題の重要性を強調するために、何度でもアピールすることが必要なのです。

 差別の解消は、医学的にも社会的にも重要なことです。まず、今でも年間25万人ものハンセン病の新患が生まれています。これらのケースの中には、回復不能な障害をともなうものが多くあります。社会的スティグマに阻まれ、医者のところに行かず、治療の遅れる患者が多いためです。こうした事態を許してはなりません。

 第二に、ハンセン病患者は、治癒した後も差別されます。ときに、その外見によって。
例えハンセン病菌が薬で駆逐されていたとしても、何も知らない者にとり、障害は、感染症と同一視されやすいのです。

 また、ときにはハンセン病患者はアウトカーストであり、神に罰せられた存在である、というようなコミュニティの偏見によっても差別されます。ハンセン病であるという汚名は家族にまで影響を及ぼし、彼らの教育、雇用、社会的・経済的向上の機会を奪っています。何も悪いことをしていない善良な人々が、社会に参加する公正な機会を与えられないのです。

 私は、WHOハンセン病制圧大使としての4年間を含め、過去40年ほどハンセン病との闘いに関わってきました。その間に、医療的には目覚しい進歩がありました。WHOの定めるハンセン病制圧目標を達成していない国は、もはや4カ国を残すのみです。

 これらの国々も、近々制圧を達成するでしょう。行く先々で、私は同じメッセージを発信しています。ハンセン病は治る病気です、薬は無料で手に入ります、差別は許されません。しかし、私はどの場所においても、ハンセン病回復者が通常の生活を営むことを許されていない社会の壁を感じています。時とともに、私は医療支援活動だけでは不十分であると気づきました。

 病気の社会的問題に立ち向かうためには、社会のハンセン病に対する認識を変えなくてはなりません。一つの方法として、私は国連人権理事会に対する働きかけを行っています。理事会に、ハンセン病患者や回復者、その家族に対する差別解消のための原則やガイドラインを策定してもらうことを目指しています。最終的には、これが国連総会で決議され、加入国に適用されることを望んでおります。

 

写真:グローバル・アピール2008発表式典の会場の様子

 もうひとつの方法は、新しく設立したササカワ・インド・ハンセン病財団の主導によって実施される予定です。この財団は、奨学金、技能研修、マイクロファイナンスを通したハンセン病回復者のエンパワーメントと、彼ら回復者が十分能力のある人材であるという社会側の認識形成を促す目的で作られました。

 そしてこの、グローバル・アピールという取り組みです。ニューデリーで発表した最初のグローバル・アピールは、ジミー・カーター元米国大統領、ダライ・ラマ14世、デスモンド・ツツ大司教、といった世界の指導者から賛同の署名をいただきました。

 2回目のグローバル・アピールはマニラで発表され、本日我々とともにおりますアメリカのホセ・ラミレス氏を含む13カ国のハンセン病回復者の指導者の方々から賛同の署名をいただきました。

 さらに今年、グローバル・アピール2008の発表に際し、世界の主要な人権NGOにご参加いただけましたことを、誠に嬉しく思っております。この問題の重要性を即座に認識してくださった皆さんの力強い支持心から御礼申し上げます。このようなご協力により、我々は必ずや目的を達成できると私は信じております。

 2008年は世界人権宣言から60周年の記念の年です。ハンセン病の患者・回復者たち、そしてすべての人類の尊厳のために、今年を大いなる飛躍の年としていかねばなりません。

 

グローバル・アピールの画像。左からグローバルアピール2008(英語版)、グローバルアピール2007、グローバルアピール2006

動画「ハンセン病と人権に関するグローバル・アピール2008 / Global Appeal 2008」のワンシーン。画面に「ハンセン病回復者 アメー・ジュマ・マホメドくん(13歳)」の文字。
外部サイトハンセン病と人権に関するグローバル・アピール2008 / Global Appeal 2008