第13回フォーラム2000会議 特別パネルディスカッション 〜アジアにおける現在の政治と安全保障の課題〜
本年、アジアに焦点を当てたパネルを開催することができ大変うれしく思っております。
過去20年間にわたり、私は日本財団の職務を通じて世界中を訪れました。その間に私を取り巻く世界が変化するのを目の当たりにしてきました。そしてこの変化を、アジアで最も強く感じてまいりました。
今日のアジアは20年前のアジアとは異なります。アジア地域は、世界の先進経済諸国の3倍の驚異的な勢いで発展しています。世界の多くの国が金融危機からの回復に未だに喘いでいる中、アジアは驚くべき回復を示し、不況からいち早く抜け出そうとしています。
アジア地域の成長はアジアに住む人々のみならず、世界中の人々に大きな恩恵をもたらしてきました。この地域の重要性は、今後さらに拡大すると確信しています。アジアのバイタリティ、柔軟性、大きな将来性は、アジアの多様性がゆえにあると考えています。アジアには世界の人口の半分が居住しています。またアジアは、世界のどの地域よりも多様な言語を擁しています。様々な信仰、文化、伝統の宝庫でもあります。さらに、驚くほどの多様な生体システムや素晴らしい景観をも持ち合わせます。
このダイナミックな地域の将来性には、限りがないようにみえます。しかし、アジアは大きな問題とも対峙しています。アジアの急速な変容は、都市化、所得格差、環境悪化といった新しい問題をもたらしました。貧困、感染症、人権といった旧来の問題も依然として根強く存在しています。
これらの多くは、国家の境界線の中だけでは、効果的な対応ができません。国境から始まり、国家、言語、文化、政治、制度、環境などあらゆるものを隔てている境界線を議論する必要があります。
アジア最大の財産ともいえる多様性は、時として問題の複雑化や拡大につながることもあります。
日本財団は各国政府、地域的機関、地元NGO、教育機関などと協力して、こうした問題に取り組んできました。たとえば、私たちは視覚障害者、聴覚障害者や身体障害者の人たちのための地域センターを創設したり、マラッカ海峡の安全航行を目指す地域協力を支援したり、すべての人にヘルスケアが行き渡るために伝統医療を活用する活動を進めています。
このセッションのパネリストのみなさんは、アジアの将来におって極めて重要な、多様な問題に対して、それぞれの方法で取り組んでおられます。
未来に眼を向ける時、アジアにとって重要な問題とは、世界にとって重要な問題でもあると信じています。アジアが直面する問題への対応から得る教訓は、必ずや世界の他の地域に対しても教訓となると信じているからです。
今後アジアを語らずに、未来についての意味のある議論はできないと私は確信しています。従いまして、今後このフォーラム2000へのアジアからの参加者が増え続けることを期待しています。
実り多いセッションとなることを心から期待しております。私の話はこれくらいにして、マイクを司会者にお渡しいたします。
ご清聴ありがとうございました。
以上