第8回アジア海上保安機関長官級会合

インド・ニューデリー

インド国防省 シュリ・エーケー・アントニー大臣、インド海軍 ディ・ケー・ジョシー司令官、インド・コースト・ガード ラジェンドラ・シン副長官、アジア地域の海上保安機関の代表者の方々、聴衆の皆さま、アジア各国の海上保安機関の代表者が、広大なアジア海域の海上保安について話し合うため、この場にお集まりいただいたことに敬意を表します。第8回の会合は、こちらインド・ニューデリーにて開催されますが、インド政府、インド国防省、インド・コースト・ガードの温かなご配慮と多大なご尽力に対し、感謝の意を表します。

そして、突然の体調不良により、この場にお越しいただけなかったエム・ピー・ムラリダラン、インド・コースト・ガード長官にお見舞い申し上げます。今回の会合に際しての、長官の卓越したリーダシップに敬意を表すとともに、一日も早いご快復を心より祈ります。

日本財団は、第1回会合から絶えずこの会合をサポートし、見守り続けてきました。会合が始まった当時、多国間にまたがる海の問題が国際社会から注目を浴びつつありました。本会合は、海上保安機関のさらなる協力体制の構築が求められていたという社会的背景に加えて、「国家や人類、そして海を守りたい」という皆さまの志と使命感に心を動かされてサポートし始めたものです。そのため、私にとっても思い入れがあり、ぜひ皆さまの志と使命感が具体的な成果として表れればと思っております。

第1回会合のメインテーマは海賊問題でした。マラッカ・シンガポール海峡の周辺国を中心に活発な議論がなされたと記憶しております。当時はアジア各国にとって、海賊という共通の課題があり、結束しやすい状況であったと思います。アロンドラ・レインボー号事件では、マラッカ・シンガポール海峡で起きた海上犯罪に対して、周辺国との連携の下、最終的にインド・コースト・ガードの皆さまの協力を得て、解決に至りました。これは、海賊対策において、極めてうまくいった連携だったと思います。

今日では、海洋、とりわけ広大な面積を持つアジアの海がますます重要になっております。たとえば、アジア地域の経済が発展するにつれて、海上輸送が増加しております。また、アジアの人口が増加するにつれて、魚などの漁業資源のニーズが高まっております。このように、私たちの生活は海との関係を、日々深めているように感じます。

それに伴い、アジアの海を守る海上保安機関に活躍していただく場面も増えております。かつてとは比べものにならないほど広い範囲で活動する海賊、海上テロリズム、限りある資源を無作法に搾取する違法漁業、有害危険物質を含んだ大規模な海洋環境汚染、甚大な被害をもたらす津波・洪水・台風等の自然災害など、一国だけでは解決できないような複雑な問題も増えてきました。

これら複雑な問題に直面し、もはやこれまでの協力体制や連携活動だけでは有効な解決策とはいえない状況になってきたのかもしれません。また、現在の海上保安機関が取り組むべき問題が多岐にわたっているため、共通の課題が見出されにくくなっているのかもしれません。

このような状況の下、私たち日本財団がこの長官級会合に期待したいことは、ここにお集まりの皆さまが、具体的な成果を定め、足並みを揃えて複雑な問題に取り組めるように話し合っていただくことです。今回の会合では、前回のベトナム会合から本格的に始めた、今後の取り組みに関する議論をさらに発展させ、実りある会合にしていただくことを期待しております。その結果、数年後に皆さまの活躍をお目にかかれることを期待しております。

日本財団は、これまで本会合の開催を支援してきましたが、皆さまの命がけの取り組みを後押しできるよう、今後もサポートしていきたいと思います。さらに、私たちは、これまで世界中の大学や研究機関と協力して海上保安機関の人材育成プログラムを実践してきましたが、今後、さらに充実させ、人材育成の側面からも、皆さまの活動を支えていきたいと考えております。

皆さまとこれまで以上に緊密に協力をすることで、アジアの豊かな海を次世代へ引き継げると信じております。

ご清聴ありがとうございました。