第4回西アジア・北アフリカフォーラム

ヨルダン・アンマン

ハッサン・ビン・タラル殿下、ご出席のみなさま、今年で4回目を迎える西アジア・北アフリカ(West Asia North Africa:WANA)フォーラムにお招きいただき、こうしてみなさまの前でご挨拶させていただけることを大変光栄に思います。
そして、このフォーラムのホストであるハッサン殿下をはじめとする国際上級諮問委員会のメンバーのみなさまのご尽力に心より敬意を表します。またそれぞれの国や地域の重要な課題に対し、日々研究を進めてくださっているワーキンググループのみなさまにも改めて感謝を申し上げます。

昨年、日本は未曾有の大震災に見舞われ、世界各国から多大なご支援をいただきました。それから1年以上が経過した今も、世界中のみなさまが日本や被災した方たちのことを気にかけてくださっています。このようなみなさまの温かい気持ちに支えられ、日本は今、復興への道を着実に歩んでいます。この場をお借りして、心より御礼申し上げます。

さて、WANA地域に目を向けてみますと、ここが世界でも極めて重要な地域であるということに異論はないでしょう。特に私は、ハッサン殿下と親交を深めるにつれ、この地域への関心をますます強めるようになりました。ハッサン殿下と初めてお会いしたのは15年前、私が会長を務める日本財団が主催するフォーラム2000という会議の場でした。以来、殿下との長年にわたる交流の中で、WANA地域の発展に対する熱い想いを幾度となく伺い、その確かなビジョン、情熱、さらに揺らぐことのない志に感銘を受けました。
そして殿下から「この地域が抱える問題の解決に向けて議論する場をつくりたい」というご提案があった時、私はその考えに強く共感しました。なぜなら、安全保障、環境、水などの問題は一国だけで解決することは困難ですが、国境を越えて共通の課題として各国が取り組めるようになれば、解決への道が見出せるかもしれないと思っていたからです。そして2009年、本当に多くの方々の協力もあり、このWANAフォーラムが開催される運びとなりました。

昨年のフォーラムでは、様々な課題について活発に議論がなされましたが、すべての課題において、“アイデンティティ”は重要な鍵を握る概念であると改めて認識されました。今年のフォーラムのテーマに“アイデンティティ”が取りあげられたことは、WANA地域で議論を進める上では欠かせない重要な一歩になったと確信しています。アイデンティティという概念は、人種、国家、宗教などが重層的に絡み合い、しかも、時代と共に変化するという流動的な側面を持っています。このことを踏まえてWANA地域が共通の問題に立ち向かい、解決の策を模索していくことが重要です。そして、それこそがWANAフォーラムの果たすべき役割であると私は考えます。

WANA地域において、様々な分野のリーダー的立場にあるみなさんが、個人や自国の利益にとらわれず、この地域全体のより良い未来を追及するために、忌憚なく議論することができるこの機会は、非常にユニークで意義深いものです。

特に昨今、この地域では様々な変化が起こっています。なかには、対立に向かう変化もあるかもしれません。しかし、たとえこのような変化に富んだ時代においても、WANA地域の発展を志すみなさまのような方々が各国から集まり、対話を深めることができる本フォーラムは、この地域における潤滑油の役割を果たしていくことができるでしょう。

私たち日本人は、昨年3月11日に起きた大震災で、相互依存の社会の中に生きているということを改めて学びました。それぞれに住む国や地域が違うがゆえに、私たちは異なるアイデンティティをもっていますが、真に困難に直面した時には、その違いを越えて、互いに手を差し伸べ合うことができるのです。

これからの2日間のワーキンググループでは、これまでと変わらず、活発な議論がされることを期待しています。私もWANAフォーラムの一員であることを心から誇りに思うとともに、同じ志をもった人々の集いであるこのフォーラムが、今後、さらに発展していくことを祈念いたします。