日英グローバル・セミナー2013「戦略的パートナーシップの構築に向けて」

英国・ロンドン

この度、私ども日本財団は、チャタムハウス、グレイトブリテン・ササカワ財団とともに日英グローバル・セミナーを開催できることを大変嬉しく思います。

また、このチャタムハウスとの最初のセミナーにヨーロッパ、米国、そして日本から多くの参加者の皆さまにお集まりいただき、心より感謝申し上げます。

皆さまご存知のように、今年は日英両国の間で外交関係がはじまってから400年、また長州ファイブ(5人のサムライ)が訪英してから150年の節目の年です。さらに、今年は、英国の海軍士官が日本にサッカーを紹介してから140年の記念すべき年でもあります。最近では、日本のナショナルチームから4人の選手(4人のサムライ)が英国のプレミアリーグで活躍しています。私自身“サムライ精神”を大切にしているので、若い選手の活躍を大変誇りに思います。

さて、英国と日本は良好な関係を築いてまいりました。これは両国間にビジネス、科学技術、文化を通じた交流という土台があるからだと思います。二国間の様々なイニシアチブがある中、私ども日本財団は1985年にグレイトブリテン・ササカワ財団を設立しました。当財団は、日英両国の相互理解と良好な関係の構築を目的とし、その活動内容は、芸術文化、科学技術、スポーツを含めた文化交流や人材育成など多岐にわたっています。

さらに、最近、日本財団とグレイトブリテン・ササカワ財団は、若手研究者の日本研究促進を目指し、彼らが活躍できる環境を整えるために、英国の12大学に講師ポストを設置しました。また、イースト・アングリア大学やロンドン大学では、文学や学術論文をはじめとする日本語文献の翻訳者養成研修も実施しています。このような次世代の日本研究専門家の育成活動等を通じて、今後も両国の関係がより深まっていくことを願っています。

一方、世界に目を向けてみると、ここ30年の間に、世界情勢は劇的な変化を遂げました。例えば、開発途上国といわれていた多くの国々は、これまでにない経済成長と社会発展を果たしています。そして、世界の様々な場所で新たなパワー・センターが生まれ、世界秩序は多極化しています。グローバルな成長は多くの恩恵をもたらし、新たな機会が生まれましたが、同時に難しい課題も出てきました。経済面での相互依存や安全保障、貧富の格差の拡大などは容易に解決することができない課題です。

日英両政府は、これまでも戦略的なパートナーシップを組み、グローバルな課題に取り組んできました。具体的には、アフガニスタンの安全保障、中東和平、アフリカのODA(政府開発援助)など幅広い分野で協力・協調してきました。このようなイニシアチブは必要かつ重要ですが、さらに民間のアクターが加わることにより、日英関係は新しい次元へと昇華していくことができると考えます。

私は民間セクターの持つ強みは、柔軟性と革新的な発想力であると考えています。様々なグローバルな課題に対して、既存の枠組みにとらわれない革新的な解決策を提案できることこそが、日英グローバル・セミナーが他の会議とは異なる特徴であると考えています。

5年間の最初の年である、今回のセミナーでは、私たちのこれまでの知識や経験を駆使して、日英両国がアジアとヨーロッパが直面するグローバルな課題を明らかにし、さらに知識を深めることを目指します。具体的には、経済、安全保障、エネルギー、環境という4つのテーマを取り上げます。毎年開催されるセミナーに加えて、各テーマについて専門的に議論するワーキンググループが、グローバルな課題の解決に貢献できる実践的な成果をもたらすことを期待しています。

最後に、あらためて、チャタムハウスとグレイトブリテン・ササカワ財団の皆さまに感謝するとともに、このセミナーの成功を心より祈念いたします。