笹川防災賞
はじめに、笹川防災賞の運営に多大なご尽力をいただいているマルガレタ・ワールストロム国連国際防災戦略事務局(UNSIDR)特別代表に心より感謝申し上げます。また、フランクリン・マクドナルド氏、ムラット・バラマー氏、ロウィーナ・ヘイ氏、サウムラ・ティオロング氏をはじめ、受賞者の選考のためにご協力をくださった皆さま、そして、授賞式の準備をしてくださったスタッフの皆さまにあらためて御礼申し上げます。
地震、津波、サイクロン、台風、洪水などの自然災害は世界各地で頻繁に発生しており、人々の生活に被害をもたらすことがあります。
残念ながら、我々は自然をコントロールすることはできませんし、自然災害の発生自体を防ぐことはできません。
しかし、我々は自然災害に備え、自然災害のリスクを軽減し、人々の生命と財産を守ることはできます。
笹川防災賞は自然災害のリスクを軽減するための取組みを実施している団体及び個人の活動を促進することを目的に27年前創設されました。
本年のテーマは”Acting As One”です。本日は、私の経験も踏まえて、このテーマの重要性について皆さまにお話ししたいと思います。
2年前マグニチュード9.0の地震が日本の東北地方を襲いました。ある町には、非常に大きな津波が押し寄せ、備えてあった防波堤をいとも簡単に越えていきました。この大津波は、一瞬にして人や家を飲み込み、集落全体が跡形もなくなるという甚大な被害をもたらしました。
地震による津波からの避難において、高齢者や障害者は、より高い災害被害の危険にさらされました。例えば、聴覚障害者は、音声による警報や避難情報が聞こえず、逃げ遅れることもありました。その結果、障害者の死亡率が健常者のそれと比較して2倍以上であったところもありました。
日本財団は、こうした災害被害のリスクを軽減するために、昨年「国連専門家会議」を開催しました。会議では、世界12カ国から集まった、NGO、大学、企業、テレビ局などからの当事者を含む様々な専門家が協力し、東日本大震災の被災経験に基づき、特に情報アクセシビリティーを中心とした災害時対応に関する提言を作成しました。この提言は、今後災害が発生した際に、行政や企業、NPOが一つになって災害被害のリスク軽減に向けた取組みの参考として役立てられることが期待されています。
また、災害発生後の避難所生活においても高齢者や障害者は、一層厳しい環境におかれています。彼らは、障害を理由に避難所を退去するように言われたり、周囲への気兼ねや遠慮、ストレスから体調を崩してしまったりすることもありました。だからこそ、特別な支援が必要な方々の災害被害を軽減するために、地域住民の方は勿論のこと、企業やNGOなど様々な関係者が協力できるよう、平時から準備しておく必要があります。
日本財団は、特別なニーズに対応するため、企業やNGO、地域の関係者と連携し、被災者が生活を送る避難所等の運営の訓練を行い、高齢者や障害者のリスクを軽減するように努めております。2年前の震災では、残念ながら、こうした特別な支援を必要とする方々への対策が十分組み込まれておりませんでした。
しかし、これを教訓に当事者も含めた多くの関係者が積極的に関わることで、効果的に災害被害軽減に結びつく対策が生まれてくるでしょう。
これらは高齢者や障害者などの特別な支援を必要とする人々の例ですが、多くの関係者が一つになり”Acting As One”を念頭に災害に向けた準備・協力体制、コミュニティーを平時から構築しておくことが、災害被害軽減に大きな効果をもたらすと私は考えています。
自然災害のリスクを軽減するために取り組んできた団体個人、そして”Acting As One”の為に尽力してきた全ての団体・個人にあらためて敬意を表します。