第5回アフリカ開発会議(TICAD V) 〜民間との対話〜

日本・横浜

本日はNGOの立場からお話をする機会をいただきありがとうございます。アフリカの持続可能な発展という大きな目標を達成するためには、様々な協力の方法があると思いますが、本日は一つの例として、私たちが行ってきた農業という側面からの支援についてお話ししたいと思います。

日本財団は、1984年に東アフリカで起こった未曾有の大飢饉の際に緊急食糧援助を行いました。これを契機に、笹川アフリカ協会とともに、これまで25年以上にわたり、サブサハラ地域の15カ国で、ササカワ・グローバル2000(SG2000)という農産物増産指導プロジェクトを開始しました。当初、私たちはアフリカの子どもたちが空腹のまま眠りにつくことがないようにという強い想いを胸に、信念と情熱を持って取り組みを開始しました。以来、各国の農業省などと連携し、実際に農民の畑に赴き、食糧生産のための技術指導をしてまいりました。同時に、私たちはアフリカの20大学と協力して、4000人以上の農業普及員を養成しました。多くの方々のご協力により、アフリカの農民自らの手による食糧増産において、大きな実績をあげることができました。

しかし、食糧増産が軌道に乗っても、農民たちの生活水準を向上させるためには、単に食糧増産を続けるだけでは不十分であり、彼らの所得創出をすることが必要であることに気付きました。そこで、私たちは次のフェーズに移行し、アフリカに合った農業ビジネスモデルを構築することを目指しました。具体的には、団結した農業組合の設立、生産した農作物をより高く販売するための保存・加工技術の向上、官民連携の強化など農民が積極的にビジネスの機会を得るための支援をしています。
その結果、農民たちは安定的な現金収入を得られるようになり、農地の拡大、肥料や機械への投資が可能となりました。

このように、SG2000の現場で起こったことは、まさに農業によるソーシャル・イノベーションです。自給自足の農業から食糧増産という段階を経て、近年は、市場のニーズを捉えた商業的な農業へと新たなステージへと着実に進化することができたのも、日本政府、外国政府、国際機関、民間企業など多くのパートナーの皆さまの多大なるご協力のお蔭です。

農業によるソーシャル・イノベーションともいうべきこの取り組みをさらに発展させるためには、政府や企業の皆さまとの相互協力を密にすることが必要不可欠であると私は考えています。質の高い農業機器の確保、物流を確保するための道路などのインフラ整備、様々な側面において皆さま方のお力が必要です。

今後も政府や企業の皆さまとの連携を一層強化し、農業ビジネスモデルの確立を通じて、アフリカの発展のために尽力していきたいと思います。