ミャンマー障害者芸術祭

ミャンマー・ヤンゴン

皆さま、本日は、ミャンマー障害者芸術祭にようこそお越しくださいました。
これから3日間、皆さんはこれまで経験したことのないような新たな気付きを得ることでしょう。この芸術祭では、目の見えない画家、耳が聞こえない太鼓演奏者、そして車いすのダンサーがスポットライトを浴びながら、素晴らしいパフォーマンスを披露します。皆さんはこの不可能に思えるようなことをなぜ彼らが成し遂げることができたのか不思議に思うかもしれません。彼らが本当にそのようなパフォーマンスをできるのかと疑問に思うかもしれませんが、彼らは見事に成し遂げてくれるでしょう。それは、彼らが自らの限界を決めず、障害という困難に立ち向かうための勇気と信念を兼ね備えているからです。

これまで、障害者は、多くの国々において、支援や施しを受ける側と決めつけられてきました。彼らに可能性が有る無しに関わらず、障害があるというだけで、社会は自動的に能力の限界を決めつけ、学校教育や職業訓練、就職といった機会を諦めるということが暗黙とされてきました。

しかし、ここ何年かの間に、障害者による団体や障害者のための団体が世界中で設立されてきました。例えば、日本財団はアジアにおいて、自らの限界を超えて挑戦しようとするような視覚、聴覚、身体などの様々な障害者団体を支援してきました。私たちは、いくつものプロジェクトを通じて、障害者が知識やスキルを習得したりするだけではなく、彼らが自信を持って自分のことは自分で決めたり、自分の可能性を発揮することが何よりも重要であることをあらためて認識しました。

日本財団は、ここミャンマーにおいて、3人の若い障害者によって2011年に設立された「ミャンマー自立生活協会」(Myanmar Independent Living Initiative:MILI)というNGOを支援しています。MILIの成功はチャリティではなく、彼らの勇気と信念によってもたらされたものです。彼らにとって転機となったのは、日本のリーダーシップトレーニングに参加した経験です。その時、彼らは、障害者も適切な配慮を受ければ、自立した生活を送ることができるということを実感しました。そして、学校教育や職業訓練、就職における平等な機会が与えられれば、障害者も与えられる側から与える側になれるということを確信したのです。MILIの若いリーダーは、他の障害者の可能性を見出し、自らが限界と諦めていた壁を乗り越える手助けをすることこそ、自分たちの使命であると目覚めました。そして、日本財団は彼らの活動を支えてきました。

MILIは現在、ミャンマー国内に支部をつくるために、新たな活動を担う障害者のトレーニングに取り組んでいます。また、彼らは企業や様々な分野の組織に対する周知啓発を通じて、障害者に対して、新たな認識を持ってもらうためのワークショップを開催しています。さらに、MILIはこの芸術祭を通じて、ミャンマーはもちろん、世界の障害者に働きかけようとしています。

日本財団はこのような芸術祭をすでにラオス、ベトナム、カンボジアで開催してきました。私たちはこの芸術祭を通じて、障害者が自信を持ち、障害を持った子供たちが希望を持ち、さらには社会の障害者に対する認識が変わっていくことを期待しています。

来年、ミャンマーは東南アジア諸国連合(ASEAN)サミットのホスト国を務めます。そのASEANサミットの公式イベントとして、ASEAN各国から障害のある芸術家たちが一堂に会する芸術祭が開催され、これに日本財団が支援をさせていただくことになっています。私はASEANサミットでの障害者芸術祭が、ASEAN諸国の人々が障害者の才能をきちんと認識するための貴重な機会となると確信しています。

皆さんは、これから3日間の芸術祭でミャンマーの障害者の隠れた才能に触れ、驚かれることでしょう。私はこの芸術祭が来年のASEANサミットに向けての布石となり、ASEAN地域の指導者に衝撃を与えてくれることを期待しています。
さて、本日は、日本からもろうあ太鼓のグループが駆けつけています。彼らは熱気溢れるパワフルな演奏を披露してくれることでしょう。

私はこの3日間の芸術祭が、私たちが互いの多様性を受入れ、インクルーシブ、且つバリアフリーな社会の実現を目指す機会になると信じています。そして、老若男女に加えて、健常者も障害者も、誰もが自らの可能性を発揮し、社会の中で平等に機会を得られるようになることを期待しています。そのために、ミャンマー政府が障害者の声に耳を傾け、施策に反映しようとしていることは非常に素晴らしいスタートであると私は思います。

多くの障害者団体の声が反映され、皆が平等に参画できる、多様性に富んだ社会の実現を目指そうという認識が、社会の中に広がっていくことを願っています。