第3回アジア手話言語学・ろう教育国際会議

香港

ベンジャミン・ワー副学長、グラディス・タン教授、ジェイムズ・ウッドワード教授、会場の皆さま、おはようございます。
本日は第3回アジア手話言語学・ろう教育国際会議にご参集くださり、ありがとうございます。

日本財団は、障害者が健常者と均等な社会参画の機会を得られる社会を目指すことを基本的な理念として活動しています。私たちはこの理念を実現するため様々な事業を行っております。その中でも、聴覚障害者支援事業は最も重要な柱として位置づけており、皆さまと共に活動できることを誇りに思っております。

本事業が開始された2002年当時、ろう者の社会参画の機会は非常に限られていました。多くの国で手話は言語としてみなされておらず、ろう者は聴者本位の社会で生活を送ることを余儀なくされていました。そのため、ろう者の中に優秀な人材が沢山いるにも関わらず、ろう者がその才能を開花させることがほとんど出来ないというのが実情でした。このような状況を鑑み、手話が言語であると認識される必要性があることから、日本財団は手話言語学の研究および手話を重視した教育の推進に重点をおいて支援を実施しております。

日本財団はアジアで最高峰のろう教育大学である、ここ香港中文大学と協力し、ろう者と聴者を対象とした手話言語学の研究や手話教授法のトレーニングを提供しております。また、学生は手話辞書や手話教員・通訳者向けの教材の作成も行っております。彼らは卒業後、母国に戻り、教員や研究者として手話言語学の普及を担っていく予定です。グラディス・タン教授やジェイムズ・ウッドワード教授のご協力のもと、事業開始から10年が経ち様々な成果が出ていることは大変喜ばしいことであり、関係者の皆さまにあらためて感謝申し上げます。

しかし、これらの活動が本当の意味で結実をみるためには、さらなる努力が必要です。私たちは、多くの人に、ろう者にとって手話が大切なコミュニケーション手段であるということを伝えていかなくてはなりません。さらに、言語は文化の基礎であるという考えからも、ろう文化にとって、手話は重要なバックボーンであるということを十分に認識してもらえるよう、一層の努力をする必要があります。

この会議では専門的な知見を深化させるだけでなく、多くの人にろう者にとっての手話の意義や重要性を理解してもらえるよう、広く啓発していく方法も考えていただきたいと思っております。

ろう者が手話で学ぶ環境を整えると同時に、多くの人が手話への理解を深めることが大切です。そうすることで、手話がより社会に受け入れられろう者が健常者と同様に社会参画することが可能になるのです。

ろう者の平等な社会参画の実現に向けて共に力を合わせていきましょう。