世界保健機関(WHO)東地中海地域 ハンセン病プログラム・マネージャー会議

モロッコ・ラバト

各国保健省プログラム・マネージャーの皆さま、WHO関係者の皆さま、そして、ハンセン病問題に取り組む関係者の皆さまのご尽力にあらためて感謝申し上げます。

私は40年以上にわたり、ハンセン病制圧活動に取り組んでまいりましたが、ここ20年の公衆衛生上のハンセン病制圧における世界的な改善には目を見張るものがあります。WHOが1991年に「患者登録数が人口1万人当たり1人未満となること」という明確な目標を掲げて以来、各国は、目標達成のために綿密な計画を立て、これに沿って関係者の力を結集し、ハンセン病の制圧に向けて尽力されました。

言うまでもなく、ここWHO東地中海地域事務所(Regional Office for the Eastern Mediterranean:EMRO)もハンセン病制圧に向けて多大な貢献をしてくださいました。モロッコでは、1980年以降、ハンセン病患者は指定病院ではなく、地元の診療所で治療を受けられるようになり、また、新規患者発見のための家庭訪問が実施されるようになったと聞いています。患者を減らすだけではなく、早期発見・早期治療のための様々な新規プログラムを政策の中に組み込んでくださっているモロッコ保健省の皆さまに感謝申し上げます。また、ハンセン病患者・回復者に寄り添って活動をしてくださっているプログラム・マネージャーの皆さまに御礼申し上げます。

このような成功例は、ハンセン病と闘うすべての国においても多くあることと思います。こうした努力の結果、ハンセン病の制圧は、世界各国で劇的に進展しました。そして今、ハンセン病未制圧国はブラジルを残すのみとなりました。

しかし、目標に向かって懸命に努力をしていた国でさえ、一度、制圧目標を達成してしまうと関係者の意識が低下してしまうことが往々にしてあります。また、ハンセン病に関する予算や人材が減らされ、他の疾病に比べて相対的にハンセン病の優先順位が低下してしまいます。私はこのような状況にならざるを得ないことも理解しております。しかし、そのことにより、関係者がハンセン病との闘いの本質的な意義も低下してしまったと誤解されることを懸念しています。

ハンセン病患者・回復者は病気との苦しい闘いだけではなく、差別という精神的な苦しみを抱えているため、今後も新規患者を早期発見・早期治療をしていくことが重要だと考えています。ハンセン病制圧活動の主な目的は、感染の予防、患者の発見及び治療、障害の予防だけではなく、差別との闘いという重要な目的があります。

ご存知の通り、ハンセン病は様々な複雑な問題が絡み合っています。多くの国々で、ハンセン病患者・回復者は病気だけではなく、スティグマや差別に苦しんでいます。私は、長年にわたるハンセン病制圧活動を通じて、声をあげることでさらなる差別を受けることを恐れ、沈黙をしたまま、治療を受けることさえできずにいる多くの患者を目の当たりにしてきました。スティグマや差別をなくす多大な努力がされてきたにも関わらず、未だに世界中で多くの人々が一度ハンセン病に罹ると、社会的にも経済的にもコミュニティから孤立をしています。

新規患者の早期発見・早期治療が的確に行われることで、差別を受ける人々の数は減ってきましたが、スティグマが完全になくなるにはまだ時間がかかるでしょう。

プログラム・マネージャーの皆さまは、ハンセン病を取り巻く医療面と社会面の双方の問題の解決に多大な貢献をしてくださっています。皆さまのこれまでのご尽力に敬意を表しますとともに、引き続き、固い決意をもって活動を続けてくださることを期待しています。

私たちは、今、共通の目的の達成を目指し、一人ひとりの責任を再確認するために、ここに集まりました。皆さまの努力と熱意をもって、ハンセン病とそれに伴う差別という苦しみが軽減されていくことを心から願っています。

最後に、パートナーであるWHOの皆さまに感謝を申し上げます。本会議を通じて、参加者の皆さまが有意義な議論をし、互いに学び合い、ここで得た価値あるアイデアや教訓を幅広く共有していただければ幸いです。