ASEAN障害者芸術祭

ミャンマー・ネピドー

皆さま、本日は、ASEAN障害者芸術祭にようこそお越しくださいました。ASEAN各国からお越しの芸術家の皆さまをはじめ、すべての参加者の皆さまを心より歓迎いたします。本芸術祭の名誉総裁には、安倍昭恵首相夫人にご就任いただいています。昭恵夫人は障害者福祉に大変造詣が深く、この芸術祭への参加を大変楽しみにしていらっしゃいました。本日は公務により、ご出席がかなわず大変残念ですが、メッセージが届いておりますので、後ほど代読でご紹介いたします。

さて、本日は国際障害者デーです。この記念すべき重要な日に芸術祭を開催できることを大変嬉しく思います。本日、12月3日は、1992年に国連総会において、障害者の基本的な権利に対する注意を喚起するために国際障害者デーとして制定されました。これまでの歴史の中で、障害者は、高等教育を受けたり、就職をしたりするなどの機会に制限があり、十分な社会参加ができずにいました。彼らは長い間、社会から疎外されてきたため、彼ら自身もこのような状況を当然のことと思ってきました。

しかし、この困難な状況を打開しようとする障害者自身の固い決意と様々なグループによる取り組みによって、障害者が社会参加するための扉が徐々に開き始めました。日本財団は20年以上にわたり、主にアジアの様々な団体と協力し、障害者が社会参加できる機会の提供に力を入れてきました。たとえば、高等教育を受けるための奨学金、手話辞書の作成、障害者に関わる法制度の構築支援、障害者のネットワークの構築などを通じて、障害者の社会参加の促進に貢献できるよう取り組んできました。日本財団はこうした長年の支援活動を通じて、障害者の持つ可能性を実感してきました。同時に、このことを広く社会に訴えることの必要性を感じてきました。

そこで、障害者の持つ可能性やパワーを、直に感じていただきたいと考え、障害者芸術祭を開催するに至りました。昨年はじめてミャンマーで開催した芸術祭では、3日間で延べ4900人の来場者を迎え、ミャンマー国内から選ばれた障害者が舞台芸術や造形芸術を披露しました。目が不自由な芸術家、耳が不自由な太鼓演奏者、そして、車いすのダンサーがスポットライトを浴びながら、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。才能と自信に満ち溢れた彼らの姿は多くの人々に感動を与えてくれました。私も彼らの演技や作品を目の当たりにし、胸が熱くなる思いがしました。

さて、ここで、私は「ミャンマー自立生活協会」(Myanmar Independent Living Initiative:MILI)という3人の障害者によって設立されたNGOについて紹介したいと思います。彼らは、障害者のトレーニングをはじめとする様々な活動を展開しながら、障害者自身が限界と諦めていた壁を乗り越える手助けをすることを使命と課しています。日本財団は2011年以来、MILIとともに障害者のトレーニングプログラムやリーダー養成事業などを実施してきました。昨年のミャンマーでの障害者芸術祭はMILIとミャンマー社会福祉救済復興省の多大なご尽力により、成功裏に終わりました。今年の芸術祭の運営にもMILIが非常に貢献してくれています。

さて、今年も日本から「甲州ろうあ太鼓」のメンバーが駆けつけています。昨年同様、パワフルで感動的な演奏をしてくれることでしょう。

日本財団は、これまでにラオス、ベトナム、カンボジアにおいてもASEAN障害者芸術祭を開催してきました。私はこの芸術祭を通じて、ASEAN各国の障害者が自信を持ち、彼らの家族がその活躍に喜びと誇りを感じていただけることを願っています。近年、ASEAN各国が障害者の権利に関する取り組みを進めていることは大変歓迎すべきことで、今後も継続した取り組みをお願いしたいと思います。各国政府が障害者の声を反映し、障害者が社会参加できる環境を整えるための施策をつくり、社会は互いに多様性を受け入れ、インクルーシブな社会の実現を目指そうという認識が広がることを期待しています。