第6回西アジア・北アフリカフォーラム

ヨルダン・アンマン

本日は、第6回西アジア・北アフリカ(West Asia North Africa:WANA)フォーラムでご挨拶をさせていたただけることを大変光栄に思います。はじめに、このフォーラムのホストであるハッサン殿下、アハマド・マンゴー博士、そしてエリカ・ハーパー博士をはじめとするワーキンググループのメンバーの皆さまのご尽力に心より敬意を表します。また、それぞれの国や地域の重要な課題に対し、日々研究を進めてくださっているワーキンググループの皆さまにあらためて感謝申し上げます。

私は殿下と長年にわたり親交を深める中で、WANA地域の平和で安定的な発展に対する殿下の熱い想いを幾度となく伺い、その確かなビジョン、情熱、揺らぐことのない志に大変感銘を受けてきました。

WANA地域に目を向けてみますと、ここが社会的、経済的、政治的、そして自然環境の側面から見ても、世界の中でも極めて重要な地域の一つであるということを痛感します。しかし、長年の紛争やそれに続く暴動は、人間の安全保障を脅かし、政情不安を煽り、WANA地域に困難な課題をもたらしています。このフォーラムが、WANA地域の成長を妨げ、人々の生活を困難にしている様々な問題に、WANA地域の関係者が取り組むための対話の場を築いてきた経緯は評価すべきことであり、まさに、ハッサン殿下の先見性によるものであると思います。

今年のフォーラムのテーマは「リーガル・エンパワメント」です。世界中の何十億人もの人々が法の保護の外に追いやられていると言われており、WANA地域も例外ではありません。法の支配からの排除は、経済発展や人材育成に弊害をもたらし、さらには、インクルーシブな社会の構築への道を閉ざしてしまうでしょう。

私がこれまで行ってきた人道支援活動においても、このような暗い現実に何度も直面してまいりました。社会や法の保護から置き去りにされた人々。貧困にあえぎ、基本的な権利があることを意識していない人々。そのような人々の中でもハンセン病患者・回復者についてお話ししたいと思います。

ハンセン病は人類の歴史の中で、誤解され、偏見の対象となってきた病気です。治療をしないまま放置しておくと、顔や手足などに目に見える変形が生じることもあるため、人々に恐怖の念を抱かせました。また、神の罰や祟りであるとも思われてきました。そして、多くの国々では、ハンセン病患者が家族から引き離されて孤島や遠隔地に隔離されてきました。

何世紀にもわたり、ハンセン病患者・回復者は法の保護の外で生きることを余儀なくされ、公共サービスにアクセスすることもなく、彼ら自身の人権を意識することもなく、そして、貧困から脱却することもありませんでした。

最近になってようやく、ハンセン病患者・回復者を取り巻く状況が改善されるようになりました。その背景には、国際機関、政府、NGO、そして、ハンセン病回復者自身など様々な関係者の協力がありました。

こうした関係者との取り組みの中でも「リーガル・エンパワメント」がもたらした成果は顕著なものでした。多くの国々でハンセン病に対する差別法が撤廃されました。さらに、世界中の様々な国々において、ハンセン病回復者が自らのための組織を設立し、法の下に平等な権利を持つ市民であると認識されるようになるための活動をしています。彼らの努力により、ハンセン病患者・回復者が公共施設や社会的リソースを利用できるようになるなど具体的な成果へとつながりました。そして、最も重要なのは、ハンセン病患者・回復者が自ら声を上げ、社会に発信できるようになったことです。

しかし、真の意味でのインクルーシブな社会を実現していくためには、多くの人々の意識を変えるという努力を同時に進めていかなければなりません。私は、公正を欠いた行為が長年の慣習と伝統に根深く結びついているという社会を多く見てまいりました。それはあまりにも根深いため、意識の高い人ですら、このような現実に気づいていないのです。本日のフォーラムでは、ぜひ、こうした視点も検討の対象に含めていただければと思います。

WANA地域において、様々な分野のリーダー的立場にある皆さまが、個人や自国の利益に捉われず、この地域全体のより良い未来を追求するために、忌憚なく議論することができるこのような機会は大変意義深いものです。

WANAフォーラムが、今後WANA地域の発展と人々の明るい未来に貢献することを期待しています。