日本財団・国連海事海洋法課 奨学金プログラム 2014年修了生総会

日本・東京

本日はこのように50カ国以上のフェローの皆さまをお迎えし、誠に嬉しく思います。遠路遥々、日本財団にようこそお越しくださいました。

本総会の実現のために、共にご尽力くださいましたミギュエル・セルパ・ソアレス国連事務次長をはじめとした国連の皆さまにも御礼申し上げます。また、大きなお力添えをくださいました外務省の皆さま、フェローの皆さまのために講演をしてくださる先生方にも感謝を申し上げます。

これまで何世紀にもわたって、私たちは無邪気にも世界の海は無限であると信じてきました。人間活動の急速な拡大と発展はまさに今日まで海の恵みを好きなだけ利用することができたからこそ成し遂げられました。

しかし、世界人口が70億人を超えた今、人間活動が地球に与える影響の大きさは過去に類を見ない規模となり、もはや、海が元来持っている強大な回復力をもってしても吸収することが限界に達しつつあります。人類が海を使い切ってしまうという事態も現実味を帯びてきております。

気候変動、海洋の酸性化あるいは海洋汚染は、今すぐにでも対処せねばならない海洋をめぐる地球規模の問題のごく一部です。私たちの海洋への過剰な依存がこのまま続けば、私たちの子どもや孫の時代には海は現在のように豊かな状態ではなくなっているでしょう。一度荒れてしまった海を再び豊かな状態に戻すには長い年月がかかり、場合によっては二度と戻らないかもしれません。

人類は、今すぐ海洋をめぐる様々な問題の解決に全力を尽くさねばなりません。しかし、一つひとつの問題が複雑で、また問題同士が絡み合ってしまっている中、一つの国、一つの機関、一つの分野だけの努力によって解決できることには限りがあります。

日本財団は、海洋の問題に効果的に取り組むためには、人類が海洋に対して負っている共有の責任を受け入れること、人類が皆相互に結びついており、一人ひとりが課題解決の礎であると認識することが大切であると考えています。次世代に海を持続可能な形で引き継ぐためには、今日、私たちの世代が、未来への責任を引き受けるとともに、これまでの取り組みからの教訓を活かさねばならないでしょう。

私たちは、国、機関そして分野を超えた連携を加速させるため、世界的かつ分野横断的なビジョンをもって、既存の枠組みを超えた包括的なネットワークを構築することができる人材を育成することが重要であると考えています。

日本財団の人材育成プログラムの第一の目的は、人々の意識と行動を変えるためにリーダーシップを発揮することができる次世代の海のプロフェッショナルを生み出し、育成することです。それと並行し、海洋の問題に従事する人たちが、それぞれの立場を超えて協力、協働するためのネットワークを作ることを第二の目的としております。これまで、約130カ国の1,000人以上の様々な分野の海洋の専門家を育成し、ネットワークを構築してきましたが、このようなネットワークにおいて生み出されるアイデアが、政策と科学的知見とを結び付け、その結果、豊かで持続可能な海洋のための真に効果的な国際的枠組みや規則につながっていくことを望んでいます。

私たちは、フェローの皆さまこそ、こうしたネットワークや解決策を生み出す能力をもっていると考えています。今後も世界の海のために精力的に働いてくださることを期待しています。本総会の機会を存分に活用し、ネットワークを強化することで、具体的な協力、協働の第一歩としてください。例えば、今回お呼びしている先生方、あるいは他のフェローと活発に議論をし、その成果を国連事務総長への提言としてまとめることもできるかもしれません。

日本財団は、今回の修了生総会が世界の海のための様々な活動の第一歩となることを願い、また、皆さまとこれから共に活動していくことを楽しみにしています。ご臨席の皆さまにおかれましても、ぜひ私たちのフェローのご指導、ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。