第10回アジア海上保安機関長官級会合

日本・東京

アジアの海上保安機関の連携を強化するために、アジア各国からご参集いただいた皆さまを心より歓迎いたします。アジア海上保安機関長官級会合の開催にあたり、一言ご挨拶申し上げます。

日本財団は、1999年、東京ではじめてアジア海賊対策実務者会議を開催しました。その会合は、アジアの海上保安機関が共通の課題である海賊に対し、協力して取り組む可能性を模索するために開催されました。そして、この会議と、それに続く一連の会議がきっかけとなり、2004年の第1回長官級会合を開催いたしました。

第1回長官級会合では、海賊という共通の課題に対し、参加国を中心に活発な議論がなされ、効果的に対処するための基本的な枠組みが提案されました。1999年からこの取り組みをサポートしてきた私たちにとって、この会合が発展し、現在ではアジアの海における協力体制の核となっていることを、大変誇りに思います。

長官級会合は、アジア地域の急速な経済の発展や人口の増加とともに重要性を高めました。その結果、海賊問題以外に、捜索救助、環境保全、自然災害、不法活動、人材育成などにも議論の対象を広げてきました。

近年は、長官級会合の5本の柱で以下のような議論もなされております。限りある資源を搾取する違法漁業者に対し、海上保安機関が協力して対処する必要性。海上交通や輸送量の増加によって引き起こされる海洋環境汚染に対し、地域で協力して対処する必要性。そして、大規模な津波のような自然災害への備えや対応を強化するため、海上保安機関がこれまで以上に協力する必要性です。

しかしながら、長官級会合を通して様々な取り組みがなされているにも関わらず、差し迫った課題は次々に表出しています。今後、どのような課題に直面するか容易に予想できません。しかし、一国だけでは解決できない複雑な課題が増えている現在、今後も長官級会合を通じてアジアの国々が連携する重要性が高まっていくことは確かです。

私は、国同士の連携をより効果的かつ持続的にするには、人と人とのつながりが重要だと思います。その考えの下、日本財団は、世界海事大学(WMU)をはじめとした著名な機関と海の世界の人づくりを行っております。これまでに海上保安官を含め128カ国1,000人以上を育て、人と人とのつながり作りをしてきました。今では、かつて共に勉学に励んだ仲間達が、アジアおよび世界での海のネットワークを構築するのに重要な役割を果たしている例もあります。

現在、日本財団は新しい人材育成プログラムを検討しております。海上で発生する国際的な課題への対処は喫緊のテーマであり、技術面だけではなく、総合的に政策面からも適切に対応できる各国の海上保安官を育成する英語の大学院大学の設置を考えております。そこでは、アジアの海上保安官も育成するとともに、さらに強固なアジアのネットワークの構築を目指します。日本財団は、アジアの海上保安機関の協力体制のさらなる強化のために、これからも人材育成の面から長官級会合をサポートしてまいりたいと思います。私は、アジアの海上保安の協力体制を強化することによって、安全で豊かな海を次世代に引き継ぐことができると信じております。