第3回国連防災世界会議「ワーキングセッション~全ての人のための包括的防災における障害者の積極的参加~」

日本・宮城

今日、障害者は、世界人口の15%にあたる10億人いるといわれています。このように社会で大きな割合を占めるこのグループが、災害や緊急時において、障害のない人と比べると被害を受けやすいという状況にあることは誠に遺憾なことです。このような事態は、適切な災害対応や復興支援を可能にするインフラ整備や政策に障害者がアクセスできないことが原因で引き起こされています。

その影響は、東日本大震災の事例からも明らかです。日本放送協会(NHK)の調査によると、東日本大震災における障害者の死亡率は、全体の率に対して2倍~4倍であったといわれています。

私が東日本大震災の支援活動を通じてお会いした障害者の方は、緊急避難から復興への過程で、ご自身が直面された課題を共有してくださいました。大きな課題は情報へのアクセスについてでした。例えば、緊急避難の際、サイレンやラジオといった音声のみの警報は聴覚障害者には届きませんでした。そのため、情報を得た上での意思決定や必要なサービスへのアクセスをすることが困難な状況でした。また、公共施設における課題として、多くの避難所では、車いす利用者が生活する上での配慮がありませんでした。

これらの事例は、コミュニティの災害リスク軽減に関わる計画や実施のプロセスに、これまでの間、いかに障害者の参加ができておらず、彼らがレジリエントな(強靭で回復力のある)コミュニティの復興に貢献できる機会を奪われてきたかを物語っています。

言い換えれば、これまでの間、障害者はコミュニティにおける重要な一員であるという認識がなされていなかったということでしょう。

このような教訓を最大限に生かし、同じことを繰り返さないために、日本財団は被災地のコミュニティの方々とともに活動を行ってきました。私たちは、被災地のコミュニティが、被災前の状態に戻るだけでなく、障害者を含めた多くの関係者とともに、さらにレジリエントな(強靭で回復力のある)コミュニティを構築できるよう支援しております。

また、私たちは、世界中の様々な地域において、障害者を含むインクルーシブな防災の取り組みを促進させるため、国連機関とも活動を行ってきました。

2012年、東京において、国連経済社会局(The United Nations Department of Economic and Social Affairs: UN DESA)と共催した国連専門家会議では、NGO、大学、企業、テレビネットワークを代表する専門家が一堂に会し、情報アクセシビリティの意識啓発、災害対応および災害管理における障害者の参加に関する提言を作成しました。そして、2014年4月、日本財団は、国連アジア太平洋経済社会委員会(The United Nations Economic and Social Commission for Asia and the Pacific: UNESCAP)と障害者を含むインクルーシブな防災に関するアジア太平洋会議を共催し、障害者を含むインクルーシブな防災という視点を「ポスト兵庫行動枠組2015」に含めるための提言書を提出しました。

今回、この国連防災世界会議で初めて、障害者を含むインクルーシブな防災のために、障害者の積極的な参加について議論するセッションが設けられました。同時に、今回初めて、多くのセッションにおいて、物理的なアクセシビリティや情報アクセシビリティが保障されています。

本会議にすべての人々がアクセス可能となるよう、日本政府、仙台市、国連国際防災戦略事務局(The United Nations Secretariat for International Strategy for Disaster Reduction: UNISDR)の皆さまとともに取り組めましたことを大変嬉しく思います。

私は、障害者を含むインクルーシブな「ポスト兵庫行動枠組2015」が採択されることは、防災に関わるすべてのプロセスに障害者の参加を促し、災害発生時の人的被害に減少のみならず、復興への取り組みにも参加する道を開くと期待しています。

また、次の10年におけるポスト2015開発目標も、今年の9月に開催される持続可能な開発のための特別サミットの場で国連加盟国により採択される予定です。今回の取り組みが、防災の分野だけでなく、持続可能な開発目標を含む枠組みにおいても、障害者を含むインクルーシブな社会への動きを加速させるマイルストーンになると確信しております。