グローバル・アピール2016 宣言式典 〜ハンセン病に対するスティグマ(社会的烙印)と差別をなくすために〜

日本・東京

ただいまご覧いただいた映像にもありましたように、ハンセン病は、人類の長い歴史の中で、病気そのものだけでなく、それに伴う差別やスティグマが人々を苦しめ続けてきた病気です。

「ハンセン病は病気よりも差別のほうが辛い」
ハンセン病を患った多くの方々がこの言葉を口にされます。ハンセン病の病気と差別の問題は、今も現在進行形の問題として、多くの人々を悩ませています。

私たちがグローバル・アピールを始めたのは2006年のことでした。当時、多くの人たちがハンセン病について誤解をしていました。ハンセン病の患者やその家族など、当事者の方々ですら、「ハンセン病は治る病気である」「治療は無料で受けられる」ということを知りませんでした。

そして、「ハンセン病は治らない。患ってしまったのだからもう差別をされても仕方がない」という理由で、家から追い出されたり、離婚されたり、職場を解雇されたりといった厳しい差別を受けてきました。

このような状況を改善するために、まずは患者の方々に、「ハンセン病は治る病気である」「治療は無料で受けられる」ということを伝えなければならないと思いました。さらに、患者のみならず、回復者の方々や家族、周りの人たち、そして広く社会の人々に向けて「差別をすることは不当である」ということを伝えよう。そう考えて始めたのが、このグローバル・アピールです。

このメッセージを効果的に、多くの人たちに届けるために、毎年様々な専門家の皆さまと共同で世界に向けて発信してきました。ハンセン病の患者や回復者の方々と接する機会のある医療・看護関係者の皆さまとも是非一緒に取り組みたいと思い、ご協力をいただきました。また、世界には、ハンセン病に対する差別的な法律がまだ残っていることを法律家の皆さまに訴え、そのような法律の撤廃にご賛同いただきました。

このように、それぞれの分野の専門家の方々が強い関心と責任感をもって、私たちとメッセージを共同で発信してくださったことで、グローバル・アピールは広がりをみせてきました。

多くの皆さまからのご支持に後押しされ、7年の歳月をかけて働きかけてきた国連においても、2010年に「ハンセン病差別撤廃決議」が採択されました。これにより国際社会がハンセン病の差別の問題に取り組まなくてはならないという機運が高まったことは、ひとえにハンセン病の差別問題に強いコミットメントを示してくださった皆さまのおかげだと感謝しております。

昨年のグローバル・アピールでは、初めて、ここ日本からメッセージを発信しました。日本では現在、ハンセン病を患う人はいません。そのため、ほとんどの人は、日常生活においてハンセン病との接点がありません。過去に起こった厳しい差別についても知りませんし、未だに残る偏見のために、何十年も家族のもとへ帰ることができずにいる人の存在についても、全くといっていいほど知る機会がありません。そこで昨年は、グローバル・アピールに併せて、ハンセン病について知り、考える機会をつくるため、世界各国に残るハンセン病の療養所や回復者の方々の状況をおさめた写真展、ハンセン病の書籍の朗読会、講演会なども行いました。

このような機会を通じて、ハンセン病のことを知らなかった若い人たちからも、「ハンセン病についてもっと知りたい」「ハンセン病について知るべきだ」というような声が多数寄せられました。

一方、若いボランティアの中には、海外のハンセン病の患者や回復者の方々が暮らす集落を訪れ、彼らの生活を助ける活動をしている人たちもいます。このような若者たちの活動に加え、昨年のグローバル・アピールを通じて、ハンセン病について何も知らなかった若い人たちが関心を寄せてくれたことに勇気づけられ、私は引き続き、「若い人に訴えていきたい」という想いを強くしました。

今年は国際青年会議所の皆さまと共に、世界の若い世代の人々に向けてメッセージを発信することにしました。未来を担うビジネスリーダーである国際青年会議所の皆さまは、社会課題に対して熱心に取り組んでいらっしゃいます。皆さまがハンセン病の差別の問題に積極的に協力してくださったことに、あらためて心から感謝を申し上げます。この機会に、それぞれの国や地域で、ハンセン病の差別について考える機会が広がっていくことを期待しています。

国際青年会議所の皆さまに加え、これまでグローバル・アピールに協力してくださった方々が、継続してコミットメントを示してくださっていることも非常に心強いことです。

本日は世界医師会、国際看護師協会、国際法曹協会、国連人権理事会諮問委員会、そしてインドの国会議員の皆さまが、私たちの活動を応援するために駆けつけてくださいました。その情熱にあらためて感謝すると共に、このように皆さまの輪が広がっていくこと。それが、ハンセン病の差別と向き合うための大きな力になると信じております。

そして、病気を克服し、不当な差別と闘っている回復者の皆さま。
差別に立ち向かう勇気、そして闘いを続ける不撓不屈の精神は、私たちに人間の持つ強さ、寛容さを教えてくれます。皆さまが力を尽くされている姿に心より敬意を表し、エールを送りたいと思います。

グローバル・アピール2016では、国内各地での写真展やシンポジウムなどを行います。また、海外では、国際青年会議所や回復者の方々とハンセン病について考える機会を計画しています。

この機会を通じて、一人でも多くの方にハンセン病について考え、向き合っていただきたいと思います。

皆さま、力を合わせ、ハンセン病の差別という大きな問題の解決に向けて、共に立ち向かっていこうではありませんか。