TICAD VIテーマ別会合「繁栄の共有のための社会安定化促進」

ケニア・ナイロビ

本日は発言の機会を与えていただき、光栄に思います。
はじめに「繁栄の共有のための社会安定化の促進」をはじめ、このTICADにおいて議論される多くのテーマについてお祝いを申し上げたいと思います。

私は、1984年に東アフリカで起きた大飢饉の際、空腹で目を開けていることがやっとというような子どもたちの姿を目の当たりにしました。その時、空腹で苦しんでいる人々に食糧支援を実施することを決意しました。そこで、私はノーベル平和賞を受賞されたボーローグ博士とカーター元米国大統領と共に笹川アフリカ協会を設立し、サブサハラ地域でササカワ・グローバル2000というプログラムを始めました。

30年以上にわたって、笹川アフリカ協会は、アフリカの零細農家に対する農業技術の普及に携わってきました。本日は、笹川アフリカ協会において特に重視している2つのことについてお話ししたいと思います。

1つ目は農業指導にあたる人材育成です。SG2000では、零細農家の生活の質を向上させるためには彼らに知識や技術を身につけてもらうことが必要だと考えました。そこで私たちは今まで14カ国において食糧増産のための技術指導を実施してきました。

さらに、アフリカの24大学と協力して、6,000名近い農業普及員の能力強化も行ってきました。その農業普及員が畑に出て、農民一人ひとりに直接技術指導を行ってくれたことで、技術移転とともに持続可能な農業の形ができました。

2つ目は、零細農家の事業多角化に対する支援です。作物を育てるだけでなく、加工し、付加価値を高め、高品質な商品として販売することで、より良い収入を得ることができるのです。笹川アフリカ協会ではそのためのバリューチェーンの強化に力を入れてきました。

特に個々の農家を組織化したFBO(Farmer Based Organization)の機能を強化する活動を積極的に行っています。種子や肥料の購入を集団で行ったり、収穫物を共同で販売したりすることで、効率化を追及できます。

また個人で所有するには高価な農業機械を、仕事を求める若者のグループに提供します。こうした機械の提供によって、若者のグループがトウモロコシの脱粒・製粉や米の脱穀・精米などのサービスを提供することができるようになるため、若者や女性に新たな職場で働くチャンスが生まれています。

近年アフリカの若者たちは、都市のより高い収入の仕事を求めて農村を離れています。しかし、都市部にはすべての若者に対して十分な雇用の機会がなく、若者の失業率の高さが深刻な問題になっています。農業への新しいアプローチを導入することで、農業がアフリカの未来を担う多くの若者をひきつけ、バリューチェーンが強化されることが望まれます。

本日ご参加の各国政府や企業の皆さんと連携を深めながら、零細農家の生活向上は勿論のこと、未来を背負う若者に、魅力的な職場を提供するため引き続き尽力していきます。そして笹川アフリカ協会は、「農業を通じた繁栄を共有するための社会の安定化」に貢献していきたいと思います。