黒海およびカスピ海地域における日本財団フェローシッププログラム卒業生会合
本日、ジョージア政府主催による日本財団人材育成プログラムの卒業生会合に参加できましたことを心より嬉しく思います。私が、ジョージアに初めて訪問したのは2007年、ジョージア戦略国際研究所と日本財団で、南コーカサスの安全保障に関する国際会議を、ここトビリシで共催した時でした。そして本日、ジョージア政府および日本財団卒業生がイニシアティブをとり開催する会議を支援でき、喜びもひとしおです。
30年以上にわたり、日本財団は海の人材を育成するための奨学金プログラムを実施しています。私たちの長年のパートナーは、国際機関、大学、研究機関や各国政府です。
私たちの支援する10の人材育成プログラムのフェローは、性別や国籍、年齢、学歴、職歴など様々なバックグランドを持っています。プログラム期間中、公私共に密な時間を過ごすことで、彼らは、それぞれの立場の違いを超えて、世界の海に対する共通の課題意識を高めることができます。今では140カ国1,200人以上の卒業生が、各国において、議員、行政官、外交官、科学者、研究者として、私たちの大切な海を守るための努力を日夜続けています。そして、もちろん本日ここにお集まりの皆さまも例外ではありません。
皆さまもご存知の通り、海は本当に危機的な状況に陥っています。海の存在なくして人類は生存していけません。にもかかわらず、気候変動は、海水面の上昇や海洋の酸性化を引き起こし、それが地球規模で、水産資源の枯渇といった生態系の変化を加速させています。さらに悪いことに、私たち人間が、海に流出させる大量のプラスチックは、食物連鎖に大きな影響を及ぼしています。
ここ黒海およびカスピ海地域においても違法操業による水産資源の枯渇や海洋環境の変化が起こっており、それに対する統合的な海洋管理が、大きな課題であると伺っています。
こうした海の危機的状況を変えるための努力が徐々に行われています。国連を中心に、海の持続可能な発展のために、海を持続的に利用し保全するという世界的なムーブメントが起きています。しかし、海の存在の大きさや海の問題の複雑さを考えると、100年先へのビジョンでは不十分だと考えています。むしろ、私たちは、1000年先のビジョンを描く必要があるのではないでしょうか。
これらの複雑な海の問題に対峙する時、分野や国を超えた連携が不可欠であることは周知のことです。しかし、実際には分野や国を超えた連携は不十分です。現在の状況を変えるためには、皆さまのように、学際的なマインドと、情熱を傾けたことに対して行動する勇気のあるリーダーが必要です。
国益に影響する課題を議論するために、各国が集まるのは難しいということは理解しています。しかし、今回の会合は、そうした常識を覆しました。ジョージアの卒業生が、今回の会合の計画を政府に働きかけ、近隣諸国から卒業生30人が快く参加してくれました。これが、この会合の何よりも意義あることです。
日本財団は、卒業生同士が連携して提案する革新的なアイデアや企画をサポートする準備があります。ですから今回の会合は、新しいネットワークを強化し、行動につなげていくためのプラットフォームだとお考えください。本日この場には、国連海事・海洋法課(United Nations, Division of the Ocean Affairs and the Law of the Sea: UN DOALOS)、国際海事法研究所(International Maritime Law Institute: IMLI)、国際海洋法裁判所(International Tribunal for the Law of the Sea: ITLOS)、世界海事大学(World Maritime University: WMU)と実施している人材育成プログラムから約30人の卒業生が一堂に会してくれました。本日から2日間、黒海およびカスピ海が直面するニーズや課題を明らかにし、それに対し、卒業生として何ができるのかを皆さまで議論されることを期待しています。
最後に一言、お話させてください。革新的な連携と枠組みを持って地球規模の海の課題を解決する先導者として、国際社会を牽引することをためらわないでください。日本財団は、いつも皆さんを見守っています。次世代のために、私たちの美しい海を共に守っていきましょう。