国際看護師協会2017年大会開会式「保健人権大賞」授賞式
本日は、国際看護師協会より、保健と人権の分野における受賞の栄誉をいただき誠に光栄です。また、本日皆さまの前でお話しする機会をいただき、大変感謝しております。
ハンセン病は病気でありながら、スティグマ(社会的烙印)を伴う社会的な問題でもあります。患者や病気から回復した人たちは、人権侵害という差別に直面しています。
彼らが苦しめられているスティグマ(社会的烙印)や差別の問題に取り組むことは、彼らの人権を確保するという側面から、病気の治療と同様に重要なことです。そのような考えのもと、私は保健と人権、それぞれの分野において活動してきました。
看護の専門家として、国際看護師協会がその考えに賛同し、患者の治療だけでなく、ハンセン病のスティグマ(社会的烙印)の問題に共に取り組むと表明してくださったことは、非常に心強いことです。
私はハンセン病蔓延国に足を運ぶ中、子どもたちに将来何になりたいか聞くと、多くの子どもが看護師と答えます。彼らにとって、看護師は憧れの職業なのです。これは、皆さまがいかに多くの人々の心を捉えているかの表われです。私自身も、実際に看護職の方々が、ハンセン病やそのスティグマ(社会的烙印)に苦しむ人々に寄り添い、看護にあたる場面を目の当たりにし、皆さまの献身的な仕事に対して、敬意の気持ちで胸がいっぱいになりました。
ブラジルでは、感染の疑いのある住民を診察する地域の診療所の看護師に会いました。彼は、実際に丁寧な診察でハンセン病の兆候を見つけるだけでなく、感染の診断結果を知ってショックを受けている患者やその家族に対し、これからの治療法を丁寧に説明し、励ましていました。
また、インドネシアでは、地域の家々を個別に訪問し、4歳の患者を発見した看護師に会いました。その患者は私が出会った中で最年少のハンセン病患者でした。その看護師の女性は、ハンセン病に対する偏見が今なお、根深く残っており、差別を恐れて治療を受けにこない人々がいることを知りました。4歳の女の子は、その丁寧で献身的な対応のおかげで早期に治療を受けることができたのです。
本日ご紹介したのは、私が出会った献身的で熱心な看護師のうちのお2人だけですが、私は、彼らのような看護職の皆さまの献身的な活動に勇気づけられ、ハンセン病とスティグマ(社会的烙印)の問題に取り組んできました。
ですから、この賞は私ひとりがいただくものではありません。偏見を持つことなく、ハンセン病の患者やその家族の心身の苦しみを和らげることに使命感を持って取り組んでおられるすべての看護職の皆さま、そしてハンセン病の患者や回復者たちのために心身のケアに努めてくださっている多くの看護職の方々と共に、この栄誉を分かち合いたいと思います。私たちの活動は、道半ばです。
本日の受賞は、私たちの新たな挑戦を後押ししてくださったものと受け止めております。
この栄誉ある賞をお受けすることで、これまで多大な貢献をしてこられた看護職の皆さまと共に、これからも「ハンセン病とそのスティグマ(社会的烙印)のない世界」というゴールを目指していくことを誓います。