グローバル・アピール2019宣言式典 ~ハンセン病に対するスティグマ(社会的烙印)と差別をなくすために~

インド・ニューデリー

皆さま、本日は第14回グローバル・アピール宣言式典にご参加いただき誠に感謝申し上げます。今年はマハトマ・ガンジー生誕150周年という記念すべき年であり、また本日1月30日はマハトマ・ガンジーがハンセン病患者、回復者の社会への復帰と差別解消に生涯をかけて寄り添い取組んだ功績をもとに制定された「ハンセン病の日」でもあります。このような日に、共通の目標のために、皆さまと一堂に会する機会を得られたことを大変意義深く思います。

インドにおけるハンセン病患者の数は近年の関係者の努力で激減しました。しかし、現在もなお世界のハンセン病新規患者の60パーセントがインドで発見されているのもまた事実です。このような状況を変えるため、インド政府はモディ首相の強いリーダーシップにより、2030年までにインドをハンセン病及びハンセン病にまつわるスティグマ・差別のない国にするという野心的な目標を打ち出しました。私は世界保健機関ハンセン病制圧大使として、この計画を歓迎いたします。モディ首相率いるインド政府のこの強い思いは、「ハンセン病の病院を開設するときではなく、閉鎖するときに声をかけて欲しい」と言われたガンジーの思いにも通ずるものです。インドがハンセン病及びハンセン病にまつわるスティグマと差別のない国になるという偉業が達成されれば、紀元前200年頃のマヌ法典の時代から続く深刻なハンセン病の歴史に幕が下りることになります。

本日、国際商工会議所(International Chamber of Commerce: ICC)と協力して、グローバル・アピールを発信できることは、私にとって大変心強いことです。私は、ハンセン病患者、回復者の尊厳及び人権の回復を目指し、世界中の耳目を集めながら取り組んでいこうとこのグローバル・アピールを2006年に始め、今年で14回目を迎えます。グローバル・アピールの宣言文には、「ハンセン病は早期発見・早期治療で完治する病気である」、「治療に必要な薬は世界中どこでも無料で提供されている」、「患者や回復者に対していわれのない差別をしてはいけない」、という3つのメッセージが含まれています。これまで、政治、ビジネス、学術、宗教など様々な分野のリーダーが宣言文を発信してくれました。

しかしながら、ハンセン病患者、回復者が社会のあらゆる場面において、今もスティグマと差別に直面しているということを私たちは認識しなければなりません。中でも、仕事にまつわるスティグマと差別は最も深刻な問題の一つです。ハンセン病の患者だけでなく、回復者であっても解雇され、就職することもできないという現実があります。ハンセン病にかかることで、生活の糧を失い、社会参画の機会をも失ってしまうのです。

日本財団とICCは、ハンセン病患者、回復者を含む全ての人はスティグマと差別を理由に労働の機会を奪われてはならない、という原則に立っています。ICCに加盟する世界4500万社がこの原則を共有することで、すべての人は自身の可能性を最大限に活かす機会を尊重されなければならないという意識が世界中に広がっていくことを期待しています。そして、この意識の広がりが、ハンセン病患者、回復者の雇用に繋がっていけばインクルーシブ社会へ向けた確固たる礎となるでしょう。

インド政府、ハンセン病患者、回復者の支援に長年取組んできた世界中の関係者の皆さま、そしてICC、ハンセン病回復者教会(Association for People Affected by Leprosy: APAL)、ササカワ・インド・ハンセン病財団(Sasakawa-India Leprosy Foundation: S-ILF)の皆さまのご協力に感謝申し上げます。

私たちが協力して努力することが世界からハンセン病に対するスティグマと差別を無くす重要な一歩となるのです。

最後になりますが、この度ガンジー平和賞を授与いただきましたことをこの場をお借りして御礼申し上げます。私のハンセン病制圧活動そしてハンセン病にまつわるスティグマと差別の解消に向けた長年にわたる取り組みにおいて、多くの関係者の皆さまのご協力をいただきました。この名誉ある賞の受賞は、私と共に活動してくださった方々のご協力があってこそだと思っております。これからも共に頑張りましょう!そして、モディ首相とインド政府に深謝いたします。