笹川防災賞

スイス・ジュネーブ

はじめに、水鳥真美国連事務総長特別代表(防災担当)に心より感謝申し上げます。また、後ほど発表される受賞者をご選考くださった委員の皆さまに御礼申し上げます。

笹川防災賞は、1986年に創設されました。当時、世界的に防災に対する認識はまだ薄いものでした。しかし、国連のリーダーシップのもと、人々の防災意識が高まり、新しい技術と革新的なアプローチを通して、高いリスクにさらされているコミュニティを守れるようになってきました。笹川防災賞もこの世界的な潮流に合わせて進化し、選考基準もより革新的で多様なプログラムに焦点をあてるようになりました。

本賞は、災害リスク軽減のための活動において、すべての人々、とくに高いリスクにさらされている人たちがインクルーシブで利用しやすく、差別なく参加できる仕組み作りに貢献している個人、団体、または取組を顕彰しています。

2019年の笹川防災賞のテーマは「インクルーシブで復元力のある社会の構築」です。

毎年発生する予期せぬ災害は人々の生命を脅かしています。特に、高齢者や障害者といった特別な支援を必要とする人々は、被災時も被災後も、取り残されてしまいがちです。例えば、聴覚障害者は、音声による警報や避難情報が聞こえません。また、障害者の死亡率はより高いと言われています。

こうした過去の経験から、真にインクルーシブで復元力のある社会の構築のためには、単に、コミュニティが高いリスクにさらされている人たちを受け入れるというだけでは充分ではありません。

私たちは、自然災害のネガティブな影響を軽減するために「誰もとり残さない」という概念に基づいて行動するべきです。私たちは、災害で高いリスクにさらされている人々を防災の取り組みの中心に据える必要があるということを平時から重視しなくてはなりません。災害リスクを減らすために、当事者の視点、知識、経験を活用することが重要です。

同時に、災害リスク軽減のための政策や活動を強化するために、政府、企業、NGO、研究機関、メディア、そして障害者団体を含むすべての関係者の協力が欠かせません。

このようにして、コミュニティは防災と被災後の対応における地域のシステムをよりインクルーシブで復元力のあるものに改善することができるでしょう。

今年は、様々な分野を代表する団体や個人から61組の応募がありました。2019年笹川防災賞の受賞者の皆さまに心よりお祝い申し上げます。受賞される皆さまの今後益々の発展を期待しています。

最後に、笹川防災賞の開催にご尽力をくださった国連防災機関の皆さまに心より感謝申し上げます。そして、日頃から、インクルーシブで復元力のある社会の構築のために、災害リスクの軽減に尽力されているすべての団体や個人の皆さまに、あらためて敬意を表します。