第35回世界保健機関(WHO)笹川健康賞授賞式

スイス・ジュネーブ

プライマリ・ヘルス・ケアの分野において極めて優れた素晴らしい進歩をもたらされたJudith Ndongo Embola Torimiro教授とEusebio Quispe Rodriguezさんに第35回笹川健康賞をお贈りできることを嬉しく思います。

健康は今や、持続可能な開発目標やその他多くの国際的な開発の取組みには欠かせない要素となっています。しかし、40年前、「健康」と「開発」は結びつけて考えられていませんでした。だからこそ、「健康」と「開発」が初めて結び付けられた1978年のアルマ・アタ宣言は大変画期的でした。そして、この宣言において、プライマリ・ヘルス・ケアのアプローチが「すべての人々に健康を」という目標を達成するために欠かせないもとのなったのです。

このアプローチによって、地域コミュニティの人々は、自分自身の健康増進に積極的に関わるようになり、日々の食事の質の向上方法やよい衛生状態の重要性を学びました。また、彼らは、基礎的なヘルス・ケアにアクセスできるようになりました。そして、この過程において、彼らは自分たちの健康増進にいかに主体的に取り組むのかを学びました。これにより病気の予防や早期治療が促進されています。プライマリ・ヘルス・ケアのアプローチは彼らの幸せに大きく貢献しているのです。

過去40年間、世界の状況は大きく変化しましたが、プライマリ・ヘルス・ケアのアプローチはその変化に対応してきました。プライマリ・ヘルス・ケアは「すべての人々に健康を」という目標達成のために根本的なアプローチであると認識され続けています。

笹川健康賞は、このアプローチをそれぞれの活動分野で具体的に実践し、健康を増進させた個人や団体を顕彰しています。今年はプライマリ・ヘルス・ケアのアプローチを通じて「すべての人々の健康」に大きく貢献されたお二方に本賞を贈ります。

Torimiro教授は、感染症の専門家で、カメルーンのHIV/AIDS蔓延地域のヘルス・ワーカーの訓練を通じてプライマリ・ヘルス・ケアのアプローチを実践されています。また、彼女は地域の女性へのがんと性感染症の啓発活動といった草の根レベルの活動にも尽力されています。

Rodoriguezさんは、ペルーの貧困地域において栄養知識の啓発をするためにプライマリ・ヘルス・ケアのアプローチを実践されました。彼と彼のチームは、対象地域の家庭を訪問をし、どのように日々の食事の質を向上させるか改善指導を行いました。これにより、当該地域における貧血症の症例を大幅に減らすことができました。

健康は、基本的な人権です。今年の受賞者であるお二方の多大なる貢献は、まさにプライマリ・ヘルス・ケアのアプローチによって、この基本的人権を誰もが享受できるようになる、ということ私たちに改めて気付かせてくれました。

Torimiro教授とRodriguezさん、おめでとうございます!